イベント
次世代バックアップ製品を手掛ける3社が集合、それぞれの特徴を“ガチンコ”でアピール
Actifio、Cohesity、Rubrikの担当者が登壇
2018年12月27日 06:00
セミナー「次世代バックアップソリューション Day 2018 ~ガチンコ対決~」が、IT商社の株式会社ネットワールドの主催で12月18日に開催された。対象は、パートナーのSI企業やエンドユーザーなど。
次世代バックアップ製品として、Actifio(アクティフィオ)、Cohesity(コヒシティ)、Rubrik(ルーブリック)の3社が登場し、パネルディスカッション形式で各社製品の特徴を紹介した。
いずれも、バックアップをコールドデータとして保存するだけでなく、セダンダリストレージとしてデータを多目的に再利用する点などを、旧来のバックアップ製品との違いとして語っている。
分散ファイルシステムを中心としたCohesity
パネルディスカッションの前に、3社それぞれ「10分間アピールタイム」で自社製品を紹介した。
Cohesityについては、Cohesity Japan株式会社の岩本直幸氏(シニアセールスエンジニア)が説明した。
同社は、Nutanixの共同創業者でもあるMohit Aron氏が2013年に設立した企業で、そのセカンダリストレージは、分散ファイルシステム「SpanFS」を中心に、SMB・NFS・S3・iSCSIなどのマルチプロトコルによるインターフェイスを備える。
独自開発のMapReduce実装も内蔵。分散ファイルシステムにノードを増やせばそれだけ性能が上がる設計で、Cohesityがアプライアンスとして提供するほか、CiscoやHPE、Dellのサーバー製品に対応している。
もともとはバックアップなどのデータ保護から始まり、ファイル共有やオブジェクトサービスに用途を広げ、さらに単一プラットフォームからのテスト/開発データの用意や、データ分析に広がっている。
そのほか、VMware仮想マシンのvmdkファイルをAWSのAMIフォーマットに変換する機能や、Pure StorageのAPIを呼び出してバックエンドでバックアップする例を岩本氏は紹介した。
1つのデータを目的別に使えるようにするActifio
Actifioについては、アクティフィオジャパン株式会社の高峰康氏(CTO)が説明した。氏によると、Actifioはセカンダリストレージでもバックアップアプライアンスでもなく、コピーデータ仮想化製品として自社製品を位置付けている。
一般に、本番データからバックアップや、テスト用データ、開発用データが作られるとき、データ量は3倍から4倍、多いときは数十倍になる。そこでActifioでは、1つのデータを「ゴールデンマスター」として1種類置いておき、それを目的別に同時並行で使えるようにする。最近多いのが、開発環境をすばやくデプロイする用途だという。
ゴールデンマスターからの変更は、アプリケーションと連携してブロックレベルでの差分を取り込むようになっており、データの整合性を保証するのが特徴。これにより、例えばインフラを増強することなくテスト環境を作れるという。
事例としては、そのデータ量が多いところほど効果が高いという性質から大手企業が多いとのこと。高峰氏は、CitibankがOracleの6000インスタンスのデータをActifioで管理している例や、東北電力での採用事例などを紹介した。
データ管理を自動化するRubrik
Rubrikについては、ルーブリック・ジャパン株式会社の飯野昌紀氏(SEマネージャ)が説明した。氏は、バックアップシステムを構築する担当者によくある愚痴をスライド上に並べてみせ、「これまではバックアップシステムを構築してバックアップを取ることで手いっぱいだったが、それを簡単にし、空いた時間をデータの活用に使えるようにする」と語った。
Rubrikはバックアップを自動化するためのアプライアンスで、物理アプライアンスおよび仮想アプライアンスとして提供される。特徴は、VMware vCenterやクラウドサービスなどの単位でアカウントを登録しておくことで、その下の仮想マシンが増えても自動的に登録してくれるAuto-Discovery(自動ディスカバリ)と、SLAベースのAuto-Protect(自動保護)。
構成としては、SLAベースの自動化やインデックス化による検索の機能を持ったコントロールプレーンと、スケールアウトするストレージのデータプレーンからなる。ハイブリッド環境に対応し、例えばAWS EC2上のシステムのデータを、Rubrikがコントロールプレーンとなり、S3に保存するといったこともできる。
飯野氏は、自動化による「意識しないプラットフォーム」や、データに基づく意思決定のための「ビジネスの会話ができるプラットフォーム」を強調。「デジタル時代では、手組みのシステムはもうやめよう。システムは新しくなっていく」と語った。
得意分野「セカンダリデータプラットフォーム」「開発生産性の向上」「働き方改革」
パネルディスカッションには、「10分間アピールタイム」で説明した3人が登壇。事前に出された“お題”に対して各社の特徴を自己申告した結果をもとに、互いに自社製品をアピールした。モデレーターは、ネットワールドの宮本隆史氏(営業本部 ストラテジック・プロダクツ営業部)。
最初のお題は「各社の得意分野」だ。
Cohesityの岩本氏は「セカンダリデータプラットフォーム」を挙げて説明した。スケールアウトNASとして、昼間はファイル共有に使い、夜間はバックアップとして使うといったことができる。また、本番データを元に、データのマスキングをして開発環境に見せる機能を、2019年に提供予定であることなども紹介された。宮本氏の「データの再利用が肝でしょうか」という質問に、岩本氏は肯定し、「プライマリに対して、災害対策やテスト環境など、二重三重になるものを整理する」と答えた。
Actifioの高峰氏は、「開発生産性の向上」を挙げて説明した。まず、テスト環境のその1、その2や、ステージング環境、検証環境などをすぐに用意できる。そして、アプリケーション連携により、データを活用できるところまでもっていく。また、活用する企業は自前のポータルをActifioの上に構築できるほか、PuppetやAnsible、Chefとの連携により構築時間を短縮できる。そのほか、「1つのデータをさまざまな人が使って性能が担保できるか?」という疑問について、仮想コピーを使わない場合と比べ、差(劣化する性能)は“たかだか6%”だと説明した。
Rubrikの宮本氏は「働き方改革」を挙げて説明した。宮本氏は、企業のITシステムの中で、バックアップ部分は最後に限られたリソースでやりくりされるという傾向について「これはよろしくない」と主張。「まずはバックアップを前提にしてみる」ということで、Rubrikによりすべての仮想マシンを標準でバックアップすることや、データバックアップはアプリケーション担当者に選択を提示することなどを紹介して、「Rubrikで簡単になる」と述べた。
得意分野「ハイブリッドクラウド」「クラウド連携」「Backup as a Service」
「各社の得意分野」の2周目として、ActifioとRubrikは「ハイブリッドクラウド」「クラウド連携」を挙げた。
Actifioの高峰氏は、オンプレミスを残しながらクラウドを活用するハイブリッドクラウドを例に、「どうやってクラウドにオンラインデータをもっていくか、という場面にActifioが使える」と語った。例えばディザスタリカバリ(DR)では、ふだんはデータを保存したS3の容量課金だけの状態で、仮想アプライアンスのActifio Skyもシャットダウンしておく。そして必要になったときにはS3のデータからクラウドのアプリケーションを立ち上げる。「ここまで一貫したソリューションを提供できているのは私たちだけだと自負している」(高峰氏)。
Rubrikの飯野氏は、「クラウド連携には、クラウドでアーカイブする場合や、災害時などクラウドで一時的に使う場合、ネイティブクラウドの場合などいろいろある」とし、これらを同じように扱えると説明した。操作としては、スライダーを動かすだけのSLA定義や、筐体からもクラウドからも同じように戻せるファイル単位のリストア、クラウドへのインスタンス変換、クラウドの保護設定などを紹介。「ポイントは、クラウドを使っていることを意識させない操作感だ」と氏は語った。
Cohesityの岩本氏は「Backup as a Service」を挙げて説明した。ポリシーベースで自動バックアップする機能だ。「Rubrikのポリシーベースの自動バックアップと似ている。違いは、Rubrikはオーケストレーションで、Cohesityは自社のスケールアウトNASを使っている点」(岩本氏)。NetBackupと比べてコストを55%削減した事例も紹介された。
お薦め技術「自動化」「ブロックレベル永久差分」「マルチテナントへの対応」
次のお題は「各社お薦めの最新テクノロジー」だ。
Rubrikの飯野氏は「自動化」を挙げた。「一般に自動化というと、ユーザーとバックアップ担当の間が言われるが、そのためにもまずはバックアップが自動化できないと意味がない」という。それを満たすためのRubrikのアーキテクチャとして、AIライクな自動ライフサイクル管理や、バージョン依存を最小限にするAPIエコシステムなどが紹介された。
Actifioの高峰氏は「ブロックレベル永久差分」を挙げた。VMwareのCBTやOracleのBCTなど、機能があればそこと連携し、差分をとって保存する。一方で、SQL Serverには同様の機能がないので、Actifio側で作ったうえで、その機能をLinuxのドライバーにすることにより、その上で動くアプリケーションはすべてCBTに対応させたという。
Cohesityの岩本氏は「マルチテナントへの対応」を挙げた。「お客さまごとでも、お客さまの集まりごとでも分離できる」と岩本氏は述べ、その単位で、ネットワークの分離や、ユーザーや管理の分離を実現するとした。
マルチテナントのついては、ネットワールドの宮本氏も「マルチテナントをもったデータ管理ソフトは、いま大企業を中心に注目されているが、なかなかできていない」とし、その中でCohesityのほかActifioやRubrikもマルチテナントの機能を持つことを紹介。「各社アプローチが違う」とまとめた。
お薦め技術「アプリケーション連携」「データ管理」「統合管理・運用」
「各社お薦めの最新テクノロジー」の2周目として、Actifioの高峰氏は「アプリケーション連携」を挙げた。バックアップデータを再利用するときに、IPアドレスが重ならないようにするなど、アプリケーションごとの対応が必要となる。Actifioでは1種類のエージェントで各アプリケーションに対応していることを氏は説明した。
これを受けてネットワールドの宮本氏も、バックアップなどのエージェントの傾向について語った。「これまではエージェントを通じてデータを取得するプル型だったが、アプリケーションからバックアップサーバーにデータを投げるプッシュ型に移りかわりそうな雰囲気だ」という。
Rubrikの飯野氏は「データ管理」を挙げた。「データを切った貼ったでデータ管理って言いすぎじゃない?」という言葉をまず示し、Rubrikの詳細なインデックスデータを利活用したSaaS上のデータ管理ツール「Polaris」を説明した。Polarisの利用例としては、機械学習によりシステム異常を自動検知し即時リカバリするRaderが紹介された。
Cohesityの岩本氏は「統合管理・運用」を挙げた。具体的にはGUI機能として、バックアップのサマリなどのレポートや、ベータリリース段階にあるカスタムレポーティングが説明された。また、SaaS型統合管理ツールのCohesity Heliosを、2019年に日本語対応することを岩本氏は明らかにした。
「一番購入したいのは?」会場からの投票結果
パネルディスカッションの後は、オンラインアンケートのLiveQAシステムを使った質問タイムとなった。「互いに競合するとうれしいメーカーと、競合すると面倒なメーカー」や、クラウドサービスのバックアップ機能との競合、従来型のバックアップ製品との比較、クラウド連携の注意事項などの質問と回答が行われた。
最後には「3社のうち、一番購入したいメーカーは?」について、LiveQAシステムで会場から投票された。その結果、1位となったActifioの高峰氏は「セカンドストレージとバックアップとは少し外れたソリューションだったが、真価がみなさんに理解されたと思う」とコメントした。
順位はともかく、方向や特徴の異なる3社のソリューションについて、それぞれの特徴がわかるセミナーとなった。