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日立が「GenAIアンバサダー」を任命、生成AIの価値を社内外に発信

 株式会社日立製作所(以下、日立)は21日、生成AI事業に関する説明会を開催し、社内に「GenAIアンバサダー」というポジションを新たに設けたことを明らかにした。GenAIアンバサダーは、生成AIによる業務変革をリードし、課題解決やイノベーション創出に取り組むロールモデルとしての役割を担う。

GenAIアンバサダーについて

 「日立には、1000件を超える生成AI活用のユースケースがある。GenAIアンバサダーはその取り組みの価値を伝えるとともに、生成AIのナレッジや成果を社内外に発信していく」と、自らもGenAIアンバサダーの一員となった日立 GenAIセンター センター長 兼 デジタルシステム&サービスセクター Chief AI Transformation Officerの吉田順氏は語る。

日立 GenAIセンター センター長 兼 デジタルシステム&サービスセクター Chief AI Transformation Officer / GenAIアンバサダー 吉田順氏

 初期メンバーには、IT/OT(制御・運用技術)を担当する生成AI開発および活用のエキスパート16人を任命した。16人は、日立全社のAIトランスフォーメーションを牽引するデジタルシステム&サービスセクターの有識者で、経営、営業・マーケティング、データ分析、システム開発・保守、インフラ・機器の制御・運用などの各業務に精通し、さまざまな業務に生成AIを本格適用するITエンジニア、生成AIエンジニア、LLMエンジニアなどだ。GenAIアンバサダーを通じ、SNSやウェブ上で情報を発信するとともに、社外講演の実施やステークホルダーへの対応をするという。

GenAIアンバサダー初期メンバー

 また、日立でLLMやOT分野への適用を研究するトップリサーチャーとも連携し、リサーチャーからの情報発信も増やすとしている。

 初期メンバーはデジタルシステム&サービスセクターかつ国内のメンバーのみで構成されているが、吉田氏は「GlobalLogicやHitachi Vantaraなどのグローバルチームとも連携し、幅広い分野でGenAIアンバサダーの施策を展開していきたい」としている。

GenAIアンバサダーは全社に拡大予定

 今後、GenAIアンバサダーは、システム開発の高度化やOT領域での適用、形式知・暗黙知を学習させたAIエージェントの開発、生成AI環境の強化、戦略・提案作成の自動化など、生成AI活用の最前線を顧客やパートナーと共有することで議論を活性化し、それぞれの課題にあったベストプラクティスへの迅速な落とし込みを支援する。

 吉田氏は、「エージェントに形式知を学習させることはもちろん続けるが、OTの現場ではドキュメントに現れない暗黙知も重要。今後は暗黙知を学習させたエージェントを開発し、現場でフロントラインワーカーを支援したいと考えている」と話す。また、「それらを連結させてマルチエージェント化し、人間の一部の作業を代行することや、エージェントを組み合わせて新しい知識を生み出すことに取り組んでいきたい」としている。

AIエージェント時代に向けた日立の取り組み

生成AI人材の育成に向けて

 説明会では、日立 デジタルシステム&サービスセクター Global Head of Talent Managementの和田深雪氏が、同社の生成AI人材の育成に向けた取り組みについても語った。日立はすでに、グループ全体で生成AIスペシャリスト5万人を育成すること、そして全従業員を生成AI Readyにすることを発表している。

日立 デジタルシステム&サービスセクター Global Head of Talent Management 和田深雪氏

 生成AIスペシャリスト5万人の育成については、「2027年度までに、日立グループの全ITエンジニアを生成AIプロフェッショナルに育成することを目指し、必要なスキリングや環境整備に投資する」と和田氏。投資は全世界が対象で、中でもデジタルシステム&サービスセクターの特定の組織機能と役割の強化を重視するという。

 生成AI Readyに向けた取り組みとしては、生成AIリテラシー教育を3万8000人の従業員に提供したほか、アライアンスパートナーが提供する認定資格の取得を推進、2024年度には約1万1000人が認定資格試験を受験した。2027年度までに約5万人の認定資格保持者を目指すという。

 また、「組織の行動変容も重要な要素」(和田氏)として、エンジニアの意識改革や動機付けを促すべく社内イベントを開催した。日立独自の開発環境やフレームワークの理解促進に向けたトレーニングプログラムも整備している。

生成AI Readyに向けた主な取り組み

 これらの施策に加え、職場主導による自律的な学習コミュニティも形成されており、「このような主体的な活動の広がりが、日立の目指すラーニングオーガナイゼーションの実現につながっている」と和田はいう。

 「生成AI関連の技術変化のスピードはすさまじく、顧客のニーズも常に変化している。日立グループでは、ビジネスや技術の変化動向に応じ、必要なことを必要なタイミングで必要な社員に提供するだけでなく、組織としての持続的成長を促進する仕組みづくりに着目し、事業成長のための迅速な人的環境を整えるよう努めていく」と和田氏は述べた。