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日立とマイクロソフト、生成AIを活用した社会イノベーションの加速に向け3年間で数十億ドル規模の協業を発表

 株式会社日立製作所(以下、日立)と米Microsoft(以下、マイクロソフト)は4日、生成AIを活用した社会イノベーションを加速するため、今後3年間で数十億ドル規模を見込む協業を推進すると発表した。

 今回の戦略的提携を通じて、日立は2024年度に売り上げ収益2.65兆円を計画するLumada事業のさらなる成長を加速するとともに、日立グループ27万人の業務効率化や生産性向上を推進するとしている。

 具体的には、日立はマイクロソフトのクラウド、Azure Open AI Service、Dynamics 365、Copilot for Microsoft 365、GitHub CopilotなどをLumadaソリューションに組み込み、エネルギーやモビリティ、産業分野の革新的なソリューションを提供することで、企業や社会により良い成果をもたらすと説明。また、生成AIの普及により対応が迫られているセキュリティ強化などクラウドサービスの高度化や、データセンターの環境負荷低減などの喫緊の課題解決に向け、共同プロジェクトの立ち上げも推進するとしている。

 提携により、両社は「日立の全社トランスフォーメーションの推進」「革新的なデジタルソリューションの開発」「サステナブルな成長をめざした共同プロジェクトの開始」「デジタル人財育成の強化」の4分野において取り組みを進める。

 日立の全社トランスフォーメーションの推進では、日立のGenerative AIセンターがマイクロソフトと連携しながら、Copilot for Microsoft 365、GitHub Copilot の活用による業務効率化やアプリケーション開発の生産性向上、Azure OpenAI Service を活用したカスタマーサービスの高度化を推進していく。

 具体的には、日立全社のAIトランスフォーメーションの一環として、アプリケーション開発においてAzure OpenAI ServiceやGitHub Copilotと日立のシステム開発の知見などを組み込み、ミッションクリティカルシステムにも対応する高い開発品質の維持と生産性向上を実現する。日立のナレッジである詳細設計情報を入力した社内検証では、アプリケーションのソースコードを70~90%の割合で適切に生成でき、品質の高いアウトプットを得られることを確認できたという。

 また、日立の鉄道事業のグループ会社である日立レールでは、機器監視の強化や予測精度の向上による予知保全を可能にするため、生成AIを活用する。これにより、安全性を強化しながら、故障の低減、サービス品質の向上、運用コストの削減を実現する。この一例として、鉄道インフラをデジタルで監視するためのプラットフォームをAzure上で構築し、データの可視化と分析をAIで最適化することで、インサイトが得られることを確認した。この実績をもとに、英国の大手鉄道システム運営会社であるNetwork Rail向けに適用した結果、架線の予知保全の意思決定を強化できたという。

 革新的なデジタルソリューションの開発では、日立はLumadaソリューションに生成AIのケイパビリティを取り込むことで強化を図っている。すでに2万社規模のユーザーを有する統合システム運用管理「JP1」のSaaS版である「JP1 Cloud Services」において、マイクロソフトの生成AIを活用したサービスを提供開始しており、金融・公共・製造など幅広い企業のIT部門のオペレーターによる障害対応の初動の迅速化や運用効率化を見込んでいる。先行実施した社内実証では、生成AIによりアラート対処方法を回答し、その根拠となるマニュアルなどの引用元も表示したことで、運用オペレーターの初動の判断時間を約3分の2に短縮できる効果を確認した。

 今後さらに適用を拡大すべく、日立とマイクロソフトは、新たにエネルギー業界においてもアセットパフォーマンス管理やエネルギー取引およびリスク管理などのデジタルソリューションを強化することで、エネルギー転換を支援し、ダウンタイムの削減と収益性の拡大を図ると説明。これらのアプリケーションを拡張するためには、コンピューティングパワーとクラウドインフラの向上が不可欠であり、日立エナジーのエンタープライズソフトウェアソリューション技術とマイクロソフトとのパートナーシップは、発電から送電・配電に至るエネルギーネットワークを最適化し、信頼性の高い持続可能なエネルギーを顧客に提供する上で重要な役割を果たすとしている。

 サステナブルな成長をめざした共同プロジェクトの開始では、日立の子会社であるGlobalLogic、Hitachi Digital Services、日立ソリューションズをはじめとする日立グループ各社は、デジタルエンジニアリング、IT、マネージドサービス、クラウド向けアプリケーションサービスなどのサービスを提供している。パートナーシップによる新たな開発では、マイクロソフトとの持続的なイノベーションを目指し、幅広いサービスの強化に注力していくとしている。

 また、AIに起因するCO2排出量が地球環境に与える影響が増大する中、環境負荷低減に向け、日立とマイクロソフトはヨーロッパでのデータセンタープロジェクトをはじめとして、ゼロカーボン化に向けて取り組んでいくとしている。

 デジタル人財育成の強化では、日立は顧客のAIトランスフォーメーションを支援する人財「GenAI Professional」を育成するプログラムに、GitHub CopilotやAzure OpenAI Serviceを活用した高度なソフトウェアの開発スキルを身につける研修なども組み込み、5 万人以上のGenAI Professionalを育成する。