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NEC、DX事業強化に向けた新ブランド「BluStellar」発表 “Value Driver”への転換図る

 日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業の新ブランド「BluStellar(ブルーステラ)」を発表した。

 新ブランド導入の狙いをNEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏は、「これまでNECはNECデジタルプラットフォームを中核にDX事業を進め、着実な成果と高い営業利益、成長率を実現できている。これを社内だけでなく、お客さまと社会の成長を実現するものとして、お客さまを未来へ導く価値創造モデルとなる新しいブランド、BluStellarを提供する」と説明した。会見場には森田社長以下、社内スタッフ全員がBluStellarのロゴ入りポロシャツを着用し、新しいブランドをアピールした。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏

 なお、競合各社も独自ブランド名を冠したサービス事業を強化しているが、「他社の状況を詳細に把握しているわけではないが、BluStellarは我々自身の変革。相対的な比較よりも、我々自身が自信を持って、日本の成長のために何を提供できるのかを追求した結果、誕生したもの。これによってNECがSIerから、Value Driverへ変わる」(執行役 副社長 Senior EVP兼CDO 吉崎敏文氏)と違いを強調した。

NEC 執行役 副社長 Senior EVP兼CDOの吉崎敏文氏

 NECでは2019年から、本格的に社内でのDXの取り組みをスタート。吉崎CDOは、「5年前、2019年に最初のDXの専門組織を作り、同時にオファリング、NEC Digital Platformを1つのアーキテクチャー上で動かすプラットフォーム構築を進めた。その後、戦略コンサルを立ち上げ、グローバルアライアンスによって印西のデータセンターからハイパースケーラーのパブリッククラウドに直結するといった試みを進めてきた。昨年にはハードウェア、ソフトウェア、ネットワークといった製品、サービスを1つの組織として、そこに縦軸のマーケット軸をからめ、変革を進めている。こうした取り組みを経て今回、BluStellarを発表する。今まで我々がやってきたもの、自社変革の実績と実践を集大成化したものとなる。今回、周知をはかるためにブランディング化し、さらなる成長を目指し、お客さまに提供させていただく。2024年4月にデジタルプラットフォームビジネスユニットに所属する3万4000人の中から、BluStellar事業推進組織として400人体制の新組織を作った」と、時間をかけ、培ってきた実績をベースに、今回の発表につなげたと説明する。

BluStellarを強力に牽引する全社横断組織

 これまでのNECの事業は、個別システムインテグレーション、受託、人力によるシステムインテグレーターだったのに対し、BluStellarはAIを活用し、自動化、自律化、標準化を進める。その結果、品質向上、価値創出、スピードを持ったSystem Value Driverとして社会価値創造をリードする企業となることを目指す。

NECは「Value Driver」へ

 具体的な内容としては、BluStellarは「お客さまを未来へ導く価値創造モデル」として、「ビジネスモデル」、「テクノロジー」、「組織/人材」という3つの要素を持っている。

BluStellarの3つの要素

 ビジネスモデルについては、戦略コンサル、サービスデリバリー、運用・保守とすべてのプロセスにAIを活用する。AIを活用した戦略コンサルでは、経営アジェンダの解決にデータサイエンスを融合。長年のデータサイエンス・テクノロジーの知見による、データドリブンな構想策定行うことを強みとする。戦略コンサルタントは2024年実績で700人体制だが、これを2025年に1000人体制へと拡充させる。特にAIの知見を持ったコンサルタント100人によって、顧客の構想策定を実践していくという。

経営アジェンダの解決にデータサイエンスを融合させスピーディに実装へ

 AIを活用した戦略コンサルを実施するために、ドイツに本社を持つCelonis社との協業を強化し、コンサルサービスの高付加価値化を進める。記者会見ではCelonisの共同創業者で、共同CEOであるバスティアン・ノミナヘル氏からビデオメッセージが寄せられ、協業による戦略コンサル拡大をアピールした。

ビデオメッセージで登場した、Celonisのバスティアン・ノミナヘル共同CEO

 またサービスデリバリーについては、AI/Exastro活用によってSI自動化によるデリバリースピード向上を図り、迅速化と生産性向上に寄与するとしている。共通化・自動化ソリューションを活用した結果、従来は数日かかっていた共通基盤上の環境構築を都度手動で処理していた作業が、環境構築自動化、共通テンプレート化によって運用者の作業負担を大幅に削減し、おおよそ半日で作業が終了するようになったとのこと。

SI自動化によるデリバリースピード向上(AI/Exastro活用) 迅速化と生産性向上に寄与

 重要な要素の2つ目であるテクノロジーについては、現在、変革を支えるキーテクノロジーとなっているのがAIとセキュリティだ。NEC125年の歴史で培ってきた技術力をフル活用し、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークに最適なものを組み合わせて提供する。

AIとセキュリティがキーテクノロジーに

 AIについては、業種・業務に応じたソリューション展開とするために、さまざまな業種・業界のニーズや秘匿性の高い業務に対応可能な生成AIサービスを提供する。

 セキュリティについてもAIを活用し、独自の脅威データベースや生成AIで高精度なインテリジェンスをスピーディに生成する。NECは、グループ全体の高度な知見を持つ専門エンジニア集団集結である「NECセキュリティ株式会社」の代表取締役社長として、警察庁、INTERPOLで仕事をしてきた経験を持つ中谷昇氏が就任し、セキュリティ事業に取り組む体制の強化を進めている。

独自の脅威データベースや生成AIで高精度なインテリジェンスをスピーディに生成

 また、先端技術を取り込むために、NECが取り組む研究開発技術とビジネスへのシームレスな連携により、先端技術の市場投入を加速し、BluStellarの将来像を牽引していくことを目指す。

 なお、推進するテクノロジーについては、「現在は圧倒的にAIとセキュリティだが、例えば量子技術が進展すれば注力技術も大きく変わることになる。技術進展に応じて、取り組む内容を変えていく」(吉崎CDO)という。

 ガバナンスやDigitalエシックス(倫理)については、テクノロジーを活用し、競争の源泉とするために人間中心のデジタル社会を実現するデジタルエシックスに関し、総務省・経済産業省「AI事業者向けガイドライン」の策定に参画するなどの活動を行っている。

ガバナンス/デジタルエシックスの重要性

 テクノロジーリスクマネジメントは、ベンチャー企業であるRobust Intelligence社と連携した、生成AIのリスク評価などを行っている。会見では、Robust Intelligence社の創業者である大柴行人氏からの、連携への賛同メッセージビデオが流れた。

 3つ目の「組織/人材」としては、将来のビジネス構築として、グローバルハイパースケーラーとの戦略協業をさらに強化することが強調された。提携パートナーとして名前が挙がったのは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Oracle、SAPの4社だが、それ以外のパートナー約400社と共創による新市場創出を目指し、関係を強化していく。

グローバルハイパースケーラーとの戦略協業強化

 BluStellarを進めるために欠かすことができない社内のデジタル人材については、これまで2025年までに1万人という目標を掲げていたが、その目標は2024年に前倒しでクリア。2025年までに1万2000人の人材育成を目指す。

デジタル人材戦略

 アカデミアとの連携については、オープンサイエンス時代の「次世代高性能計算・データ基盤システム」の実現に向け、大阪大学と共同研究所を設置、共同研究を推進していく。