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AIエージェントとエージェント型AIの違いとは?――いまさら聞けないAIのアレコレをDataRobotが解説
2025年7月15日 11:34
DataRobot Japan株式会社は14日、AIエージェントの現状について説明会を開催した。その中で、DataRobot Japan 副社長 兼 AI&サービス統括部長の小川幹雄氏は、AIエージェントとエージェント型AI(Agentic AI)の違いや、従来型システムとAIエージェントの違いなど、いまさら聞けないAIに関する疑問を解説した。
AIエージェントとエージェント型AI
小川氏はまず、「言葉を整理しておきたい」と前置きし、AIエージェントとエージェント型AIの違いを説明した。
同氏によると、AIエージェントは、生成AIを核とし、RAG(Retrieval-Augmented Generation)のような技術や従来の予測AI、データ収集ツールなど、複数の機能を組み合わせて動作するものだ。その際に使用するツールの種類や実行順序は、AIエージェントの目的や設計によって固定されているのが特徴だ。
例えば、ユーザーが質問を投げかけると、AIエージェントはまず関連データを収集し、AIがそれを分析、最適な回答を導き出すといった一連のステップを自律的に実行する。「一見すると、チャットを通じて答えがすぐに返ってくるように見えるが、内部では質問の意図を理解し、必要に応じて質問を書き換えてコードを生成・実行し、その結果をチャートや詳細な説明として提供している」と、小川氏はAIエージェントの仕組みを説明する。
一方、エージェント型AIは、AIエージェントの能力をさらに拡張したもので、より複雑なタスクに対応できるという。「AIエージェントでは、使用するツールの種類や順序が固定されているが、エージェント型AIは、どのツールをどの順番で使うべきか、AIが自ら考えて選択し回答を導いていく」と、小川氏はその違いを語る。
例えば、発送した荷物の遅延に関する質問を投げた場合、エージェント型AIはまず質問を適切に解釈し、遅延予測に必要なデータを特定、テーブルの構造を分析し、場合によっては途中でヘルプを参照しつつ、予測モデルを適用するなど、その場で最適なツールと手順を自律的に選択して実行する。
こうした処理で使うツールが固定される場合は、エージェント型AIもAIエージェントと近い動作をするというが、「エージェント型AIは多様なツールを装備し、与えられた課題に対して柔軟に必要なものを選ぶため、さまざまな情報が必要となる複雑な課題にも万能に対応する」と小川氏は解説した。
AIエージェントの価値を考える
このように、AIエージェントやエージェント型AIでさまざまなことができるようになってきたが、小川氏は「導入にあたっては、その価値を見極める必要がある」と話す。
例えば、AIエージェントによってレストランの予約ができるようになったが、予約代行の価値は、店を探して予約するまでの作業が楽になるという点だ。誰が予約しても料理の味は変わらないため、作業の効率化は明確なメリットとなる。
しかし、それが誕生日や記念日などの特別なイベントの食事予約だった場合はどうだろう。「特別な人のために時間をかけて店を探し予約するというストーリーが重要になる場面では、AIエージェントによる予約がかえってマイナス体験になる可能性もある」と小川氏は語る。
つまり、企業がAIエージェントを使って顧客体験の向上やサービスの柔軟性を追求する際は、「それが既存のサービスを本当に向上させるのか、一歩立ち止まって考える必要がある」と小川氏はいう。「AIエージェントによって速く、便利に、安くなるかもしれないが、味が2倍おいしくなるわけではない。AIをどこに導入するべきか、まずはその価値を見極めることが重要だ」と小川氏は述べた。
AIエージェントと従来型システムの違い
では、AIエージェントと従来型システムは何が違うのか。小川氏はこの2つを比較し、「AIエージェントは、固定ルールに頼らず柔軟にタスクをこなせる点が特徴」と説明する。
従来型システムは、ルールを事前に設定する必要があり、その膨大さやメンテナンスの大変さから開発に時間とコストがかかるのに対し、AIエージェントは複数のツールを統合し、ユーザーの意図をLLMが解釈して効率的にタスクを実行するという。
また、AIエージェントは、従来のルールベースでは実現できなかったサービスを、より多くの人に届けることが可能だ。「例えば、これまでは一部の顧客にのみパーソナルな対応をしていたのが、すべての顧客に個別対応できるようになる」と、AIエージェントによって新たな価値が提供できる点を小川氏は強調した。
ただし、AIエージェントが万能とは限らず、確実性や再現性が重要な場合は従来型の方が適しているケースもあると小川氏はいう。また、「既存のシステムで100点だったものを、AIエージェントに置き換えて120点にすることは難しいほか、AIエージェントによってカバーする領域が広がっただけで、外部からはあまり変わっていないように見えることもある」として、期待値をコントロールすることも重要だとした。
「何でもエージェントを使えばいいというわけではない。単純作業の自動化であればRPAが向いているし、過去実績の可視化であれば可視化ツールがある。過去実績に基づく予測は従来の予測AIが強いし、一般的な情報への回答はLLMで十分だ。AIエージェントが役に立つのは、こうしたツールを複数組み合わせ、複雑な業務を最適に遂行するケース。これまでのように組み合わせを設計することなく、AIエージェントで多様な判断ができる時代が来ている」(小川氏)。