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Google・ピチャイCEOとGoogle Cloud・クリアンCEO、5つの分野でGoogle Cloudの価値を訴求
Google Cloud Next '21基調講演レポート
2021年10月18日 06:00
Google Cloudの年次カンファレンスイベント「Google Cloud Next '21」が、米国時間の10月12日から14日までオンラインで開催された。
1日目の冒頭を飾った「Opening Keynote」には、Google/AlphabetのCEOのSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)氏と、Google CloudのCEOのThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏が登壇した。両氏とも、Google Cloudを使うことによる企業変革を強調していた。
Googleがビジネスに役立つ3つのポイント
Pichai氏は冒頭で、COVID-19パンデミックを機に企業のデジタル化が加速し、組織を変革する機会が訪れたと語った。そして、Googleが顧客のビジネスに役立つポイントとして3つを挙げた。
1つめはクラウドプラットフォームだ。「われわれは、最大のネットワークで、最低の遅延時間を実現している」とPichai氏。2021年にワルシャワ、デリー、メルボルン、トロントにデータセンターを建てたことを紹介し、「現在は28リージョンあり、あと10個を予定している」と語った。
2つめは、コンシューマー分野のイノベーションを企業顧客も受けること。YouTubeやAndroid、Nestなど、コンシューマー向けの製品を挙げて、Googleはコンシューマー分野のエコシステムと企業分野のエコシステムをつないでいると語った。その例としては、GoogleアシスタントがContact Center AIにつながって顧客満足度を上げることや、GoogleレンズがVisual Inspection AIにつながっていることを紹介した。
3つめは包括的なセキュリティだ。「セキュリティはすべての基礎にあり、われわれはすべてのレイヤーのセキュリティで長い経験がある」とし、中でもGoogleはゼロトラストコンピューティングのパイオニアであると強調した。
そのうえでPichai氏は、5Gモバイルなど新しい提携を結んだパートナーを紹介した。さらに顧客事例として、自動車にGoogleマップやGoogleアシスタントを採用したフォードや、AIによるバーチャルメーク、Googleショッピングによる顧客接点などを活用しているロレアルの例を説明した。そして、「Googleは、顧客の大きなチャレンジの解決を助けることにコミットする」と語った。
データ:どんな種類のデータにもどんな分析にも対応する
次に登場したThomas Kurian氏は、さまざまな顧客事例をまじえて、Google Cloudの特徴を紹介した。
氏は冒頭で「データ(Are we the best at understanding and using our data?)」、「インフラ(Do we have industry-leading technology infrastructure?)」、「ハイブリッドワークプレイス(Are we creating the best hybrid Workspace?)」、「セキュリティ(Do we know our data, systems, and users are secure?)」、「環境問題(Are we addressing the most important challenges facing our world?)」の5つをキーとして提示。以後、この5つに沿って説明した。
1つめのデータの分野では、Kurian氏は、製薬会社のSchrodingerがAIで創薬を60%速めた事例や、ウィスコンシン州が失業手当の処理を数週間から数日に短縮した事例を紹介。さらに、WalmartのSuresh Kumar氏(CTO and Chief Development Officer)が動画で登場し、サプライチェーンなどグローバルなオペレーションを最適化するために、DWHの97%のテーブルをクラウドに移行を完了し、30%のビッグデータを年度内に移行すると語った。
Kurian氏は、Google Cloudのデータサービスを、どんな種類のデータにも、どんな分析にも対応し、スピード、スケール、セキュリティ、信頼性に優れていると主張した。そして、BigQueryや、分析クラスター構築のDataproc、分散リレーショナルデータベースのSpanner、機械学習の統合プラットフォームVertex AIを挙げた。
そのうえで、新機能として、BIツールのTableauと、GoogleのBIサービスのLookerやBigQuery、Googleスプレッドシートとで連携して使えるようになったことを発表している。そして実際にデモで、LookerのデータをTableauで可視化するところを見せた。
インフラ:Anthosでマルチクラウドを一元管理
2つめのインフラの分野では、Kurian氏はグローバルなメディア企業や通信企業、セキュリティ企業のGoogle Cloud利用事例を紹介。また企業のSAP HANAやVMwareのワークロードも多数Google Cloudで動いていると語った。
さらに、金融業界を含む多くの顧客が、Anthosを使うことでマルチクラウドでのデプロイや管理を一元化していると説明した。そして新しい機能として、Anthosで仮想マシンもコンテナと一元化して管理する「Anthos for VM」をアナウンスしている。
マルチクラウドとしては、GoogleだけでなくAWSやAzure上のデータも分析する「BigQuery Omni」も挙げた。Johnson & Johnsonが、AWSのS3上のデータを、移行なしにBigQueryで分析している事例も紹介。
そのほか、Google Cloudをエッジやオンプレミスで使う「Google Distributed Cloud」も発表した(本誌既報)。ネットワークエッジで動作するGoogle Distributed Cloud Edgeと、データ主権や規制などのためのGoogle Distributed Cloud Hostedの2つがある。
インフラ分野としてはさらに、NetAppのパートナーシップを紹介するとともに、Google Cloud VMware EngineにNetAppのストレージを提供する「NetApp Cloud Volumes for Google Cloud VMware Engine」をアナウンスした。
ハイブリッドワークプレイス:フロントラインワーカーの活用事例
3つめのハイブリッドワークプレイスの分野では、Kurian氏はCOVID-19パンデミック以降は48%の企業従業員がリモートワークすると説明。そしてGoogle Workspaceがシームレスなコラボレーションを実現すると語った。
さらに、Google Workspaceはモバイルデバイスにも最適化されているとして、フロンラインワーカーを取り上げた。その例として、米国の大型病院のCommonSpiritが、フロントラインの医師や看護師がGoogle Workspaceを活用した事例を紹介した。
Kurian氏はGoogle Workspaceについて、Google Workspace Marketplaceからアプリを利用できることを説明。そして、ノーコード開発ツールのAppSheetでプロの開発者でなくても簡単に、データを扱うアプリが作れることを紹介している。
そのほか、Citrixとのパートナーシップによる、クラウドのリモートデスクトップを取り上げ、新しいパートナーシップ拡大によるDaaSソリューションを紹介した。
セキュリティ:向こう5年で500億ドルを投資
4つめのセキュリティの分野では、Kurian氏は「Googleによって毎日が安全になる」と主張。jetBlue航空による脅威分析のChronicleの採用や、Commerzbank銀行によるGoogleの認証局サービスの採用の事例を紹介した。
氏は「Secure by default(デフォルトでセキュア)」がGoogle Cloudの採用を加速しているとして、「Trust nothing(ゼロトラスト)」「Detect everything(すべてを検出)」「Partnership & advisory(ツールだけでなくアドバイザリーサービスも)」の3つを挙げた。
そして、BeyondCorpを拡張して、モダンもレガシーも、Webもデスクトップも、本番環境も、すべてのアプリに対応するとアナウンス。また、ソフトウェアのサプライチェーン(依存ライブラリなど)のセキュリティのフレームワークSLSA(Supply-chain Levels for Software Artifacts)の取り組みを紹介した。
また、脅威対応の強化のために、「Google Cybersecurity Action Team」を発足したことを発表した(本誌既報)。
そのほか、セキュリティにはパートナーも重要であると説明。Fortinet、Palo Alto、THalesに加えて、新たにCybereasonとのパートナーシップを発表した。
ここで再びPichai氏に交代。向こう5年で500億ドルをサイバーセキュリティ強化に投資すると語った。
また、Google Workspaceに、セキュリティハードウェアトークンのTitan Security KeysやゼロトラストのBeyondCropなど、Googleのセキュリティ製品・サービス、パートナーのソリューションを組み合わせる「Work Saferプログラム」をアナウンスした(本誌既報)。
環境問題:2030年にはすべてカーボンフリーなエネルギーに
最後の環境問題の分野について、Pichai氏はカーボンニュートラルを2007年から達成し、2017年からは消費電力の100%を再生可能エネルギーで賄っていると説明した。また、22030年にはオフィスからデータセンターまですべてカーボンフリーなエネルギー源にする計画を語った。さらにPichai氏は、4年間のクラウド移行が10億トン、自動車2億台分のカーボン削減に貢献するというIDCの予想を紹介した。
ここでPichai氏は、新サービス「Google Cloud Carbon Footprint」をアナウンスした(本誌既報)。各ユーザー分のGoogle Cloud利用による炭素排出量をダッシュボードに表示するものだ。
「このデータを持つことは重要なことだ。ほかのところとあわせて炭素排出量を追跡できる」とPichai氏は語り、Google Cloud Carbon Footprintと、Salesforceの二酸化炭素排出・削減の分析ツールSalesforce Sustainability Cloudとの連携についてもアナウンスした。
さらに、利用されていないプロジェクトの削除を提案する「Carbon Reduction Recommendations」(本誌既報)についてもアナウンスした。
最後にPichai氏は、「クラウドへの移行をセキュアでサステナブルにするのを助けて、次に起こることを解決する」と語り、「われわれを、クラウドの旅のパートナーとして信頼してくれて、ありがとう」として基調講演を締めくくった。