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CES 2026レポート:パナソニックはBlue Yonderやデータセンター向けソリューションを中心に展示
今後の軸足であるB2Bソリューションに絞り込んだ展示へと切り替え
2026年1月7日 12:21
パナソニックグループは、2026年1月6日~9日まで、米国ラスベガスで開催している「CES 2026」に出展。同社ブースでは、Blue Yonderによるサプライチェーン関連ソリューションのほか、データセンター向け蓄電システムや、冷却水循環ポンプ/コンプレッサー、生成AIサーバー向けデバイスなどのデータセンター向けの各種ソリューションを展示している。
パナソニックグループは、第1回からCESへの出展を行っており、今年で60回目の参加となる。CES 2026でも、前年と同じ場所となるラスベガスコンベンションセンター(LVCC)のセントラルホールにブースを構えた。ブースの展示面積は1412平方メートルと、これも前年と同じで、ブース入り口も前年と同様にグレー色のシンプルなデザインを踏襲していた。
だが、展示内容は前年から大きく変更されている。
昨年の「CES 2025」では、創業商品であるアタッチメントプラグをはじめとした歴代商品の展示や、家庭における家電およびAIの活用などを前面に打ち出していたが、今年のCES 2026では、家電の展示は一切行っていない。
唯一、サーキュラーエコノミー(CE)対応自動家電分解システムの展示において、自動分解しやすい洗濯乾燥機のヒートポンプ部のモックアップを展示しただけだ。つまり、家電の機能や使い勝手を訴求するものはひとつもなかった。
それに代わってパナソニックブースを埋めたのは、ソリューションの数々だ。具体的には、サプライチェーンを中心とした「AI活用B2Bソリューション事業」、データセンター向けを中心とした「AIインフラ向けソリューション事業」、同社の環境戦略に連動した「GXソリューション」の3つのソリューションである。
CES 2026のパナソニックグループの展示コンセプトは、「The Future We Make」。パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏は、「CESは、エレクトロニクス分野における世界最大の展示会である。そこで、パナソニックグループが今後の軸足とするB2Bソリューションに絞り込んだ展示を行った。データセンターに関連する半導体実装や材料、蓄電池、冷却までを含めたソリューションをひとまとめで見せ、意見や要望をもらう場にした。閉幕後には、ソリューションに特化した今回の展示が来場者からどう受けられたのか、米国および日本などのビジネスにどんな波及効果があるのかといったこともとらえていく必要があるだろう」と語る。
パナソニックグループが、CES 2026において、「AI活用B2Bソリューション事業」および「AIインフラ向けソリューション事業」の展示に注力した狙いはなんだったのか。それぞれの展示を見ながら、その狙いを追った。
パナソニックブースの最前線:「AI活用B2Bソリューション事業」
パナソニックグループブースを入り、ブース全体の説明を行うイントロシアターを抜けると、最初にたどり着くのが「AI活用B2Bソリューション事業」の展示エリアだ。
Blue Yonderが描く次世代倉庫の自動化と最適化
「AI活用B2Bソリューション事業」では、Blue Yonderによる「サプライチェーン」を中心とした展示が中心となっている。
このエリアでは、未来の倉庫をイメージしたEdge Interactive Tableを配置。カメラビジョン、ロボティクス、モビリティ、RFIDなどを活用した次世代の倉庫自動化ソリューションを紹介。荷物搬入時のゲート自動制御やリアルタイムトラック追跡、荷下ろし時の在庫確認など、物流現場の各工程を最適化する内容を訴求した。また、倉庫内では、作業者と管理者双方の業務効率化や精度向上、安定性向上を実現し、サプライチェーン全体の高度化に貢献する様子も示した。
Blue Yonderは、SCP(サプライチェーンプランニング)や倉庫管理、輸送管理、返品管理までを自社製品でカバーする最大のSCM専業プレーヤーであり、仕入れ先や納入先、配送業者とつなげるサプライチェーンネットワーク機能を持っているのも特徴だ。また、小売業、製造業、消費財メーカー、物流など、世界の業界上位企業を中心に、世界3000社以上への導入実績を持っている。
そして、2025年度までを先行投資フェーズとして、3億ドル弱の戦略投資を行い、従来のソフトウェアのリライトを行うとともに、戦略製品ともいえるコグニティブソリューションを2025年5月に発表。2026年度までに、新たなコグニティブAI、統合プラットフォーム、サプライチェーンネットワークを含めた、エンドトゥエンドソリューションの開発および整備がすべて完了する予定を明らかにしている。
今回のCES 2026では、SCMソフトウェア業界でのトッププレーヤーになることを宣言しているBlue Yonderの最新技術が公開された格好だ。
生成AIで現場をデジタル再構築する「CPS 2.0」
「AI活用B2Bソリューション事業」でのもうひとつの展示が、「CPS2.0」である。
IoT、センサー、エージェントAIを活用し、業種横断型および現場可視化/最適化ソリューションと位置づけている。パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏は、「従来のCPSと異なるのは、マルチモーダルなデータを、生成AIなどの最先端技術と統合し、現実空間をデジタル上に再構築。可視化や平準化、最適化を適用しながら、それをすばやく現実空間のマネジメントシステムにフィードバックすることで、業務効率の向上や質の向上など、新たな価値を創出できる。工場のなかなどの限定的な場所だけでなく、バリューチェーンの前後にもつなげて、業種横断型で、さまざまな現場で使用できる技術ソリューションである。現在、国内工場だけでさまざまな場所に展開しようとしている」と説明する。
映像や設備、設計情報、作業者の属性、計画および実績情報などのあらゆるデータを統合し、業務全体の因果関係を理解した上で、それぞれの現場に適した標準化と最適化を上流プロセスにさかのぼって適用。課題の根本的解決を図る「フィードフォワード型CPS」を実現するという。
パナソニックグループブースでは、CPS2.0による事例の紹介として、製造業のほか飲食店やのり養殖といった非製造業の事例も展示していた。
加速するAI需要を支える「AIインフラ向けソリューション」
一方、データセンター向けを中心とした「AIインフラ向けソリューション事業」では、「データセンター向け蓄電システム」、「生成AIサーバー向けデバイスおよびマテリアル」、「データセンター向け冷却水循環ポンプ」、「次世代AI半導体製造設備技術」、「データセンター向けサイバーセキュリティ」の展示に力を注いでいた。
データセンター向け蓄電システム:分散型電源で「止まらないインフラ」を実現
「データセンター向け蓄電システム」では、同社としては初めてバックアップ電源システムを展示。透明OLEDを搭載したデータサーバーのモックには、Battery Backup Unit(BBU)や、Power Monitoring Interface(PMI)が搭載され、サーバーラックの内部の様子を見ることができた。
パナソニックエナジーでは、「生成AIにより、データセンター市場の成長が加速するなか、データセンターにおける消費電力の増大が課題となり、高度な電源ソリューションに対する要求が拡大している。データセンターは社会の高度化を支えるインフラに進化しており、一瞬たりとも止めてはいけない環境にある。非常時も停止しない安全安心なインフラとしてデータセンターが安定稼働するために、蓄電システムの重要性はますます高まっている」と指摘。
「パナソニックエナジーは、長年にわたり、確実な電源バックアップを実現してきた実績を持つ。そこに、効果的なインフラ投資を実現する電力ピーク抑制や、電力負荷の変動によるシャットダウンを回避する電力負荷変動吸収機能を搭載しており、顧客の課題解決に貢献している」とする。
パナソニックのバックアップ電源は、サーバールーム内に設置する分散型電源方式であり、ラックごとにBBUを内蔵し、サーバー単位で電源をバックアップできる。専用UPS室などに設置する集中型に比べて電力ロスが少なく、省スペース化や拡張性でもメリットがある。「AIデータセンターとの親和性が高いバックアップ電源」と位置づける。
パナソニックエナジーでは、2028年度のデータセンター向け蓄電システムの売上高で8000億円を計画。2025年度の3000億円弱の実績と比較して、約3倍に成長させる考えだ。「受注活動から逆算すると、売上高8000億円の達成確度は高いものになっている」と自信を見せている。
デバイスおよびマテリアル:過酷な熱環境を克服する独自素材
2つめの「生成AIサーバー向けデバイスおよびマテリアル」では、導電性高分子アルミ電解コンデンサの「SP-Cap」や、導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ「POSCAP」、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、多層基板材料「MEGTRON」のほか、リレーやコネクタ、電気二重層キャパシタなどを展示した。
パナソニックインダストリーでは、「生成AIサーバーでは、大電流、高速化が進み、発熱による高温環境、部品点数の増大によるスペースの逼迫(ひっぱく)、高速化による伝送損失の影響拡大といった厳しい状況にあり、デバイスやマテリアルに対しても、過酷な使用環境への対応が求められている。パナソニックインダストリーでは、同様に使用環境が過酷な車載で培った圧倒的な商品力と、強固な顧客基盤による高精度な業界動向把握ができる点に強みがある」とし、「サーバーの電源回路基板に搭載するコンデンサにより、電圧の安定化やノイズ除去に貢献する一方、電子回路基板のもととなる高機能多層基板材料により、高速信号の損失を抑えることができる」と強みをアピールする。
生成AIサーバーに採用しているのは、電解質に導電性高分子を採用したコンデンサであり、低ESR(低抵抗)と高周波特性に優れ、温度への対応や電圧への安定性に強みを持つ。特に、高温への対応が求められるGPU周辺回路には、SP-Capが採用され、135℃の使用環境で5500時間の稼働を実現できるのが特徴だという。SP-Capは、生成AIサーバー分野ではトップシェアを持っている。
また、多層基板材料である「MEGTRON」は、業界最高レベルの低伝送損失と、高耐熱性、高多層化対応を実現しているのが特徴だ。MEGTRONは基板メーカーに供給され、プリント配線板に使用。その基板上に部品を実装し、AIサーバーなどに搭載されることになる。「電気信号が回路基板を通る際にエネルギーロスが発生するが、MEGTRONは、独自の樹脂設計技術と材料配合技術、ガラスクロスと銅箔(どうはく)との複合化技術によって、低伝送損失を実現し、AIサーバーの技術進化を支えられる」と述べた。
冷却水循環ポンプ:70年の知見を水冷サーバーへ応用
3つめの「データセンター向け冷却水循環ポンプ」は、液冷サーバーに使用されるCDU(冷却液分配ユニット)に搭載されているもので、CDU1台あたりに約3台のポンプを搭載。冷却液を絶え間なく循環させることで、サーバーの発熱を効率的に冷却できる。
パナソニック くらしアプライアンス社では、「パナソニックのポンプ事業は、1955年に家庭向け井戸ポンプからスタートし、70年の歴史を持つ。この間、水の提供から、給湯、暖房へと用途を拡大しており、長年の水回りのノウハウを生かして、2021年からデータセンター向けに事業化する取り組みを開始した。このほど生成AIデータセンター向けの冷却水循環ポンプ市場に参入した。2025年に台湾のパートナー企業向けに冷却水循環ポンプを初めて出荷したところだ。データセンター向け冷却水循環ポンプの生産は滋賀県彦根市のパナソニックくらしアプライアンス社彦根工場で行っている」とコメントした。
従来製品に比べて流量を75%向上させたことで高性能化を実現するとともに、4Uサイズラックに収まるコンパクトな本体設計を実現。他社製品の3倍になる3万時間の長寿命により、メンテナンスコストを低減できるメリットがあるという。
さらに、モーターや制御回路の樹脂一体成形、モーター部がポンプ部に入り込んで一体化するキャンド構造の採用などにより、高品質化と長寿命化を実現。流体解析や磁場解析、樹脂流動解析など、独自の解析技術の活用によって、顧客ニーズに応じた高性能、コンパクト、長寿命の達成につなげているとしている。
次世代AI半導体製造技術:3次元パッケージングを支える生産技術
4つめの「次世代AI半導体製造設備技術」は、先端パッケージ分野における装置事業と生産技術によって構成するもので、回路形成から配線・電極形成、バンプ形成、ダイシング、クリーニング、ボンディングに至る「中工程」と呼ばれる領域において、インクジェット印刷機(開発中)、インプリント(開発中)、スパッタ、形状測定、プラズマダイサー、プラズマクリーナー、ボンダー(開発中)といった装置を、ワンストップソリューションとして提供できるという。CES 2026では、これらの装置技術を、モックアップと動画で紹介する展示内容としている。
パナソニックホールディングスでは、「新しい製品を作るためには、新しい生産設備を作る必要があるという創業者の言葉をもとに、1953年に民間企業初の生産技術専門研究所を設置し、『モノづくりの松下』の礎を築いた。現在はMI本部として、モノづくり面から事業会社を支援するとともに、パナソニックプロダクションエンジニアリングおよびパナソニック コネクトにより、グループ内外に向けて生産設備の外販事業を行っている。実装機のパナサートでは、世界ナンバーワンのシェアを持つ。13の生産技術プラットフォームを掛け合わせ、社外のお客さまのニーズにも応えている」とし、「データセンターでは、低消費電力のAI半導体の実現が急がれているが、そのためには、最短距離でつなぐ3次元パッケージが必要になる。パナソニックグループが持つプラズマ技術やボンダー技術、プロセス技術の融合により、微細配線および微細接合による最先端パッケージングが可能になり、3D積層領域に貢献できる」と述べた。
サイバーセキュリティ:OT領域の監視でインフラを護る
最後の「データセンター向けサイバーセキュリティ」では、工場ネットワークやビルシステム、エネルギーマネジメントシステムのセキュリティ監視の実績をもとに、重要インフラに求められる可用性を実現することを目指しているという。高度な異常検知技術と、経験豊富なSOC分析官による監視により、リスク分析から攻撃検知、インシデント対応の支援に至るまで、幅広くサポートできるのが特徴だ。
パナソニックホールディングスでは、「データセンターは、いまや都市レベルの電力を必要とする電力インフラであり、電力確保は都市計画や国家レベルの課題となっている。また、再エネ電源とバッテリーを制御する高度な電力制御システムが必要であり、データセンターは蓄電する複雑な電力プラントへと進化している」と前置きしながら、「米国では、エネルギー部門へのサイバー攻撃が2年で倍増し、攻撃対象はITから、対策が手薄なOTへと移動している。電力システムは、従来のIT監視では見えない部分であり、再エネ電源固有の通信に潜む不正操作や異常通信のリアルタイム検知が必要になっている」と警鐘を鳴らす。
CES 2026で展示した「データセンター向けサイバーセキュリティ」は、全世界の自社工場300拠点のセキュリティ監視の実績をもとに、リスクアセスメントから監視、インシデント対応支援までを一気通貫で実施する「グループ工場監視による専門知識・監視体制」、電力制御に特化した独自開発の攻撃検知エンジンを追加搭載して、制御システム向けセキュリティ監視の検知能力をさらに強化した「電力制御に特化した攻撃検知エンジン」、制御システム向けサイバーセキュリティ監視サービスとして、工場以外のさまざまなフィールドでも監視サービスを提供する「再エネ電源・ファシリティ監視展開」が特徴だと説明した。自らが製造業であるパナソニックグループならではの専門性を生かし、Modbus、DNP3、SunSpecといったOTで活用される制御プロトコルを理解し、監視する強みも訴求している。データセンター向けサイバーセキュリティは、早ければ2026年度にも事業化する考えだ。
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このようにCES 2026のパナソニックグループブースでは、ソリューションを中心とした展示を行った。昨年同様に、家電製品の展示を期待してブースを訪れた来場者にとっては、肩透かしといえる内容になったかもしれないが、パナソニックグループが注力するソリューション事業の強みを、CES 2026の会場で力強く発信したことで、これまでにはあまり見えてこなかったパナソニックグループの新たな姿を、世界に向けて訴求できたのではないだろうか。

























