大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Oracle Global Media Dayで見た、クラウド時代の“成長戦略”

PaaS領域における自律機能の拡張、新たなサポートなどを発表

 米Oracleが、米国時間の2018年5月7日~8日、カリフォルニア州レッドウッドショアズの同社本社で、Oracle Global Media Dayを開催した。

 米国や欧州、南米、アジアなど、世界各国から参加した約50人の報道関係者を対象に実施したもので、OracleのCEOであるMark Hurd(マーク・ハード)氏をはじめ同社幹部が出席し、Oracleが取り組むOracle Autonomous Databaseの現状や今後の計画などについて説明した。

 なお、すべてのプログラムに出席した日本人メディアは筆者だけだ。Oracle Global Media Dayでの同社幹部の発言から、Oracleの最新の取り組みを追った。

カリフォルニア州レッドウッドショアズの米Oracle本社
本社内の池にはラリー・エリソン氏率いるチームUSAのヨットが置かれている

Oracleのクラウドビジネスは継続的に成長

 今回のOracle Global Media Dayで新たに発表した新製品および新サービスは、大きく2点だ。

 ひとつはPaaS領域において自律機能の拡張を発表したことだ。具体的には、「Oracle Autonomous Analytics Cloud」「Oracle Autonomous Integration Cloud」「Oracle Autonomous Visual Builder Cloud」の3つの製品において、自律機能を提供することになる。

 もうひとつは、新たなサポート体系として「Oracle Platinum-Level Support」を発表したこと。追加費用なしでこれを提供することになる。同社では、「デジタル時代の新たなサポートの仕組みであり、今後のSaaS業界の標準になる」(Hurd CEO)と定義する。

 こうした製品およびサービスを発表する一方で、Hurd CEOやソフトウェア開発担当プレジデントのThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏、データベース開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのAndy Mendelsohn(アンディ・メンデルソン)氏、Oracle Cloud Platform担当エグゼクティブバイスプレジデントのAmit Zavery(アミット・ザベリー)氏といった同社幹部が、自社が展開する自律型クラウドプラットフォームサービスの強みをあらためて訴えてみせたのが、今回のOracle Global Media Dayの注目点だったといえる。

 Oracle Global Media Dayの最初のセッションに登場したのは、Hurd CEOだ。

 2017年10月のOracle Open World 2017の基調講演のときに比べて、スリムになった感じがする同氏は、その点を記者に指摘され、「1年前に比べて、8~9ポンド(約4kg)ほど体重を減らした。少し動きが速くなった」と笑ってみせた。

Mark Hurd CEO

 同氏はまず、クラウドビジネスが継続的に成長していることを示してみせた。

 「Oracleが競合他社とは異なるのは、数年前から、Fusion ERPやHCM、サプライチェーン、セールスなど、すべてのアプリをクラウド向けに作り替えたことだ。その結果、Oracleはクラウド市場で大きな成功を収めている。アプリケーションビジネスは2けた成長を遂げており、シェアも拡大している」と切り出す。

 その上で、クラウドネイティブのアプリケーションをそろえていることをあえて強調。「オンプレミスのライセンスを、クラウドでも利用できるBYOL(Bring Your Own License)として用意したことも、クラウドビジネスを加速することにつながっている」と語った。

 なお、最新四半期の決算で発表した同社のクラウドビジネスの成長見通しは、アナリストの予測に比べて鈍化している。それによってOracleの株価が低迷したが、「株価が、極端に高いところから落ちているのは確かである。金利が上昇したり、株式市場から資金が流出したりしているという傾向もある」などとし、アメリカの代表的な株価指数である“S&P500”を取り巻く環境が影響していることを指摘。

 「Oracleは自分たちの戦略を着実に推進しているおり、クラウドビジネスにフォーカスすることに変わりはない。今後は、戦略的にも、技術的にも、自律型データベースに移行するつもりである」と述べた。