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日立、生成AI活用のOT領域への拡大に向けNVIDIAと協業

 株式会社日立製作所(以下、日立)は19日、米NVIDIAと協業し、日立のエネルギー、モビリティ、コネクテッドシステムといった、OT領域でのリーダーシップおよびデジタルソリューションと、NVIDIAの生成AIに関するノウハウを組み合わせることで、DXによる社会イノベーションを加速すると発表した。

 日立では、生成AIは顧客体験を再定義し、組織の効率性を飛躍的に向上させるなど企業および消費者に多大なインパクトを与え、DXの新たな波をもたらしており、今回の協業によりこうした生成AIのケイパビリティを、エネルギーやモビリティ、産業などOT領域へと拡大すると説明。OT領域において、センサーやデバイス、機器・設備から生成される膨大なデータを取り込み、生成AIを適用することで、パフォーマンスを効率化し、洞察(インサイト)を深め、これまでは不可能であったアクションを自動化できるようになるとしている。

 日立はNVIDIAと連携しながら、エグゼクティブリーダーシップチームの選出およびCoE(Center of Excellence)の設立を行い、戦略的なマイルストーンに沿って、日立のOT領域でのドメインナレッジをNVIDIAの高度なAIソフトウェアやGPU技術と融合した業種向けソリューションを開発・展開すると説明。また、日立は、CUDA、NVIDIA AI Enterprise、Omniverse、ModulusなどのNVIDIAソフトウェアプラットフォームに関するエンジニアの育成強化に投資していき、これらの取り組みにより、社会に価値を生み出す新たなイノベーションを起こしていくとしている。

 協業では、NVIDIA Omniverseとドメインナレッジによる次世代デジタルツイン環境の開発・活用を実現する。OpenUSDアプリケーションを接続および開発するためのプラットフォームであるNVIDIA Omniverseと、Physics-ML(物理に基づいた機械学習)モデルの構築やトレーニング、ファインチューニングのためのフレームワークNVIDIA Modulusを活用することで、デジタルツイン環境で、エネルギーやモビリティなど、ミッションクリティカルな日立のさまざまなアセットやプロセスをシミュレーションし、最適化することが可能になる。その結果を現実の世界に反映させることで、グリーンエネルギーへの移行加速やヘルスケアでの新たなイノベーションの実現、交通システムの安全性の向上など、大規模なソリューションを共同で開発し、その有効性を検証・改善することが可能になる。

 また、日立がさまざまな業界で価値創出の実績を積み上げてきたLumadaのAIソリューションのライブラリと、NVIDIA AI EnterpriseやModulusのプラットフォームを統合していく。日立のデザイン・デジタルエンジニアリングのケイパビリティを活用したこれらのソリューションは、モビリティやエネルギー、製造業、金融などのさまざまな業種の顧客がイノベーションを加速し、オファリングの強化やインテリジェントなAIソリューションを創出することを可能にする。

 今回の協業により、日立の米国子会社であるHitachi Vantaraは、NVIDIA DGX BasePOD認証を取得した「Hitachi iQ」ポートフォリオの第一弾製品を発表し、NVIDIA DGXインフラストラクチャと高信頼性ストレージ上に構築された認証済みの統合ソリューションを提供する。複数のコンサンプションモデルにより、顧客が必要なものだけを利用できる仕組みを提供し、オンプレミスのパフォーマンスや投資収益率(ROI)の向上を可能にする。

 今後、Hitachi iQは、NVIDIA H100を搭載したハイエンドのNVIDIA HGX製品と、NVIDIA H100 TensorコアGPUとL40S GPUで構成されるPCI-Eベースのミッドレンジ製品など、ラインアップを強化していくとともに、これらのGPU製品を補完するものとして、エンタープライズグレードのAIツールとフレームワークからなるソフトウェアプラットフォームであるNVIDIA AI Enterpriseも提供していく。

 さらに、Hitachi Vantaraは、ファイルストレージ技術「Hitachi Content Software for File」を活用した第5世代ベースの新しい高速ストレージノードを提供する予定で、複雑なAIワークロードに対応する非常に高速なストレージソリューションの提供が可能になると説明。Hitachi Vantaraは、Hitachi iQポートフォリオを2024年度第1四半期に提供開始する予定。

 日立は、これらのNVIDIAとの協業を通じて、社会により良いインパクトを与え、サステナブルな社会の実現に貢献していくとしている。