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ニトリ、基幹システムでPOWER9搭載のエンタープライズサーバー「IBM Power System」利用開始
日本IBM、IBM Power Systemsの最新状況を説明
2018年10月29日 13:24
日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は26日、ニトリホールディングスが。POWER9を搭載したエンタープライズサーバー「IBM Power System E980」の国内第1号ユーザーとなったことを発表。これにあわせ、日本IBMのハードウェア事業の責任者である朝海孝常務執行役員が、IBM Power Systemsの最新の状況を報道関係者に説明した。
ニトリホールディングスの基幹システムは、2007年にx86サーバーからPOWER6に移行し、2008年には分散していたサーバーの統合を実現した。
「それ以降、大きな障害はなく運用を続けている。さらに、災害対策ストレージに即時移行が可能となる点、現行製品だけでなく次世代製品まで含めたロードマップを示してもらえる点などを評価し、Power System E980とオールフラッシュストレージ『IBM DS8886F』の採用を決定した」(ニトリホールディングス 情報システム改革室 ICTインフラ戦略担当ディレクターの荒井俊典氏)という。
日本IBMでは、Power Systemsがビジネスの継続性を高める高信頼性と実績を持っている点、ビジネスの成長を支える性能と拡張性、PowerVMならではの柔軟性と運用性を持っている点などをアピールし、基幹システム用サーバーとしての販売をさらに強化していく。
Power Systemsの最新状況
日本IBMの朝海氏は最近のPower Systemsの状況について振り返り、「1990年に『IBM RS/6000』への(PowerPCの)搭載からスタートし、そこから複数世代を経て、大きな転換点のひとつとなったのがPOWER6。事業が分かれていたZシリーズとPOWERシリーズの技術交流を行う体制としたことで、ミッションクリティカルな製品同士、シナジーを高める体制ができあがった。また2010年のPOWER7は、現在ではおなじみになっているWatsonが米国のクイズ番組のチャンピオンに勝利した時に使われていたプロセッサ。そこからさらに進化を続け、今日の発表はPOWER9の技術に基づいたもの」と話す。
そのPOWER9を搭載した最初のサーバーは、2017年12月に出荷を始めた「IBM Power System AC922」。AI、ニューラルネットワーク用途に特化したものとなっている。「汎用プロセッサを利用したことで、一般のお客さまにもスーパーコンピュータの技術を利用していただけるようになった」(朝海氏)。
「IBM Power System S924」など、3月に出荷したスケールアウト型サーバーは、AIXのユーザーやSAP HANAユーザーの利用を想定したモデル。また9月に出荷を始めたE950/E980はエンタープライズサーバーという位置付けになり、10月26日付けでニトリホールディングスが日本の第1号ユーザーとなることが発表された。
「ニトリ(ホールディングス)には発売前から検証をお願いし、本日、正式に日本の第1号ユーザーとして発表できることとなった。なぜ、この製品を選ばれるに至ったのかなどを、利用者の視点でお話しいただく」(朝海氏)。
高可用性が求められるシステムをPower Systemsで構築
ニトリホールディングスは、現在売上高5720億円(2018年2月期)。523店舗を擁し、従業員は2万4000人を超える。
店舗運営だけでなく、販売する商品は商品企画から製造、物流、販売と一貫して自社でプロデュースすることが特徴となっているが、「実はITシステムについても“自前主義”を採り、1999年から、販売・SCMについても基幹システムはフルスクラッチで自社製造している」(ニトリホールティングスの荒井氏)という。
情報システム改革室は東京・札幌の2拠点体制で、300人の人員を擁する。ニトリグループの業務をつかさどることができる信頼性、ビジネスの急成長にあわせて高い性能と拡張性の実現、素早い業務変革に対応できる柔軟性と運用性、といったことがシステムの要件として求められている。
例えば、取扱商品のひとつである大型家具は、店舗には在庫を置いておらず、注文を受けた場合に、サプライチェーンに応じて工場などからの配送ルートと、それにかかる時間を算出するため、高い可用性が求められるオンラインシステムが必要とされている。システムが停止することで、大型家具の販売が停止してしまい、売上に大きな影響を及ぼすことになるからだ。
こうした特性を受け、2007年、x86サーバーとOracle Databaseによって分散処理してきたシステムをPOWER6に切り替える、分散システムの集約に着手した。
「従来は30インスタンス以上が動作していたが、常にどこかで障害が起こっているような状況だった。しかし、POWER6を用いて分散したサーバーの集約を図って以降、大きな障害は起こっていない。2013年にはPOWER7を導入し、Oracle Database 10g/11gを筐体内で統合したほか、SSD活用による高速化を実現した」(荒井氏)。
Power Systemsの評価点としては、障害なく運用が進んでいることに加え、ストレージの移行を行う際、現行ストレージから新ストレージ、さらに災害対策ストレージへ、ランニングタイムなしに即座に移行ができる点を挙げる。
「通常、移行してから新しい災害対策サーバーにデータが反映されるまでに1週間から1カ月程度の時間がかかることになる。その間、実質的に災害対策が無効状態となってしまうが、Power Systemsにはこの無効状態の期間がない」(荒井氏)。
また荒井氏は、現行製品の機能拡張などに対する技術的な回答に加え、「2021年ごろの次世代システムまで、向こう5年間のシステム変革に関する具体的な提案をもらえた点が大きな評価点となった」と述べ、すでに2世代先の開発を進めているPower Systemsならでの特性が評価点となったと説明している。
こうしたニトリ側からの説明を踏まえ、日本IBMの朝海氏は、「ハードウェアに加え、OSについても2世代先まで開発を行っている。末永く基幹系システムの基盤として利用してもらうことができるのがPower Systemsの大きな強み」とアピールし、締めくくった。