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日本マイクロソフト・吉田仁志社長が示す「Microsoft Cloud」の価値とは?
Microsoft Japan Digital Days基調講演レポート
2021年10月12日 12:44
日本マイクロソフト株式会社は10月11日~14日に、同社最大級のデジタルイベントである「Microsoft Japan Digital Days」をオンラインで開催している。
「組織の競争力を高める最新事例とソリューションを学ぶ4日間」と位置づけ、ビジネス部門やIT部門の意思決定者、ITに関わるすべてのプロフェッショナルを対象に、完全オンラインで開催。基調講演や130以上のセッションを通じて、モダンワークの最新事例や、ビジネスレジリエンス経営を支えるテクノロジーの最新機能など、デジタル時代に必要な情報を提供する場とした。
セッションは、7つのトラックで構成。「Industry Innovation~インダストリーDX」、「Business Applications~業務のデジタル変革」、「Microsoft Security~信頼できるクラウド セキュリティ」、「Microsoft 365 & Surface~ハイブリッドワーク」、「Innovate with Azure~アプリケーションの変革」、「Migrate & Modernize with Azure~インフラストラクチャの進化」、「Mixed Reality~次世代コンピューティングプラットフォーム」の観点から、最新事例や最新技術などを紹介した。
なお10月11日には、Day ZEROとして、政府の「デジタルの日」と連動し、デジタル庁の取り組みや政府、自治体のデジタル化、教育分野、医療分野における日本マイクロソフトについても触れた。
DXを成功させる4つの要素は?
Day 1となった10月12日には、日本マイクロソフトの吉田仁志社長が、「“Revitalize Japan” 日本社会の再活性化に向けたデジタルトランスフォーメーション」と題した基調講演を行った。日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状や課題を指摘する一方、2021年7月からスタートした同社2022年度の事業方針を初めて明らかにしている。
吉田社長は、「変革に必要なのは新たなビジネスモデルづくりである。世の中の不透明感が高まるなか、DXは、日本の経済や社会にとって、喫緊の課題である」と切り出し、情報通信白書2021年度版では、DXに取り組んでいる日本の企業は13%にとどまっていることを示す。
そして、「衝撃的な結果である。日本のDXは待ったなしだ。デジタル化やシステムの刷新だけでなく、本当になくす、人に託す、技術に託すという断捨離、イノベーションを起こしやすくする“もうかる仕組み”づくり、早く決めて、速くやるという迅速な決断が必要である。社会の変化や市場の変化に後れを取ることなく、すばやく変革し続けるレジリエンシーを身につけることが重要である」とした。
また、DXを成功させる4つの要素として、「ビジョンと戦略」、「組織文化」、「独自性」、「人材」を挙げた。
このうち「ビジョンと戦略」では、組織が向かう方向を明確にし、それを実現するアプローチを定める必要があるとし、「Microsoftは、2014年に創業40年を迎えるタイミングで、ビジョンと戦略そのものを考え直し、未来を見据えて、どこに進むべきか、自分たちか目指す北極星はどこかを明確にして変革を進めた」と述べた。
「組織文化」では、「文化は組織にとって最大の強みにもなり、最大の弱みにもなる」とし、社員全員が共通の価値観を持ち、多様性を受け入れて、チャレンジし続ける文化が、変革をドライブすると発言。「当社もチャレンジャーとして、学ぶ姿勢を徹底する文化に変化させた」と述べた。
「独自性」については、他社との差別化ポイントや市場価値を見いだして、独自のポジションを築くことが重要であるとし、「当社も変革にあたり、私たちはいったい何者なのか、お客さまに対してどんな価値を提供できるのか、ということを徹底的に考えて、ビジネスモデルをクラウド中心へとシフトさせた」と振り返った。
最後の「人材」では、スキルを習得するだけでなく、デジタルを使いこなせる人材を育成することが大切であると指摘。「日本でDXが進まない理由として、半分以上の企業が、人材不足を最大の理由に挙げている。2030年には約79万人の人材が不足すると言われている。日本マイクロソフトでは、グローバルスキルイニシアティブジャパンを開始し、これまでに5万人のクラウド人材、AI人材を育成した。2025年末までに20万人の育成を目指す」と述べた。
マイクロソフトユーザーのクラウド利用が進展、政府・自治体でも活用進む
一方、吉田社長は、昨年度の日本における取り組みを振り返り、「トランスフォーメーションの第一歩を踏み出した1年だった」と位置づけ、「お客さまにとってどのような存在でありたいか、目指す姿はなにかということを、『Transform Japan、Transform Ourselves』とい言葉に込めて、お客さまに寄り添い、日本の社会変革に向けたトランスフォーメーションを進めてきた。マイクロソフトといえばDX、DXといえばマイクロソフトと想起してもらえるように、社員が一丸となってビジョンの実現に取り組んできた」とした。
成果として、マイクロソフトユーザーのクラウド利用は、前年比60%増と大幅な成長を遂げたこと、産業界だけでなく、政府や自治体でMicrosoft Azureをはじめとしたクラウド活用が進んだこと、顧客満足度調査でも高い評価を得たことを挙げた。
新年度の方針は「Revitalize Japan」
2021年7月からスタートしている今年度の日本マイクロソフトの基本方針は、「Revitalize Japan」とし、「日本社会の再活性化を最優先課題として取り組んでいく。大企業、中堅・中小企業、公共分野、個人といったそれぞれにおける変革を支援していく」と述べた。
大企業では、自動車、製造、小売といった分野において、世界をリードする企業の変革を支援することで、それぞれの産業における成功事例をつくり、業界全体のDXの推進を活性化。中堅・中小企業では、事業継続に必要なリモートワーク環境の整備、ビジネスにレジリエンシーを持たせるためのクラウド化、安全なビジネス環境の構築の実現に向けて取り組むとしており、今後5年間で、中堅・中小企業のクラウド利用を10倍にまで伸ばす考えを示した。
公共、文教、医療の領域においては、グローバル企業である強みを生かして、世界各国の成功事例や知見をもとに、日本のDXを支援する考えを示した。
公共では、政府や地方自治体、行政機関については、デジタル庁と連携し、誰もが安全で使いやすい社会インフラの構築を支援。文教においては、PCの整備を支援することはもちろん、行きわたったICT環境やAIを活用して、一人ひとりに寄り添った質の高い教育の提供を支援するとした。そして医療では、必要としているすべての人に、適切な医療が提供されるように、最新テクノロジーを用いて支援をしていくという。
また、「Revitalize Japanの実現には、パートナーとの連携が不可欠である」としたほか、「デジタルの力を活用して、よりよい世の中にするために貢献したいと考えており、そのためには、誰もが情報や技術にアクセスでき、社会に参画できるようにしていく。WindowsやOffice、Xboxにはアクセシビリティ機能を搭載していたり、AIを活用した音声や画像認識など、技術面からの支援も行う。そしてサステナビリティについては、2030年までにカーボンネガティブを実現することも宣言しているほか、水資源の保護であるウオーターポジティブにも取り組む。パートナーとともに気候変動の危機も乗り越えたい」と語った。
Revitalize Japanを実現するためのエンジン「Microsoft Cloud」
Revitalize Japanを実現するためのエンジンになるのが、Microsoft Cloudだという。ここでは、デジタルインフラ、ハイブリッドワーク、セキュリティの3点から説明した。
デジタルインフラでは、2030年までにインターネットに接続するデバイスが約500億に達すること、2025年までに発生するデータが175ゼタバイト(ZB)以上に達することを示しながら、「地球上の砂浜の砂粒は1.8ZBであり、地球100個分の砂粒と同じ量の膨大なデータが生まれることになる。ますます増加するデータを処理するために、Microsoftは世界60リージョン以上にデータセンターを設置し、世界中のビジネスを支えられる体制を用意している。これは、クラウドが世界のコンピュータになることを示している。すでにMicrosoft Cloudは、デジタルガバメント、スマートファクトリー、Fintechなどの新たなビジネスの基盤として活用されている。エッジデバイスから出たデータをAzure上に収集し、AIで得たインサイトをもとに、生産性、効率性、効果をあげることができる」などと述べた。
ハイブリッドワークでは、従業員の73%が、今後もリモートワークが選べる状況を希望する一方で、67%の従業員がオンサイトでの対面でのコラボレーションを望んでいるという2つの結果を示しながら、「どこで仕事をしていても、誰とでもつながりを持てるような環境が望まれている。ここで必要不可欠になっているのがMicrosoft Teamsである。パラドックスを解決できるツールになる」と位置づけた。ここでは、Teamsは全世界で月間2億5000万人が利用しており、企業だけでなく、遠隔授業やリモート診断などにも利用されていることを示した。
最後のセキュリティについては、「Microsoft Cloudは、データ、デバイス、アイデンティティ、プラットフォームを包括的に保護することができる」と前置き。Microsoftが毎年、セキュリティに10億ドル以上を投資していること、今後5年間で200億ドルの追加投資を行うと発表したこと、年間300億件の電子メールを保護し、310億件の認証攻撃を阻止していることを示した。「セキュリティは安心して当社に任せてほしい。お客さまには、改革やイノベーションに集中してほしいと伝えていく」と述べた。
さらに、2021年8月からはフルクラウドのWindows 365の提供を開始したこと、クラウドPCという新たなカテゴリーを提案したこと、2021年10月からはWindows 11の提供を開始したことを紹介しながら、「現在、10億人以上がWindowsを利用している。コロナ禍でPCの重要性が再認識され、新たなハイブリッドワークが求められている。Windows 11は、ユーザーインターフェイスを刷新し、ゼロトラストセキュリティを備え、クラウドの親和性を高めた次世代の画期的なOSである」とした。
最後に吉田社長は、「当社のミッションは、『地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする』である。それをもとに、日本では、Revitalize Japanに取り組む。みなさんと一緒になって、日本社会の変革、日本市場の再活性化を図り、次世代のために、よりよい社会づくりに貢献していく」と締めくくった。