大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
ムーア、メトカーフに続くのはWatsonの法則? IBMが示した新時代の戦略
2018年5月8日 06:00
米IBMは、2018年3月19日~22日までの4日間、米国ネバダ州ラスベガスのマンダレイベイにおいて、年次イベント「Think 2018」を開催した。
全世界から4万人以上のユーザー企業やビジネスパートナーが参加。日本からも、500人以上が参加したという。
会期中には、米IBMのGinni Rometty(ジニ・ロメッティ)会長兼社長兼CEOによる基調講演をはじめ、100を超える講演や1000を超えるセッションなど行われた。
本稿では、その内容などをもとに、IBMの戦略を見て行きたい。
Thinkという名前の持つ意味
IBMでは、クラウドを中心としたInterConnectと、人工知能を中心としたWorld of Watsonという2つの年次イベントを開催してきたが、今年は「Think」として、ひとつのイベントに統合した。
今回のイベントの名称となった「Think」は、IBMにとって重要な言葉だ。
IBMは、1911年にC-T-R(Computing-Tabulating-Recording)として設立され、1924年にはインターナショナルビジネスマシンに社名を変更し、現在のIBMに至る経緯があるが、「Think」は、長年にわたりCEOを務めたThomas J Watson Sr.氏が、1914年にC-T-Rに入社したときに示した言葉である。つまり同社にとって、IBMの社名よりも10年ほど古い歴史がある言葉だ。
それを冠したイベント名称としたことは、同社が、このイベントを極めて重要なものに位置付けていることを示したといえる。
もうひとつ重要なことがある。IBMにとって最新の四半期となる2017年第4四半期(2017年10~12月)業績で、同社は23四半期ぶりに増収へと転換。クラウドとコグニティブコンピューティングの企業に向けた転換に一応のめどをつけたところでの年次イベント開催であり、クラウドとコグニティブに関するメッセージにおいて、これまで以上に自信を持った発言が感じられる内容になった点も見逃せない。
歴代CEOが60歳で交代しているIBMのトップ人事において、すでに60歳を迎えているGinni Rometty CEOが、23四半期ぶりの増収を花道に、Thinkを最後の舞台に交代するのではないかとの憶測も飛び交ったが、今回のThinkでの基調講演での張り切りぶりを見る限り、そうした憶測は払拭され、強い続投の意欲すら感じられるものになっていた。