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日立、生成系AIの利活用を推進するCoE組織「Generative AI センター」設立
社内およびLumada事業において生成AIの活用を推進
2023年5月16日 06:15
株式会社日立製作所(以下、日立)は、生成AIの社内外での利活用を推進する「Generative AIセンター」を5月15日付けで新設したことを発表した。同日に記者説明会が開催された。
Generative AIセンターでは、日立および他社のAI技術と、日立のAIに関する知見、事業分野の知見を組み合わせて、日立社内およびLumada事業において生成AIの活用を推進する。
Generative AIセンターは、生成AIに対して知見を有するデータサイエンティストやAI研究者と、社内IT、セキュリティ、法務、品質保証、知的財産など業務のスペシャリストが集まったCoE組織(Center of Excellence、目的のために社内の人材やリソースを集めた事業横断組織)の形をとる。コアメンバーが数十人在籍し、それに加えてデータサイエンティストや、事業部門や法務部門などから人が加わる。「本業あってのAI」との考えから、いずれも基本的には兼務の形となる。
LDSLを中心に推進してきた日立のAIへの取り組み
記者説明会において、まず生成AI以前からの日立のデータサイエンスやAIへの取り組みのところから、デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data&Design 本部長の吉田順氏は説明した。
日立では、2020年に「Lumada Data Science Lab.(LDSL)」を設立し、データサイエンティストやAI開発者を集結させた。さらにLDSLメンバーを中心に、全社で6000名超のデータサイエンティストを育成し、毎年100件以上のデータ分野での顧客共創やPoCを推進しているという。
こうした推進と両輪として、ビッグデータ分野におけるプライバシー保護に2013年から取り組んできたことや、2021年にLDSLと社内有識者により「AI倫理原則」を策定してきた、安全安心への取り組みについても吉田氏は紹介した。
生成AIについても、R&D部門を中心に取り組んできた事例を吉田氏は紹介した。テキスト生成系では、議事録の要約や、チャットボットの偏見などの攻撃性の抑制などを研究。さらに、「企業用途では事実は事実のまま答えてほしい」として、対話AIが業務文書の該当箇所をそのまま引用して生成することで事実性を担保する、対話3システムにおける機械読解なども推進している。
画像生成系では、壁や線路にAIによってさまざまな損傷を加えた画層を生成することで要件をすり合わせる例や、航空機の離着陸できる気象かどうかの判断をさまざまな雲画像をAIで生成することで熟練者からナレッジを獲得する例、資料で利用する画像をテキストによるプロンプトから生成する例を吉田氏は紹介した。
日立の知見をもとに、社内およびLumada事業において生成AIの活用を推進
こうした日立のAIや事業分野への知見をもとに、日立社内およびLumada事業において生成AIの活用を推進する取り組みが、今回設立された「Generative AIセンター」だ。
こうした日立のAIの技術と知見、事業分野への知見をもとに、日立社内およびLumada事業において生成AIの活用を推進する取り組みが、今回設立された「Generative AIセンター」である。
生成AIを活用して業務効率を向上させたい、しかしリスクを回避したい、という目的に対して、データサイエンスやプライバシー保護、知財、法務など、社内の知見をかけあわせる必要があるが、それは特定の部署だけでは困難、という考えによるものだと吉田氏は説明した。そして得られたナレッジを、日立社内およびLumada事業において活用するというわけだ。
これには日立グループ全体のデジタル戦略を立案する日立デジタルのもとで日立全社が参加するほか、グループ会社や、GlobalLogicや日立ヴァンタラなど、シリコンバレーのIT企業のナレッジやノウハウを集約する。
具体的な取り組みとしては、Lumada事業向けではまず、コンサルティングサービスや構築・運用支援サービスの提供がある。
コンサルティングサービスでは、リスクをコントロールした生成AIの価値創出を支援する。これは、データ利活用の顧客協創を行っているデータサイエンティストチーム(デジタルエンジニアリングBUの一部)を中心に提供する。
また、環境構築や運用支援サービスでは、MicrosoftのAIプラットフォームであるAzure OpenAI Serviceと連携し、そこでの環境構築支援や運用を支援する。これは、クラウドリフト&シフトなどを行っているエンジニアリングチーム(クラウドサービスプラットフォームBUの一部)を中心に提供する。
Lumada事業向けではもう1つ、パートナーと連携。第一弾として日本マイクロソフトと連携して、日立内での生成AI活用と顧客向けサービス提供を推進する。
日立の社内向けとしては、まず業務利用ガイドラインの策定がある。日立社内では、4月に生成AIガイドライン(4月版)を作成してすでに展開しているという。これは具体的な手続きについてユースケースごとに書かれたもので、生成AIは動きが速いので継続的にアップデートしていく。そのため、Generative AIセンターに社内向け相談窓口を設置して、ガイドラインではカバーが難しい問い合わせや相談に対応し、そのナレッジもガイドラインや顧客向けに応用していく。
また、社内利用環境の整備も行う。具体的には、Lumada事業向けと同様にMicrosoftのAzure OpenAI Serviceを利用し、業務情報が入力可能な環境を整備しているという。これは、Generative AIセンターと特定部門でトライアルを実施して事例を作り、全社へ展開していくと吉田氏は説明した。