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日本オラクル・三澤社長が話す、「OCIがミッションクリティカルに適している4つの理由」

 日本オラクル株式会社の三澤智光社長は5日、同社のクラウド事業戦略について説明。

 金融分野における大規模ミッションクリティカルシステムにOracle Cloud Infrastructure(OCI)が採用されるなど、国内において数多くの事例が生まれたほか、基幹分野におけるパートナー連携の強化、ISVによるアプリケーションのクラウド基盤としてOCIの採用が進んだことなどを強調した。

日本オラクル 取締役執行役社長の三澤智光氏

 2021年6月から開始した同社2022年度においては、重点施策として、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速」、「ミッションクリティカルなシステムのクラウド化」、「次世代社会公共基盤の実現支援」、「パートナーエコシステムの拡充」の4点を掲げている。「2020年12月の社長就任以来のさまざまな活用を通じて、Oracle Cloudが日本に根づいた1年になった」と述べた。

2022年度の重点施策

Oracle Cloud ApplicationsとPCIがクラウド事業の2本柱

 日本オラクルでは、三澤社長が「ピュアSaaS」と呼ぶクラウドアプリケーション「Oracle Cloud Applications」と、IaaSおよびPaaSのOCIをクラウド事業の柱としている。

 「Oracle Cloud Applicationsは、ERPクラウド、HCMクラウド、CXクラウドのほかに、NetSuiteを含めて、中小企業にも活用してもらえる製品群で構成している。大企業から中小企業まで幅広く活用してもらえるサービスを、フルスイートで提供しており、SaaS事業は、日本でも順調に推移している」と述べた。

 SMBCグループが会計システムを刷新したり、東洋製罐グループホールディングスが財務会計のDXにクラウドERPを採用するといった実績もあり、「この1年で、ERPだけでなく、HCMやCXも、日本市場に広げることができた」と振り返った。

Oracle Cloud Applicationsの広がり

 またOCIについては、「最大の差別化は、クラウドネイティブで自律化したAutonomous Databaseを提供できる点である。MySQL HeatWaveもOCI上から提供できるようになった。第2世代OCIのデータセンターは、2021年10月時点で全世界31リージョンを稼働。今後1年以内で13リージョンを追加する計画であり、政府専用リージョンも強化していくことになる。2025年までに、すべてのデータセンターで100%再生可能エネルギーへの対応を図るアグレッシブなコミットメントも発表している。すでに欧州のすべてのリージョンで、100%再生エネルギーによる運用を行っている」という。

世界規模でクラウド拠点を拡大

 国内企業において、基幹システムへのOCIの採用が相次いでいるほか、HPCなどでの利用が始まっていることを紹介。「この1年間で、さまざまな事例を日本で生み出している。今後も驚いてもらえるような事例が公開できる」と述べた。

 ここでは、野村総合研究所(NRI)が、自社データセンター内に導入したOracle Dedicated Region Cloud@Customer上に、同社の投資信託の窓販業務ソリューション「BESTWAY」を移行し、2021年7月から稼働したことに触れ、「最大規模の金融向け基幹システムがOCIでカットオーバーしたことになる。ピュアクラウドアーキテクチャでこれだけ大規模なミッションクリティカルシステムが、日本でカットオーバーした例はほかにない。いよいよミッションクリティカルシステムのクラウド化が本格的に加速していくことになる」と宣言した。

 BESTWAYは、銀行での投資信託の販売を総合サポートする共同利用型システムで、大手銀行や信託銀行、地方銀行、第二地方銀行といった銀行や、生損保、投信会社など、110社以上に採用されているミッションクリティカルな金融SaaSだ。NRIがこれまでSOC2やFISCなどを基準に、金融業界向けに整備。自社の高度な統制下での管理を維持しながら、アプリケーションレイテンシに関する厳しい要件も満たせるという。

Oracle Cloud Infrastructureの広がり

 三澤社長は、今回のNRIの取り組みは、ミッションクリティカルシステムのクラウド化促進に大きな影響を与えるとする。

 「今後5年以内で、半数以上のミッションクリティカルシステムがクラウド化するだろう。そのきっかけとなるのは、ハードウェアのEOSL(End of Service Life)である。聞くところによると、その際にクラウドで更改すると答える企業がほとんどである。これまではクラウド化してもコストが下がらず、ベネフィットが得られないという状況だったが、OCIによってその課題が解決できる」と説明。

 そして、「NRIのような大規模ミッションクリティカルシステムのモダナイズが可能である、という事例が示せたことも大きな追い風になる。さらに、クラウド化することで運用にかかる費用が大幅に減少し、そこで生まれたコストをクラウドネイティブ開発の内製化に生かしたい、といった動きも後押しすることになる」と指摘した。

ミッション・クリティカル・システムのクラウド化における課題

ミッションクリティカルシステムのOCIへのリフトを提案

 このほか、「2025年の崖に示されるように、DXには基幹システムのモダナイズが必須であり、これに取り組まなければ、日本は競争力を失うことになる。レガシーシステムのモダナイゼーションは、日本の国力を維持するためには必須であることは間違いない」と前置き。

 「レガシーシステムは古い仕組みだというイメージがある。だが、レガシーシステムはミッションクリティカルシステムであり、ビジネスクリティカルシステムである。つまり、企業や社会の仕組みを支えてきたシステムである。アーキテクチャが若干古かったり、データ活用がしにくい、変化対応力が低いことが指摘されており、これをマイクロサービスやコンテナで書き換えればいいという乱暴な話もあるが、それはありえない選択肢だ。ヒト、モノ、カネに関わるワークロードを分散化させたり、データベースの整合性を取ったりすることはできない」と説明する。

 また、「リフトし、シフトすることにチャレンジしている企業もあるが、いまのミッションクリティカルシステムのワークロードの特性は、一般的な汎用クラウドには向かず、性能が発揮できない、可用性が落ちるといった課題が生まれている。ミッションクリティカルのクラウドは難しいという論調がますます広がっているのが実態」と指摘した。

 その上で、「日本オラクルが提案しているのは、まずはオンプレミス上で稼働しているミッションクリティカルシステムをOCIにリフトしてもらうことである。リフトするだけでも、インフラの拡張性や柔軟性が確保でき、従量課金での活用が可能になり、運用コストの大幅な削減など、多くのベネフィットが生まれる」

 さらに、「オンプレミスでは、セキュリティホールがないミッションクリティカルシステムを運用するために定期的なパッチ適用を行っていたり、重要なデータを扱っているにも関わらずデータが暗号化されていないというように、日本のミッションクリティカルシステムが抱える重大な課題が発生している。だが、OCIにリフトするだけで、バッチの自動化とデータの暗号化が実現できる。こうしたリフトによるベネフィットの上で、次にシフトしてもらうことができれば、あとは、サブシステムをコンテナやマイクロサービスに切り出すといったような、ミッションクリティカルの正しい進化ができる」とする。

ミッション・クリティカル・システムのモダナイゼーションへのロードマップ

高速ネットワーク、高速コンピュートなど4つのメリットを提供

 三澤社長は、OCIが他社のクラウドサービスに比べて、ミッションクリティカルに適している理由を、「高速ネットワーク」、「高速コンピュート」、「超高速ストレージ」、「デフォルトセキュリティとセキュリティの自動化」という4点から説明した。

 「オラクルは、IaaSやPaaSに関しては、かなり遅れて市場参入した経緯がある。その結果、最新テクノロジーを活用して、ミッションクリティカル環境に最適なクラウドをゼロから設計、構築してきた」としながら、「他社が階層型ネットワークであるのに対して、OCIはクラスター型の高速ネットワークであるため、コンピュートとストレージが直結していること、他社がソフトウェアの仮想化によって、テナント分離を行っているのに対して、オーバーヘッドの負荷が少ないネットワークレイヤで分離していく手法を採用しており、ベアメタルによる高速なコンピュートを実現でき、高いセキュリティを担保できる点が特徴である」と話す。

 このほか、「多くのパブリッククラウドは、CPUの拡張はできてもメモリを含めた拡張はできない。それができるのはOCIだけである。またOCIでは、ミッションクリティカルシステムのデータベースヘビーな環境での処理に最適化した超高速なストレージを提供しており、2400万IOPSの性能を実現している。そして、高速ネットワーク、高速コンピュート、超高速ストレージを最適化して動かすことができるAutonomous Databaseも大きな差別化になっている。さらに、他社はセキュリティを手動で設定するためヒューマンエラーが起きやすいが、OCIは自動化したセキュリティを提供し、ヒューマンエラーが起きない環境を実現している。こうした競合他社にはない4つの特徴を提供することで、オンプレミスで動作するミッションクリティカルシステムを、そのままクラウド化でき、モダナイズができる」と述べた。

なぜOCIが技術的にミッション・クリティカルに適しているのか?

 さらに、パブリッククラウドの環境のすべてを提供し、自社のデータセンター内でコントロールできるOracle Dedicated Region Cloud@Customer、顧客専用のデータベースパブリッククラウドサービスをオンプレミスで利用できるOracle Exadata Cloud@Customerを提供していることも、他社にはない取り組みとして強調した。

OCIが提供するさまざまなハイブリッド環境

 その一方で、「現在、クラウドネイティブサービスの拡張に力を注いでおり、企業において、これを活用した新たなサービスを開発する動きも出ている。オラクルは、オープンソースプロジェクトにも投資をしたり、既存システムのマイクロサービス化、コンテナ化を支援したりといった取り組みも進めている。さまざまなファイルシステムを組み合わせた開発においても、Autonomous Databaseでは、シングルインターフェイスで複数のデータベースファイルシステムを活用した開発が行える。これらの点をあまり発信してこなかった反省がある。今後、クラウドネイティブの取り組みに関する訴求を強化していきたい」とも述べた。

パートナー連携でミッションクリティカルシステムのクラウド化に向けた準備が整った

 一方、パートナー戦略についても触れた。

 NECと基幹システムのクラウド移行の加速に向けた協業を強化したほか、NTTデータ先端技術がOCI向けマネージドサービスを提供開始すること、TISとクラウド移行による財務会計システムの最適化への取り組みを開始したこと、NECネクサソリューションズが小売業向け販売監視ステムの基盤をCOIで提供開始したこと、ワークスアプリケーションズがERPマネージドサービスの基盤にOCIを採用したことなどを紹介。

 「パートナーとの連携により、ミッションクリティカルシステムのクラウド化に向けた準備が整い、今後、その動きを本格化させることになる。また、多くの実績を持つアプリケーションが、クラウド基盤としてOCIを採用しはじめたことも特筆できる点である」と述べた。

 さらに、OCIに関するトレーニングと認定試験を無償で提供。9月8日からは、OCIラーニング・サブスクリプションとして無償トレーニングを提供するほか、期間限定で、OCI認定試験を無償で受験できる仕組みを、年内には日本で開始する計画も明らかにした。

 また、データドリブンなDXを実現するレガシーモダナイゼーション支援サービスを用意する考えも示した。ここでは、ITライフサイクルコストの構造改革や、既存データ資産に眠る価値の解放、サービスビジネス環境変化に追随する即応力の獲得といったさまざまな観点からの支援サービスを用意。パートナーとともに提供していくという。「詳細は今後発表することになる。どこからモダナイズしていくかがわからないという企業や、データ活用に課題がある企業を、コンサルティングサービスとテクノロジーサービスを組み合わせた形で提供していく」と述べた。

 なお、日本オラクルでは、11月9日~12日まで、「Oracle Cloud Days 2021」をオンラインで開催する。日本オラクルの三澤社長は、開催初日に予定されている基調講演で「次世代社会の実現に向けたクラウド活用の潮流」をテーマに、同社のクラウド戦略について説明する予定だ。