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デロイト トーマツ、AIサービス関連規制の調査を自動化するAIエージェントを開発
エージェントを活用した規制対応支援サービスの強化などについて説明会を開催
2026年1月14日 06:15
合同会社デロイト トーマツは9日、企業のAIサービスに関連するAI規制情報やその対応策を自動的に収集するAIエージェントを独自開発し、複雑化する規制への対応を支援するAI規制対応支援サービスを強化すると発表した。
同日には、AI規制をめぐる日本・海外の最新動向、および新開発のAIエージェントを活用した規制対応支援サービス強化について、オンラインで記者説明会が開催された。
デロイト トーマツが提供するAI規制対応支援サービスは、インターネット上にある国内外の数百におよぶAI規制、ガイドラインを対象に、企業がAI技術や関連サービスを提供する際に順守するべき法令などの規制の特定と、それに対する具体的な対応策を提案するもの。今回、AIガバナンスに関するアドバイザリーサービスにより培った知見を生かし独自開発したAIエージェントを利用することで、サービス提供時間の大幅な短縮を実現した。
国内外におけるAI規制の現状について、デロイト トーマツ グループ シニアマネジャーの巻口歩翔氏は、「昨今、ビジネスの成長に向けた積極的なAI活用の推進のためAIによる事故や倫理的問題など、多様なリスクへの対策『AIガバナンス』の体制構築を検討・実施する企業が増加している。一方で、AIを取り巻く環境は急速に変化しているため、AIガバナンス体制を構築・運用するだけでなく継続的に改善を行う『アジャイル・ガバナンス』の実践が重要となっている。アジャイル・ガバナンスを実践・維持するには、各国の規制動向を常にモニタリングしアップデートする必要があるが、『各国の規制方針の違い』『規制動向の不確実性』、『関連範囲の広さ』の3つの要因から非常に困難な状況になっている」と指摘する。
具体的には、「各国の規制方針の違い」では、国によってAI規制に関するスタンスが大きく異なるため、すべてを包摂するような体制構築は難しいのが実情。AIリスクに対応するための国際的な共通認識の策定は行われているものの、それぞれの国や地域で規制方針が異なっており、AIガバナンスの構築・維持対応を複雑にしている。「例えば、EUで施行されているAIシステム提供に関する規制『AI Act』は、EU域内でAIシステムを上市するすべての事業者に対してAIシステムの種別に応じた対応を求めており、従わない場合は罰則が科される」という。
「規制動向の不確実性」では、AI技術の進歩・社会的要請の変化・各国の思惑などによって、規制の方針が急に変化する可能性があるため、アジャイル・ガバナンスのサイクル維持にはこれらの動きを常に追っていくことが必要になる。直近でも、昨年11月にEUで、昨年12月には米国でAI規制の方針転換が行われている。そして、「関連範囲の広さ」については、AIガバナンスでは直接的なAIの統制以外にも、「個人情報保護」のような個別のリスクや「自動運転」「採用AI」といった特定の業界・用途に関するものなど、多岐にわたる法規・ガイドラインを考慮に入れる必要がある。しかし、すべての国の規制動向を、人手のみでモニタリングすることは困難をきわめる。
「こうした課題に対しては、生成AIやAIエージェントなどの技術を最大限に活用してアジャイル・ガバナンスのサイクルを回すことが有効になる。そこで今回、AIに関連する規制、ガイドライン情報の調査を自動化するAIエージェントを新開発。このAIエージェントを活用した規制対応支援サービスを提供開始する」とした。
新開発したAIエージェントは、同社が持つ豊富なAIガバナンス関連業務の知見を反映したアルゴリズムを搭載。回答を生成する際には、100回以上にわたる自律的な規制情報の取得、対応すべき事項の特定とレビュー実行のプロセスを経て、対象サービスの機能要素や適用地域などを総合的に考慮し、膨大なAI規制情報の中から関連性の高い規制情報を適切に抽出・整理する。さらに、規制間の優先順位付けや重複情報の排除なども行うことで、より的確な調査結果を導き出すことが可能となる。
デロイト トーマツ グループ マネージングディレクターの山本優樹氏は、このAIエージェントを活用したAI規制対応支援サービスの強化について、「新開発したAIエージェントでも100%の正確性は担保できない。そのため、AIエージェントにすべてを任せるのではなく、AIガバナンスに詳しい当社の専門家と高度に連携。企業が規制対応すべき事項をAIエージェントが網羅的かつ自律的に収集・分析し、AIガバナンス専門家がレビュー、情報の補完・修正を行うことで、より精度の高いAI規制調査結果や対応策を取得することが可能となった。さらに、専門家によるフィードバックログをAIエージェントに与えることで、頻出機能に対する回答精度の強化など、継続的な精度改善も見込める」と説明した。
AIエージェントによるAI関連規制調査の具体的な流れとしては、まず、同社が用意した質問票に沿って対象AIサービスの機能要素を洗い出し、網羅的な整理を行う。次に、関連規制情報のWeb検索から、規制対応すべき事項の特定、規制対応すべき事項のレビューまでを複数のAIエージェントが自律的に実行する。そして、最後に同社のAIガバナンスの専門家が、取得した規制情報レポートをレビューし、情報の抜け漏れや誤りを補完・修正する。
説明会で山本氏は、AIエージェント機能が実装された、多様なユースケースへのクイックな生成AI検討が可能な生成AI PoCアプリを用いたデモを実施。「この生成AI PoCアプリでは、最適なRAGのアルゴリズム(構造化・検索等の方法)のパラメータやプロンプトなどの細かな調整機能により、試行錯誤をクイックに行うことができる。また、プログラミングなどの専門知識がなくても、多様かつ大量の試行錯誤を可能にする自動処理機能を搭載。さらに、言葉で実行手順を伝えられるAIエージェント機能によって、試行と自己レビューを自動連鎖させ精度の向上を狙う自律的動作が可能となっている」と、生成AI PoCアプリの概要を紹介した。
同社では今後、AIエージェントを活用したAI規制対応支援サービスを起点として、AIリスク評価やAIガバナンスのポリシー策定、運用体制の構築、社内ガイドラインの策定・運用、AIガバナンス人材の育成支援など、企業のAIガバナンスに関わる多様な課題に対して総合的な支援を提供していく考え。






