インタビュー

バックアップストレージベンダーがOSSコミュニティベースでAPIを整備するワケは?

 バックアップアプライアンスのベンダーである米Rubrikは、オープンソースコミュニティ「Rubrik Build」を発表した。同社製品のAPIに関して、ソフトウェア開発キット(SDK)や、ツール、ユースケースをコミュニティベースで整備するという。

 今回は、そのRubrik Build、またRubrik製品全般などについて、同社チーフ・テクノロジストのクリス・ウォール(Chris Wahl)氏に話を聞いた。

Rubrikのチーフ・テクノロジストのクリス・ウォール氏

指定したSLA要件からシステムが意図を汲みとる

――最初は、Rubrikの製品や技術が、ほかのバックアップ製品と違う点を教えてください。

 まずコアの技術では、プラットフォームを構築する分散技術があります。また、API経由でプラットフォームを展開する点も特徴です。

 SLAを定義するだけでバックアップを実行できることも、大きな特徴です。こうした背後では、Cerebroという機能がデータのライフサイクル管理しています。

――それらの特徴は、ユーザーに何をもたらしますか?

 使い方を比較してみましょう。ほかの製品では、まずデータソースを選びます。そして、それをどういう順番で守るか動作を、大変な手間をかけて指定します。

 しかも、それは初期設定です。データセンターが動き続ける中で、新しいワークロードの追加や、修正、移動などの変更が出てきます。データの保存先にも注意する必要があります。

 Rubrikではまったく異なり、システムがデータセンターや各要素を見ています。そして、管理者がSLAを指定すると、システムはその意図を汲みとって動作します。

 「4時間以上データを失ってはならない」「クラウドにレプリケートするようにする」「コンプライアンスの要求で10年間保存」といった意図です。ワークロードにSLAを適用する方式なので、ワークロードがどこにいっても同じように適用できます。

CDMにもPolarisにも投資を続ける

――Rubrikを管理するSaaSサービス「Rubrik Polaris」にも力を入れていると聞きます。これはどのようなものでしょうか。

 Rubrik製品の中心には、CDM(Cloud Data Management)があります。SLAを元に、データベースやアプリケーション、仮想マシンなどの保護を実行しています。

 この構造を変えるのがPolarisです。キーとなるのが、ファイルの属性やサイズ、識別子、UUID、マジックバイトなどのメタデータです。

 Polarisのアプリケーションの1つに「Polaris Radar」があります。機械学習でアプリケーションのデータの健全状態を見る仕組みです。もし、ランサムウェアによってデータが暗号化されたといった問題があれば、それを知らせてくれたり、攻撃の直前の状態にロールバックしたりできます。データ保護の非常に賢い応用であると考えています。

 われわれは、CDMにもPolarisにも投資を続けていきます。CDMにも機能追加してきますが、ただしPolarisの傘の下でです。例えば、Office 365のアプリケーションデータを保護するにはデータセンターは関係なく、クラウドにおける連携機能を強化する必要があります。

Rubrik CDMとRubrik Polaris
Polaris Radarによるランサムウェアからの保護

――クラウドのデータ保護のニーズは増えているのでしょうか。

 そのとおりです。まず、人々はクラウドのレイヤに保護機能があると考えがちですが、それは間違いで、たえず意識しなくてはいけないと考えています。

 また、クラウドから別のクラウドへのデータモビリティを考えると、いろいろなクラウドの中間に立つコントロールプレーンが必要になります。その役割をPolarisが果たすと考えています。

――最近のバックアップ関連製品では、バックアップデータの利活用が言われるようになりました。それにはどのようなものがあるでしょうか。

 ひとつの例として、仮想マシンがデータセンターで動いていて、AWS(Amazon Web Services)にもサービスを展開したい場合を考えます。このとき、われわれのCloud Onという技術で、仮想マシンの形式をAWSのものに変換できます。それもSLAのポリシーの中で、チェックボックス1つで設定できます。

――この技術はどのようなところで使われるのでしょうか。

 もっとも使われているのは、クラウドの移行を考えているが具体的にどうすればいいかわからないときです。2つめは、クラウドネイティブサービスがどのようになるか見てみたい人のためです。3つめは、ディザスタリカバリ(DR)です。

Cloud Onにより仮想マシンをAWSのものに変換

Rubrik Buildでデータマネージメントの大変な点を共有し、データ活用につなげる

――現在、Rubrik Buildという取り組みを展開していますね。それについて教えてください。

 Rubrikでは、すべての機能がAPI上で構築され、すべての機能をAPIで提供する原則になっています。エンタープライズでは、Rubrikのような製品は、さまざまなアプリケーションとの連携が必要となります。それを、Rubrik製品のAPIを使っていかに簡単に実現するか。そのための100%オープンソースコミュニティの取り組みがRubrik Buildです。

 ガートナーが毎年CIOに調査している結果を見ると、この6年では、決まってハイブリッドクラウドやパブリッククラウドの活用が(課題の)上位に挙がります。Rubrik Buildは、この痛みの解決を、APIエコノミーによって提供できます。

――どのようなものを提供するのでしょうか。

 例えばデータセンターでは、ビジネス側の要件をいかに結びつけるかが大変な点で、そのためにサービスカタログを作成したりします。これを、RubrikのAPIで、ServiceNowなどのワークフローツールから結びつけることができます。

 またRubrik Buildでは、クイックスタートやドキュメント、ビデオ、教育、トレーニングなどを提供できます。そのほか、インテグレーションのためのツールも提供します。

 もう1つの期待として、自動化やAPIを学ぶことで、Rubrikと関係ないものも含め、データマネージメントについて学び、活用できるようにするということがあります。

――それをオープンソースコミュニティに提供する意義とは何でしょう。

 業種に関係なく、管理者がデータマネジメントの大変な点を共有できることがあります。実際に、Rubrik Buildをローンチしたときには、既存のお客さまがやってきて、これをどのように使うか話してくれました。このように、いろいろな業種からフィードバックが集まっています。

 ある銀行では、Rubrikの設定をグローバル70拠点で一貫性をもって展開したいという要望を持っていました。その銀行では、Rubrik Buildのローンチしたときから、マルチクラウド管理ツールのRed Hat Cloud Formsと連携させ、コンプライアンスやガバナンスを満すことに取り組んでいます。

――一方で、RubrikはRubrik Buildによって何を得るのでしょうか。

 どの業界でも、顧客のフィードバックはすばらしいものです。当社はそこにフォーカスしています。Rubrik Buildによって、顧客にどのような苦しみがあるか、イノベーションがあるか、はっきりとしたヒントを得られます。

 個人的には、Rubrik Buildによって優秀なコミュニティを構築して、どのようにデータマネジメントが進むか理解したいと思っています。APIエコノミーは、われわれすべてに平等に影響を及ぼしています。ゴールとして、バックアップが自動化に進むことができれば、取り組みが成功したといえるでしょう。

 ちなみに、最初にRubrikが手がけたオープンソースプロジェクトとして、PowerShell用開発キットがありました。2015年のことです。これをどう使っているかという顧客の声を見てみると、バックアップの検証の自動化に使っているという話がありました。そういうイノベーションは興味深いと考えています。

 ユーザーは自分の大変な点をいちばん理解していますし、そのための道具をわれわれは提供します。ぜひ、これを読んだ方々も参加してください。ステッカーも提供しています(笑)。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 セキュリティとクラウドについて質問をよく受けます。Rubrikは両者を組み合わせていて、Polaris Radarもその1つです。すべてクラウドとか、すべてオンプレミスとかいうことが言われがちですが、ハイブリッドクラウドが重要だと思います。Rubrikはハイブリッドクラウドに強みを持ち、そこにデータ管理レイヤーを提供しています。