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NEC、DXブランド「BluStellar」の強みや特徴を説明 成功事例を基にした価値創造シナリオを全社で共有

DXに関する調査レポート「DX経営の羅針盤2024」の結果解説も

 日本電気株式会社(以下、NEC)は25日、新ブランドである「BluStellar」によるDX推進への取り組みについて説明した。また、同社が2024年4月に発行したDXに関する調査レポート「DX経営の羅針盤2024~CxOから学ぶベストプラクティス~」についても説明した。

 NECが2024年5月に発表したBluStellarは、「お客さまを未来へ導く価値創造モデル」と位置づけているほか、NEC自らを、システムを受託開発する従来のシステムインテグレータから、ValueDriverへと進化させる取り組みに位置づけている。

 NEC BluStellar事業推進部門 シニアディレクターの岡田勲氏は、「経営アジェンダを明確にした上で、NECが持つテクノロジーや人材を活用するとともに、成功事例をアレンジし、これをお客さまに適用。ゴールに向かって最短距離の道筋によって、一緒に課題を解決していくものになる。そうした取り組みを推進するというNECの意思表示がBluStellarである」と述べた。

NEC BluStellar事業推進部門 シニアディレクターの岡田勲氏

 顧客のDX実現構想を示し、これを成功ストーリーと事例によって適用する「BluStellar Agenda」、顧客に提供するオファリングやNECが持つテクノロジーおよび商材などによる「BluStellar Technology」、BluStellarを支える社内外の取り組みである「BluStellar Programs」で構成。さらに、顧客が抱える課題を解決するための価値創造シナリオである「Scenario」により、コンサルティング、製品、サービス、オファリング、インテグレーション、運用、保守を組み合わせて顧客価値を創造するという。

BluStellarの全体構造

 Scenarioでは、5つの経営アジェンダに対して、8つのシナリオグループを用意。「成功事例をもとに、経営アジェンダに対するゴールを想定し、サービスを提供することになる。これまでの仕組みでは、お客さまが必要なものを一から組み上げ、隣のチームが同じようなシステムを作っていたこともあった。結果としてお客さまへの提供が遅くなったり、サービスレベルが低下したりという課題が生まれていた。Scenarioによって、成功事例の『型』を作り、これをNEC全体で共有し、さらに『型』は常にアップデートをしていくことになる。NECは、戦略立案から実行までの責任を持ちながら解決策をより良い形で提供し、お客さまに対するこれまでの課題を解決できる。お客さまに寄り添うため、安心感も提供できる」と説明した。

Scenarioとは

 BluStellarでは、「社会とビジネスのイノベーション」、「顧客体験変革」、「業種変革」、「組織・人材変革」、「デジタルプラットフォーム変革」の5つの経営アジェンダを設定。「BluStellar Social Business Innovation」や「BluStellar Customer eXperience」、「BluStellar Process Innovation」など8つシナリオグループを用意した。「データ活用によるデータドリブン経営」、「DX構想、デザイン思考によるビジネス変革の加速」、「Digital IDによる安全で快適な新たな体験の提供」、「コンサルとシステム提供によるサステナビリティ経営の実現」などのScenarioをそろえている。

 Scenarioは、時代の変化や、社会環境の変革にあわせて変更しながら提供していくことになるという。

経営課題や社会課題の解決のために、BluStellarが提供するDX実現構想や成功シナリオ

 説明会では、BluStellarの3つの事例を紹介した。

 大東建託では、もともと事業ごとに独立性が強いという背景もあり、約100の周辺システムのデータが分散。過去にBIツールを導入したが、現場には定着しなかった経緯があった。NECでは、コンサルタントが半常駐し、データ管理の状況やデータ活用の様子、現場の課題などを把握し、データ活用プロセス全体をカバーした基盤の概要設計と検証を実施したという。

 「現場の声を聞いた結果、単にシステムを統合するという提案ではなく、データ活用文化を現場に根付かせるためのアプローチから提案した。ワークショップを通じて、データ活用によって新たな発見ができることを体験してもらい、データを使うことのメリットを定着させた。そこから、次の提案として、データドリブン経営をスモールスタートで始めることを提案している」という。

大東建託の事例

 三井住友海上火災保険では、NECのLLMであるcotomiを利用し、事故対応業務のプロセス変革により、生産性向上と新たな価値を提供することができたという。具体的には、人手で行っていた事故対応業務に生成AIを活用。電話による問い合わせを、NECの音声認識技術と生成AIによりテキスト化し、タイムリーに文章を要約することで、手作業だった経過記録業務を自動化した。これにより、年間約29万時間分の業務削減効果が生まれたという。今後さらに活用範囲を拡大していくことになる。

 東京電力パワーグリッドでは、電力設備の更新工事が増加する一方で、現場の人員が減少する傾向にあり、DXへの取り組みが急務だったという。人手不足は多くの企業で共通の課題だといえる。NECでは、同社社内において、テクノロジー活用検討セッションを実施し、ありたい姿を検討。現場のヒアリングを通じて、ありたい姿と現状とのギャップを把握して、修正を行い、ロードマップを策定したという。「AIの活用による業務の効率化だけでなく、DXによる“ありたい姿”を検討する提案に対して高い評価が得られた。お客さまとの信頼関係を構築した上での提案が評価された」と述べた。

三井住友海上火災保険の事例
東京電力パワーグリッドの事例
【訂正】
  • NECより、東京電力パワーグリッドの取り組みに対するコメントが一部変更されたため、表現を訂正しました。

DX経営の羅針盤 2024の結果を説明

 一方、BluStellar Report「DX経営の羅針盤 2024~CxOから学ぶベストプラクティス~」の結果についても説明した。

 同レポートは、2023年に続き、2回目の発行で、年商300億円以上の企業のDX推進リーダーやDX担当者を対象に調査を実施しており、定量アンケート調査では201人から有効回答を得ている。

DX経営の羅針盤 2024~CxOから学ぶベストプラクティス~

 4つの経営課題である「社会とビジネスのイノベーション」、「顧客体験変革」、「業務変革・デジタルプラットフォーム変革」、「組織人材変革」に関する日本企業の取り組みの実態や課題を浮き彫りにしているのが特徴だ。

 これによると、DXの着手率は前年調査に比べて大幅に上昇。特に、「意思決定のデジタル化」の着手率は95.5%となり、前年の49.6%から大幅に上昇している。また、「バリューチェーンのデジタル化」では、着手率が85.7%となり、前年の35.7%から大きく拡大。「ビジネスモデル変革」では、着手率が85.2%に達し、前年調査の39.7%から進展していることがわかる。

DXの着手・進捗状況

 NECの岡田氏は、「昨年は半数だった『意思決定のデジタル化』が、今年はほぼすべての企業で取り組んでいる。欧米でデータドリブン経営の成功事例が生まれており、それが日本の企業を後押しした。『バリューチェーンのデジタル化』では、物流の2024年問題をはじめとして人手不足への対応が課題となり、自動化への取り組みも加速している。『ビジネスモデル変革』では、DXへの取り組みが業務効率化にとどまらず、ビジネスモデルの再定義と実行へと関心が高まっている」と総括した。

 またDX推進においては、人材不足が最大の課題になっていることもわかった。「DX企画部門の人材不足とともに、DXを実行し、加速する役割を担う事業部門での人材不足も課題となっている。さらに、DXの達成後に目指すのは、『現事業の競争力の向上』、『ビジネスモデルの改革』、『サステナビリティの推進』の3点であり、単なるデジタル化ではなく、経営のなかにどう生かしていくのか、組織や風土をどう変えるのかといったところに関心が集まっている。BluStellarは、こうしたお客さまのゴールに対するサポートをしたり、リードしたりする仕組みを用意し、ブランド化したものである。NECの意志を示したものになる」などと述べた。

DX推進の課題