ニュース

ヤマハ、中規模会議室向けの遠隔会議用サウンドソリューション「ADECIA」

シーリングアレイマイクロフォンと専用プロセッサを新開発

 ヤマハ株式会社は2日、遠隔会議用サウンドソリューション「ADECIA(アデシア)」を、2021年1月に発売すると発表した。中規模会議室における多様化するニーズに応えたもので、高品位で快適な遠隔コミュニケーション空間を簡単かつ柔軟に導入・開始・運用するための、シーリングアレイマイクロフォンと専用プロセッサを中心に構成されているという。

写真左から:ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業部 商品戦略グループ 主幹の太田光彦氏、ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業部長の池松伸雄氏 中央に置かれているのが、シーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」だ

新たな遠隔会議用のサウンドソリューションを提供

 「ADECIA」は、ヤマハが長年培ってきた、音を原点とする音声処理技術とネットワーク市場での経験を生かし、市場の要望に応えながら新開発したシーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」、専用プロセッサ「RM-CR」を中心とした遠隔会議用のサウンドソリューション。

 すでに業務音響市場で展開しているDante/PoE対応ラインアレイスピーカー「VXL1-16P」と、PoE給電対応のネットワークスイッチ「SWRシリーズ」を組み合わせることで、音とネットワークの技術の相乗効果を発揮する、遠隔コミュニケーションのワンストップサウンドソリューションを実現する。

 ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業部長の池松伸雄氏は、新たな遠隔会議ソリューションをリリースする背景について、「音響事業は、楽器事業に次ぐヤマハの中核事業となっており、音響・音声処理・ネットワークなど多様な技術とノウハウを生かし、さまざまな製品・サービスを展開している。また、音響事業の領域は、ヤマハにおける今後の成長事業としても位置づけられている。今回、この成長事業領域をさらに拡大するとともに、顧客のビジネスコミュニケーションの価値向上を支援するべく『ADECIA』を展開する」と述べた。

ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業部長の池松伸雄氏

 また、「当社のSOHOルータやWeb会議用マイクスピーカーは、すでに企業・政府・教育機関など数多くのビジネスシーンで活用されている。一方で、昨今の新型コロナウイルスの影響により、オフィスの働き方が大きく変化し、ビジネスコミュニケーションにおいて遠隔会議ツールが必要不可欠なものになっている。さらに、中規模会議室では、ソーシャルディスタンスを意識したレイアウトや、参加人数・目的に応じた会議室の効率的な運用など、遠隔会議ツールのニーズも多様化してきている」との認識を説明。

 「こうした状況を受け、『ADECIA』では、ビジネスを加速させるのは『音』であるという信念のもとに、音とネットワークの技術を長年培ってきたヤマハだからこそ提供できる、音の入り口から出口までワンストップなサウンドソリューションを提供していく」との考えを示した。

 今回、同社では、「ADECIA」の中心となる製品として、シーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」と、遠隔会議用プロセッサ「RM-CR」を新開発。これに、Dante/PoE対応ラインアレイスピーカー「VXL1-16P」と、PoE給電対応のネットワークスイッチ「SWRシリーズ」を組み合わせ、マイクロフォンからスピーカーまで音の流れをワンストップで導入・運用・管理できるサウンドソリューションを提供する。

「ADECIA」の構成製品

 ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業部 商品戦略グループ 主幹の太田光彦氏は、「ADECIA」のソリューション概要について、「遠隔会議の音響機器は、さまざまなメーカーから用途に合ったものを選択し、設定や調整に大きな負荷がかかっていた。これに対して『ADECIA』は、オーディオネットワーク規格『Dante』を採用することで、構成する4つの機器間をLANケーブル1本で接続することが可能となっている。また、LANケーブルから電力を供給するPoEも採用し、接続性を向上している。さらに、Webブラウザ上のセットアップウィザードに従い数回クリックするだけで、自動で機器間の音声配線を確立し、部屋の環境に応じた音響調整を自動的に行うことができる。これにより、目に見えない音やネットワークを設定・調整する難しさを解決し、導入にかかる時間とコストを大幅に削減するととともに、高品位で快適なコミュニケーション空間をスマートに実現する」と説明した。

ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業部 商品戦略グループ 主幹の太田光彦氏

ヤマハならではの多彩な音声処理技術を搭載

 新製品の主な特長としては、シーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」は、天井に設置することで会議中にマイクなどの会議用端末に触れる回数を大幅に削減し、意匠的にもスタイリッシュながら高品位な会話体験を提供する。また、話者が発言するだけでビームが音源の方向を検知するダイナミックボイストラッキングを採用し、事前に話者の位置を設定する必要がないため、ソーシャルディスタンスを意識した会議室の急なレイアウト変更にも柔軟に対応できる。

 4本のオートトラッキングビームフォーミングを採用することで、複数人の同時発話も逃すことなく追尾し、それぞれのビーム指向性を狭くすることで周りの雑音を抑制しながら話者の発言を的確にとらえることが可能。これにより、明瞭(めいりょう)度の高い音声を遠隔地にいる相手に伝えることができる。

シーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」

 このほかにも、多彩な音声処理技術を搭載しており、遠隔会議でエコーを除去しストレスのない双方向会話を実現する「適応型エコーキャンセラー」や、マイクに近い人と遠い人の声量差を調整する「オートゲインコントロール」、空調機のノイズなどの雑音を軽減して声だけを伝える「ノイズリダクション」、残響が多い空間でもクリアな音声を伝える「残響抑制機能」、人の声と雑音を自動判別する「HVAD(Human Voice Activity Detection)」機能などを備えている。

 一方、遠隔会議用プロセッサ「RM-CR」は、本体をLANケーブルでPoEスイッチに接続することで、同一ネットワーク上にあるシーリングマイクロフォンを認識し、会議室の空間に合わせて自動で音響調整を行うことが可能。また、多彩な入出力を搭載しており、ウェブ会議だけでなくビデオ会議や電話会議などのあらゆる遠隔会議との接続や、アナログ有線マイクの追加などにも対応する。

遠隔会議用プロセッサ「RM-CR」

 なお、説明会では、実際に「ADECIA」を設置した中規模会議室のデモルームを用意し、ソーシャルディスタンスを保った中で、ビームフォーミングやダイナミックボイストラッキング、適応型エコーキャンセラー、ノイズリダクションなどの音声処理技術により、ストレスのない遠隔コミュニケーションを実現するデモンストレーションを行った。

「ADECIA」のデモンストレーションの様子

 価格(税別)は、遠隔会議用プロセッサ「RM-CR」が24万円、シーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」が60万円。