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NECからカーブアウトしたdotData、ジャフコとゴールドマン・サックス証券から2300万ドルの資金調達を完了

 米国シリコンバレーに本社を置くdotData,Inc.は、シリーズAラウンドとして、ジャフコおよびゴールドマン・サックス証券から2300万ドルの資金調達を完了したと発表した。これにより、2018年4月の設立発表からの調達資金総額は4300万ドルになったという。

 dotDataの藤巻遼平CEOは、「調達した資金はプロダクトの成熟化に投資するほか、データ分析プロセスを自動化するコア技術のイノベーションに投資をしていく。この強化は、当社の競争力の源泉になる。また、クラウドを通じて大手企業以外にも展開できる体制づくりや、北米をはじめとしたグローバル販売体制の構築にも投資をする」と話す。

 さらに「2019年6月のAWS、10月のMicrosoftとのパートナーシップに続き、さらにパートナーシップを拡大したいと考えている。ツールを販売して終わりではなく、AIを業務で活用できるような体制づくりも強化していく」との考えを示した。

dotDataの藤巻遼平CEO

 dotDataは、データ分析プロセスをAIによって自動化するソフトウェアを開発・販売する会社で、日本電気株式会社(以下、NEC)によって2018年4月に設立された。

 NECが推進している「2020中期経営計画」では、「実行力の改革」を掲げ、競争力がある技術を、多様なスキームを活用してマネタイズすることに取り組んでいる。

 dotDataは、その第1弾と位置づけられ、社外の資本を得ながら事業開発を加速させる「戦略的カーブアウトスキーム」によってスタートした。現在、北米および日本にオフィスを開設しており、約60人の従業員規模となる。

dotDataについて

 当初は、銀行や保険分野で導入されていたが、現在では9業種で採用。2019年第1四半期から第3四半期にかけて、売上高が300%以上増加するなど急成長を遂げている。フォレスターは、機械学習自動化(AutoML)における「リーダー」にdotDataを認定した。日本ではNECが独占販売権を取得している。

 「わずか1年でリーダーのポジションを獲得することができた。カーブアウトした独立体制によって、研究、開発、市場投入のバリアなく展開できた。NECのなかであれば、研究開発から市場投入まで1年、2年かかっていたものが、数カ月でできるといったように、スタートアップの速度で展開できるようになったことが成長につながっている」(dotDataの藤巻CEO)という。

 CEOの藤巻氏は、世界トップレベルのAI技術研究者であり、NECでは、アルゴリズム、機械学習やデータマイニングの研究開発、データ分析に必要となるソリューション、ソフトウェアの開発に従事。NECの主席研究員として、dotDataのコア技術となる「予測分析自動化技術」を開発した経緯がある。

 予測分析自動化技術は、熟練のデータサイエンティストが膨大な時間をかけて人的に行っているビッグデータの特徴量設計、予測モデル設計などの高度な分析作業を、AIによって完全自動化する技術で、データ分析にかかる時間を圧倒的に短縮することができる。同技術は、NECのAI技術である「NEC the WISE」のひとつに位置づけられている。

 dotDataでは、この予測分析自動化技術を活用して、データサイエンスプロセス全体を自動化する「dotData」を開発。生のビジネスデータから、特徴量設計から機械学習まで、データサイエンスのプロセス全体を加速、民主化、拡張、運用化することで、価値実現までの時間を短縮できるという。

 またリレーショナル、トランザクション、時間情報、位置情報、テキストデータなど、企業内に蓄積されるビッグデータから実用的なビジネスインサイトを提供し、課題解決を加速していけるとのこと。

dotDataの実現するデータサイエンスオートメーション

 dotDataの藤巻CEOは、「誰もがデータを分析し、より良いサービスやプロダクトを生み出すことをビジョンに掲げている。データサイエンスは、データサイエンティストなどの高度な人材が不足しており、機械学習の前段階に80%ほどの時間がかかっているという課題がある。『dotData』では、人材が数カ月かかっていたものを数分間でできるようになる。ビジネスに適用するには特徴量を設計することが必要であり、ここを機械学習によって自動化することで、全体的なプロセスを短縮できる」とする。

 一方で今回の出資について、「もう少し後に資金調達する予定であったが、成長が順調であり、前倒しして調達した」と前置き。

 「ジャフコは設立当初から当社を注目していた企業であり、日本の状況を理解し、グローバルに成長するための支援体制を持っていることを評価した。また、ゴールドマン・サックス証券は、グローバルのコネクションを持っている点では重要な役割を果たすことを期待している。機械学習の分野は、スピードが速い。今後、Bラウンド、Cラウンドとして、グローバルから資金調達する上では重要なパートナーになる」と述べた。

なぜジャフトとゴールドマン・サックス証券なのか

 また、ジャフコ パートナーの北澤知丈氏は、「今回の出資は、dotDataのソリューションには力強さがあること、経営チームにグローバルで事業を推進するためのメンバーがそろっていること、この事業を成長させようとする強い意志を感じたことが背景にある。機械学習の領域において、日本発のスタートアップ企業として成功することを期待している」と述べた。

 ゴールドマン・サックス証券 投資銀行部門ヴァイスプレジデントの鎌田和博氏は、「厳しい精査をした結果、出資することを決定した。機械学習の自動化およびデータ分析市場の成長性に魅力があったこと、dotDataのデータサイエンスの自動化は、競合優位性があるプロダクトと判断したこと、国内においてはNECとのタッグで大手企業に採用され、海外でもポテンシャルがあると判断したことが、出資を決定した理由。今後、当社が持つグローバルの強みを活用してもらいたい。日本発のソフトウェアリーディンクカンパニーとなることを支援したい」と語った。

ジャフコ パートナーの北澤知丈氏
ゴールドマン・サックス証券 投資銀行部門ヴァイスプレジデントの鎌田和博氏

 さらに、NEC コーポレート事業開発本部長の北瀬聖光氏は、「今回の出資によって、NECの子会社から離れることになる。これは予定通りであり、今後も強いパートナーシップを継続していくことになる。dotDataは、国内において30社以上への導入実績がある。コア技術を用いて、データサイエンスの民主化を推進するほか、DXに取り組みたいが、どうしていいのかわからないといった企業の支援できる。カーブアウトしなければここまでの成長はなかったともいえる。競争が激しく、アジャイル型ビジネスが求められる市場においては、この仕組みが適している。今後も製品、技術を磨き上げ、日本およびグローバルに対して、存在感のある事業に育てたい」と述べた。

 なおNECでは、dotDataの持分法適用会社としての関係は維持していく考えだ。

NEC コーポレート事業開発本部長の北瀬聖光氏
記者会見では、記念撮影も行われた。左から、ゴールドマン・サックス証券の鎌田氏、ジャフコの北澤氏、dotDataの藤巻氏、NECの北瀬氏