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日立と名鉄、生成AIを活用した社内文書の有効活用に向けた技術検証を実施

 株式会社日立製作所(以下、日立)は16日、名古屋鉄道株式会社(以下、名鉄)と、名鉄グループの情報システム会社である株式会社メイテツコム(以下、メイテツコム)における社内文書の有効活用による業務効率化に向けて、生成AIを活用した技術検証を実施したと発表した。

 名鉄グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」ことを使命に、攻めと守りのDXに積極的に取り組んでおり、ChatGPTをはじめとする生成AIの可能性に着目し、生成AIの活用検証をグループ横断で進めている。

 日立は、2023年5月にデータサイエンティストやAI研究者、社内IT、セキュリティ、法務、品質保証、知的財産などのスペシャリストを集結した「Generative AIセンター」を設立。日立全社で蓄積している数百件の生成AIの活用事例や、安全で有効な利用を促進するためのガイドラインといったナレッジを共有して、顧客の価値向上と業務改善の推進を支援している。

 こうした中、名鉄とメイテツコムは、生成AI活用における技術検証のパートナーの1社に日立を選び、社内文書の有効活用による業務効率化に向けた検討を開始した。日立は、AIの業務適用実績やデータサイエンスの知見を生かし、導入に向けたコンサルティングからユースケースの検討、Microsoft Azure OpenAI Serviceを活用したセキュアな検証環境の構築、知識データベースの作成、導入効果の評価検証を支援した。

 検証は、管理業務における業務効率化を目的とした生成AI活用の可能性や有用性を確認するため、2023年10月~2023年12月に、名鉄、メイテツコムと、日立の生成AIのスペシャリストを集結したGenerative AIセンターが協働して推進した。具体的には、名鉄およびメイテツコムの業務で優先度の高いものから、生成AI活用の効果が見込まれるユースケースを選定した上で、日立が準備したデモ環境を用いて実際に生成AIを活用し、評価、チューニングを行った。

 検証では、印刷物のスキャンデータなどの非構造化データで構成される社内文書を活用したため、自然言語処理に精通した日立のデータサイエンティストが、業務での利用を想定して最適化した知識データベースをユースケースごとに構築した。これにより、膨大な社内文書データからなる知識データベースをもとに、生成AIが要点を抽出して一定のレベルで適切な回答を出力し、回答精度が向上したことを確認できたという。

 3社で検討・協議した複数のユースケースのうち、生成AI活用の実現可能性や業務効率改善の効果が高く見込まれるものとして、名鉄の70年以上にわたる社内報や創業120年にわたる社史に関する情報検索を効率化するユースケースと、過去のヒヤリハット情報を踏まえた安全な業務遂行・対策の検討を支援するユースケースについて、優先的に評価・検証を行った。

 一般的な書類は、WordやExcel、PowerPoint、PDF、印刷物のスキャンデータなど形式がさまざまで、日本語特有の縦書き記述なども混在することから、どのように知識データベースに取り込むかをユースケースごとに調整することが、生成AIの回答精度を高める上で重要となる。

 検証では、形式の異なる文書ごとにデータの取り込みを工夫するとともに、余分なノイズを落とすなど適切な前処理を行い、知識データベースを作成した。さらに、入力された質問に対して、知識データベースから適切な文章が抽出できるように、基準となる検索手法の選択や生成AIが回答しやすい指示に言い換えるなど、プロンプトエンジニアリングを組み込む技術支援を行った。これにより、質問者の問い合わせに応じた一定のレベルの回答が生成AIから得られることが分かったという。

 業務に合わせた知識データベースを作成したことで、社内報/社史の情報検索のユースケースでは、スキャンデータや縦・横が混在するテキストデータなど形式の異なる資料でも、適切に要点を抽出して一定のレベルの回答が得られた。また、ヒヤリハットのユースケースについても、十数万件分のデータを統合することで、単一データだけでは得られない包括的な回答が可能となり、業務経験の浅い方でも重要なインサイトを得られる可能性も明らかになったという。

 日立は今後、名鉄とメイテツコムのさらなる業務の改善効果が見込める他のユースケースの検証を継続して検討し、生成AIの実ビジネスへの活用に向けた取り組みを推進していくとしている。