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Google Cloud Next '21がスタート、データクラウドやインフラ、セキュリティほか今回の見所を紹介
Google Cloudのインフラをエッジや顧客のDCに分散する「Google Distributed Cloud」など
2021年10月13日 00:00
Google Cloudの年次カンファレンスイベント「Google Cloud Next '21」が10月12日(米国太平洋標準時)に開幕した。オンラインで行われ、会期は14日まで。
開催に先立つ10月8日(日本時間)には、プレス向け事前ブリーフィングが開かれた。この記事では、事前ブリーフィングでアナウンスされた、Google Cloud Next '21での新発表を紹介する。それぞれの詳細はGoogle Cloud Next '21で発表される予定だ。
新顧客と新パートナー
まずKristen Kliphouse氏(President, North America)が、顧客およびパートナーの状況について説明した。
その中で、直近3週間の新規顧客としてWells FargoやHSBCを紹介。さらに、Google Cloud Next '21で発表となる新しい顧客として、Wendy's、General Mills、Siemens Energy、Deuche Post DHL Groupを挙げた。
パートナーについては、Kliphouse氏はフォーカスする4つの柱を紹介した。Data(データ)、Open(オープンクラウド)、Collaboration(Google Workspace)、Trusted(ゼロトラストなどのセキュリティ)だ。そして、数カ月のパートナーの動きとして、SAP、T-systems、C3.ai、Workday、Automation Anywhereらを紹介した。
また新規パートナーとして、Tableau、Trifacta、Databricks、Citrix、Cybereasonなどを紹介した。例として、Collaborationの柱に含まれるCitrixは、分散したチームをGoogle Cloud上のCitrixで助けてきたとしたほか、Dataの柱に含まれるTableauでは、BIの分析や視覚化を手掛けてきたと取り上げた。
さらに、新しいパートナーシップの柱としてSustainability分野を取り上げ、気候変動に対応するための5社をパートナーとしたと語った。
データクラウド:Virtex AIのワークベンチ、BigQueryから他クラウド上のデータも分析、Sparkのサービス
データクラウド分野については、Gerrit Kazmaier氏(Vice President & General Manager, Databased, Data & Analytics and Business Intelligence)が説明した。
まずは「Vertex AI Workbench」だ(プレビュー版提供開始)。各種MLツールを統合した「Virtex AI」(2021年5月リリース)を、データサイエンティストが使うためのワークベンチだと説明している。ここから、機械学習モデルのビルドや訓練、推論までを単一のUXで利用できる。さらに、BigQueryやDataplexなどのGoogleのデータサービスもシームレスに利用できるという。
続いて、「BigQuery Omni」(正式リリース)が紹介された。GoogleだけでなくAWSやAzure上に集積されたデータを、BigQueryのコントロールプレーンから統合して分析できる。これによりデータのサイロ化を解決するという。
その次は「Spark on Google Cloud」だ(プレビュー版提供開始)。Apache SparkをGoogle Cloudのフルマネージドなサービスとして提供する。
最後にKazmaier氏は、Kliphouse氏のパートでも出されたパートナー企業のアップデートの中から、データクラウド分野として、Fivetran、Informatica、Collibra、Databricks、Tableauを挙げた。中でも重要なものとして、Tableauとのextended partnershipを取り上げ、TableauからLookerを扱えるようになったことを紹介した。
サステナビリティ:顧客のカーボンフットプリントの確認や警告を実施
サステナビリティ/環境問題のソリューション分野については、Jen Bennett氏(Technical Director, Office of the CTO)が説明した
まずは「Google Cloud Carbon Footprint」だ(プレビュー版提供開始)。Google Cloudの顧客がコンソールからカーボンフットリントのレポートを見られるようにする。
続いて、「Carbon Reducton Recommendations」(プレビュー版提供開始)を取り上げた。これは、アイドル状態で動いていて使われていないクラウドインスタンスと、それによるカーボンフットプリントを警告する。これにより、無駄な電力消費とセキュリティリスクを減らせる。
その次は「Google Earch Engine for Google Cloud」だ(プレビュー版提供開始)。衛星画像解析のGoogle Earth Engineと、Google CloudのBigQueryやAIを組み合わせることで、気候変動対策に役立てるという。
インフラ:通信エッジやGoogle Cloudと切り離されたデータセンターで、Google Cloudのインフラを利用可能
インフラ分野については、Sachin Gupta氏(Vice President & General Manager, Open Infrastructure)が説明した。
この分野では、Google Cloudのインフラをエッジや顧客データセンターに分散する「Google Distributed Cloud」が発表された。
Google Distributed Cloudは2つのプロダクトからなる。
1つめのプロダクトは「Google Distributed Cloud Edge」だ(プレビュー版提供開始)。通信事業者や顧客のエッジ、Google自身のネットワーク拠点など、ネットワークエッジでGoogle Cloudのサービスを動かすもので、そのネットワークに対して低遅延広帯域のサービスを提供できる。Gupta氏は、特にユースケースとして5Gコアを強調しており、AWS WavelentghやAzure Edge Zonesへの対抗と見られる。
2つめのプロタクトは、「Google Distributed Cloud Hosted」だ(近日プレビュー版予定)。Google CloudのサービスをGoogle Cloudと一切の接続なしにオンプレミスで使えるようにするという。digital sovereignty(デジタル主権、データ主権)のためのものであり、厳格なデータレジデンシーやセキュリティ、プライバシーを謳っている。発表では、ドイツのT-Systems社とGoogle Cloudとでヨーロッパの政府や企業にソリューションを提供するというコメントも引用されており、ヨーロッパでのデジタル主権問題に対応するためのものと思われる。
製造業向け:機器をスマートデバイスにするためのフレームワーク
製造業向けソリューションについては、Dominik Wee氏(Managing Director of Manufacturing and Industrial)が説明した。
この分野で発表されたのは、「Google Cloud Intelligent Products Essentials」だ(プレビュー版提供開始)。家電などの機器を、パーソナライズやアップデートなどの機能を持つスマートデバイスにするためのフレームワークだという。Google Cloud Intelligent Products Essentialsでは、コネクション、アプリのテンプレート、フリートマネジメント(運行管理)、AIサービス、データインテグレーションを提供すると発表されている。
Google Workspace:Jira統合、ノーコード開発アプリ統合、セキュリティ機能
Google Workspaceについては、Javier Soltero氏(Vice President & General Manager)が説明した。
まずは「Jira integration for Google Chat and Spaces」だ(プレビュー版提供開始)。Google Chat / SpacesにAtlassianの開発プロジェクト管理ツール「Jira」を統合して、Jiraのチケットを作成したり、プレビューを見たり、イシューをモニターしたりできるという。
次は「AppSheet in Gmail」だ。Googleの買収したノーコード開発ツールであるAppSheetをGmailに統合して、メッセージ中にカスタムアプリを埋め込んだりできるとした。
Google Workspaceのセキュリティ機能のアップデートも紹介された。「Client-side encryption for Google Meet」(ベータ版)は、Google Meetのユーザーが暗号鍵を直接管理できるようにする。「Data Loss Preventions for Google Chat」(ベータ版)は、DLP(Data Loss Prevention)の機能をChatに組み込み情報の持ち出しを防ぐ。「Drive Labels」(リリース版)は、Google Driveの機微情報を自動的に分類する。
セキュリティ:Google Workspaceとセキュリティ機能の組み合わせなど
セキュリティ分野についてはPhil Venables氏(Chief Information Security Officer)が説明した。
まずは「Google Cybersecurity Action Team」の発足について。全社のセキュリティ専門家が集まった「世界最高のセキュリティアドバイザリーチーム」とVenables氏は語った。
次は「Work Safer」プログラムで、企業のハイブリッドワークにおいてセキュリティを守るものだ。Google Workspaceに、ゼロトラストのBeyond Corp Enterpriseや、攻撃対策のreCAPTCHA Enterprise、脅威分析のChronicle、ブラウザー統合管理のChrome EnterpriseといったGoogleのさまざまなセキュリティソリューションを組み合わせる。さらに、CrowdStrikeとPalo Alto Networksのエンドポイントセキュリティや不正侵入防止といった、パートナー企業のセキュリティソリューションも組み合わせられるとのこと。
このPalo Alto NetworksとCrowdStrikeと合わせて、Cybereasonとのパートナーシップ拡大も発表された。CybereasonのXDR(Extended Detection and Response)サービスにGoogleのChronicleのセキュリティサービスを採用するという。