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SmartHR、タレントマネジメント領域で急成長、ARRが100億円突破

さらなる事業拡大へ「マルチプロダクト戦略」を推進

 クラウド人事労務ソフトウェア「SmartHR」を運営する株式会社SmartHRは14日、事業戦略発表会を開催した。これまでの事業展開を振り返り、ARR(年間経常収益)が100億円に到達したことを発表するとともに、今後の事業拡大に向けたビジネス戦略について説明した。

写真左から:SmartHR 取締役COOの倉橋隆文氏、SmartHR 代表取締役CEOの芹澤雅人氏

 SmartHRは、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を2015年に提供開始して以来、労務業務を効率化するサービスというだけでなく、タレントマネジメントシステムとしても進化しているという。

 これまでにタレントマネジメント機能として、「人事評価」「分析レポート」「従業員サーベイ」「配置シミュレーション」といった機能をリリース。労務管理とタレントマネジメントの組み合わせにより、入社から退職に至るまで、さまざまなシーンで人事担当者や従業員の業務効率化を実現すると同時に、必要なデータが自然と集まる仕組みによって、「人事データをいつでも活用できる」状態をつくりだすことができるとした。

クラウド人事労務ソフト「SmartHR」のサービス概要

 SmartHR 取締役COOの倉橋隆文氏は、「SmartHR」のビジネス状況について、「労務管理市場における『SmartHR』のシェアは圧倒的No.1であり、年々そのシェアは拡大している。日本では労務管理市場のクラウド浸透率はわずか3.1%と推定されており、まだまだ市場の成長余地は大きいと見ている。一方、タレントマネジメント市場では、先行プレイヤーに迫る勢いで成長を続けており、特に『人事評価』機能は急速に顧客数を増やしている。さらに、顧客満足度についても、クラウド型人事労務システムとタレントマネジメントシステムそれぞれでNo.1を獲得し、99%以上の企業が継続利用している」と説明している。

SmartHR 取締役COOの倉橋隆文氏

 また、ARR(年間経常収益)については、昨年4月、SaaSの理想的な成長速度指標として使われる「T2D3」(Triple(3倍)・Triple・Double(2倍)・Double・Doubleで毎年成長)を達成。現時点で、ARRは100億円を突破し、契約獲得ベースでは約110億円に達していることを明らかにした。

ARR(年間経常収益)の推移

 SmartHR 代表取締役CEOの芹澤雅人氏は、「当社は昨年夏にコーポレートミッションを改定し、“『well-working』労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる”を掲げた。そして、『働く人の無駄を省き作業を効率化する』と、『働く人のポテンシャルを引き出しエンゲージメントを高める』の2つのことを実現するべく事業を展開している。これからの日本は、労働人口の減少や働き方の多様化により労働環境が大きく変化し、人の働き方や生産性への注目度はさらに高まると予測している。その中で当社は、企業活動を通して、『働きたいと思う環境の整備』と『選ばれる組織づくり』をサポートしていく」との考えを述べた。

SmartHR 代表取締役CEOの芹澤雅人氏

 今後の事業戦略については、「マルチプロダクト戦略」をキーワードに挙げ、「労務管理とタレントマネジメント領域で、さらに多くのプロダクトを展開していく。そのために、ここ数年で共通のプロダクト基盤の整備・開発を進めてきた。共通プロダクト基盤は、UIコンポーネント、権限基盤、ID基盤、従業員データベースで構成されており、これを活用することで、効率的なマルチプロダクト開発を実現すると共に、統一されたユーザー体験の提供が可能になる」としている。

「マルチプロダクト戦略」に向けた共通プロダクト基盤

 特に、タレントマネジメント領域において、さらなるプロダクト拡大を図っていく計画で、新規プロダクトとして、従業員のスキルや資格、研修受講状況を登録、可視化する「スキル管理機能」を2023年中にローンチする予定。また、タレントマネジメントやその他の機能増加にともない従業員側の利用シーンも増えることから、従業員向けスマートフォンアプリの開発も進めているという。

タレントマネジメント領域の新規プロダクト

 アプリケーションプラットフォーム「SmartHR Plus」の展開については、「2021年度から事業の開発を始め、現在は『SmartHR Plus β版』として外部ベンダーに提供している。すでに、このプラットフォーム上でさまざまなサービスとのシステム連携を実現しており、昨年には、これらのアドオン機能を提供するアプリストアもリリースした。今年2月時点で17のアプリを提供している。今後は、SaaSが苦手とする『個社カスタマイズ』を克服する仕組みとして、『SmartHR Plus』のプラットフォームを活用していくことも想定している。将来的には、バックオフィスのあらゆる業務がSmartHRを中心につながっていくような世界を目指す」との方針を示した。