ニュース
日立、工場や建設現場などにおける安全管理業務の高度化を支援する生成AIソリューションを提供
2024年11月5日 06:30
株式会社日立製作所(以下、日立)は1日、工場や建設現場など職場での労働災害を未然に防ぐための安全管理業務において、生成AIを活用してリスクアセスメントを高度化するソリューションを新たに開発し、「生成AIプロフェッショナルサービス powered by Lumada」の新メニューとして提供開始した。
ソリューションは、職場での労働災害につながるリスクを評価するリスクアセスメントの品質を向上させるもので、日立グループが幅広い事業領域でLumadaとして蓄積してきた安全管理に関するナレッジに、Generative AIセンターのデータサイエンティストが生成AI活用の知見・技術を掛け合わせて開発した。
ソリューションを活用することにより、建設や輸送、電力、ガス、鉄道など、現場設備や工場を抱え、安全に関わるリスクが高い業務を持つ顧客において、重大な災害につながる危険源の特定の抜け漏れを可能な限り防止し、有効な対策の立案を通じて、職場の継続的なリスク低減に貢献する。
ソリューションではまず、安全業務の担当者がリスクアセスメント結果を記入する。担当者はリスクアセスメント結果を生成AIに入力し、記載内容の妥当性・正確性の判定を依頼する。その内容を生成AIがレビュー役として確認し、評価結果として「OK/NG」の判定結果と、NGの場合、その理由などフィードバックを出力する。担当者は、生成AIの回答をもとに自身のリスクアセスメント結果を見直す。
日立グループでは、重大な労働災害の防止にはハイリスク作業に対する適切なリスクアセスメントに基づいた対策立案が有効と考え、2021年から日立グループで統一したリスク管理を実施している。しかし、質の高いリスクアセスメントを実施するためには、1)担当者の理解度の違いによるリスクアセスメント結果のばらつきの是正、2)リスクアセスメントに要する手間や時間の縮減、3)リスクアセスメントに関するノウハウの容易な有効活用、暗黙知の形式知化――といった解決すべき課題があったという。
これに対して、生成AIの導入によってリスクアセスメントにおける評価・改善作業を高度化することを目指し、技術開発、社内実証を進めてきた。
ソリューションの開発に先駆けて実施した社内実証は、幅広い事業領域を通して現場業務を深く理解する日立の安全管理に関するナレッジ(社内基準など)を生かし、生成AIを使い、リスクアセスメントにかかる担当者間の評価精度のばらつきをなくして品質を高められることを確認する目的で実施した。
その結果、安全業務担当者が作成したリスクアセスメント結果に対し、約9割の精度で、適切でない記述を指摘した上で改善案を提示できることが確認された。実証結果を受け、日立社内では、9月からグループ7拠点で試行運用を開始し、今後、日立グループ全体での実用化を目指す。
ソリューションは、日立社内で得られた成果をもとに、顧客の安全管理業務の社内規定や、過去の事例などを踏まえて、顧客のニーズに合わせカスタマイズして提供する。また、生成AIが提示する改善案のさらなる精度向上を実現する技術として、検索結果やリスクアセスメントのリコメンド情報を、複数の生成AI同士で議論し、よりよい回答を導く仕組みに関わる特許取得を進めているという。
さらに、幅広い事業領域で生成AIの高いパフォーマンスを実現するための調整方法に関する成功事例やノウハウを多数蓄積し、ソリューションの実用化にあたりAIの回答精度を上げるための独自開発を行っている。これにより、ソリューションの継続的な強化を図っていくとしている。