大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

われわれはテクノロジーの大きな変曲点にいる――、米IBM ジョン・ケリーSVPが語る“データ”の重要性

 米IBMのコグニティブソリューション&IBMリサーチのジョン・ケリー(John E. Kelly III)シニアバイスプレジデントは、「今われわれは、テクノロジーの大きな変曲点にいる。これを理解するだけでなく、この波の大きさが過去とは比べものにならないものであることを知らなくてはならない」と語る。

 IBMでは年次イベント「Think」を米国および日本で開催し、その変曲点の中心にデータがあることを訴えている。一方で、IBMが先行している量子コンピュータについては、「企業競争のバランスを大きく変化させるものになる」と指摘。先進的な企業は、すでに量子コンピュータの活用を視野に入れ、準備を開始していることを示した。

 ケリー シニアバイスプレジデントに、最新技術の動向とともに、IBMが取り組む、データ中心の世界における取り組みについて聞いた。

米IBM コグニティブソリューション&IBMリサーチのジョン・ケリー シニアバイスプレジデント

現在、世界は特殊な時期を迎えている

――IBMは2018年3月に、米国ラスベガスで年次イベント「Think 2018」を開催。2018年6月には、東京で「Think Japan 2018」を開催しました。これらのイベントを通じて、IBMは何を伝えようとしたのでしょうか。

 今、IBMが世界中のみなさんと共有したいのは、「現在、特殊な時期を迎えている」という点です。

 それは、テクノロジーが変曲点にあるということであり、その中心にあるのはデータだということです。そして、データのボリュームは拡大し、多様性が広がっているということも重要な要素です。

 また、データのボリュームが拡大することによって、AIが進化し、これまでには実現できないようなユニークな洞察を得られるようになってきました。これによって、人間の知識を拡大することができるわけです。

 ラスベガスおよび東京のイベントに参加した人たちを見ると、今重要なことが起こっていることは知っています。だが、それがどれぐらい大きなものであるのかがわかっていないようです。イベントを通じて、多くの人が、その波の大きさを明確に認識するようになったといえます。

ラスベガスの「Think 2018」(左)と、東京の「Think Japan 2018」(右)

――私も2つのイベントに参加しましたが、IBMは、データの重要性を訴え、その上で、IBMはデータにもっとも近い会社であることと、IBMがもっともデータ保護に力を注いでいる企業であるというメッセージを打ち出していたことを強く感じました。

 IBMは、100年以上の歴史を持つ企業です。常に世界中のデータを扱い、処理をしてきた経験があります。また、世界中の銀行や病院、小売業などのデータを、「静か」に処理をしてきました(笑)。

 だが、今では、データが、知識の根源であることが広く理解されるようになってきたことから、われわれは、AIを活用しながらデータに対して加工をしていることを、声を高くあげて語るようになってきました。AIを使って洞察を得て、企業や社会のために役立てようということについて、積極的に語るようになってきたわけです。

 しかし、企業が持つデータは、どこがオーナーシップを持つべきなのか、プライバシーはどうするのか、ということを真剣に考える必要があります。IBMは長年にわたって、データのセキュリティに取り組んできました。ここに、IBMの長年の知見と信頼を生かすことができます。