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日本オラクル、MySQL HeatWaveをAWSで利用できる「MySQL HeatWave on AWS」を発表

 日本オラクル株式会社は13日、インメモリ型の分散データベースサービス「MySQL HeatWave」をAmazon Web Services(AWS)上で利用できる「Oracle MySQL HeatWave on AWS」を発表した。MySQL HeatWaveはOracle Cloud Infrastructure(OCI)上でのみ利用できたが、新たにAWS上でも利用できるようになる。

MySQL HeatWave on AWS

ひとつのデータベースで更新・分析・機械学習に対応する「MySQL HeatWave」

 MySQL HeatWaveは、独自のHeatWaveエンジンを追加することで、分析や機械学習機能を活用できるのが特徴だ。トランザクション処理の利用だけでなく、ほかのデータベースに移行させることなく、ひとつのデータベースで、最新データに対する機械学習やリアルタイムでのデータ分析、予測などが可能になる。

MySQL HeatWave

 2020年12月に正式リリースが行われ、2021年8月には運用の自動化により、管理者の負荷軽減を実現するMySQL Autopilotを提供。2022年4月には機械学習のHeatWave MLの提供を開始している。

 MySQL Autopilotは、プロビジョニングやデータ管理、クエリ実行、障害処理など、アプリケーションライフサイクルのあらゆる側面において、ワークロードを考慮した機械学習ベースの自動化を提供。自動プロビジョニング、自動並列ロード、自動エンコーディング、自動データ配置、自動スケジュール、自動クエリ計画改善、自動変更伝播、自動エラー処理などの機能を組み合わせることで、アプリケーションの性能を向上させ、ワークロードを実行するために最適な構成を予測することでコストを削減。手動によるデータベース管理を軽減することができる。

 またMySQL HeatWaveは、OCIのすべての商用リージョンで利用が可能であり、英国政府向けリージョンなどでも利用が可能になっている。昨今では、金融分野のユーザーの利用も進んでいるという。

 2022年4月以降は、HeatWaveクラスタの最小ノード数を2ノードから1ノードとしたほか、HeatWaveでサポートするSQL関数を拡張、MySQLノードの障害からの自動復旧、機械学習の訓練フェーズでのアルゴリズム選択が可能な、柔軟性の強化などの機能拡張を図っている。

 なお今回の発表にあわせて、Amazon Auroraと比較してコストパフォーマンスを向上させるOLTPワークロード向けに設計した機能をAutopilotに追加した。自動スレッドプールによって、実行すべき最適なトランザクション数を決定することにより、高い同時実行数でより高い持続的なスループットを提供。自動シェイプ予測では、OLTPワークロードにおいて最高のコストパフォーマンスを実現するために、最適なシェイプを決定するという。

AWSを選択できる柔軟性を提供

 今回のMySQL HeatWave on AWS発表は、「MySQL HeatWaveを利用するユーザーに、AWSを選択できる柔軟性を提供する」(日本オラクル MySQLグローバルビジネスユニット アジアパシフィック&ジャパン担当 MySQLソリューションエンジニアリングディレクターの梶山隆輔氏)ものだ。

 梶山氏は、「AWSでアプリケーションを作り込んでいるユーザーの場合、データベースの性能やコストパフォーマンスの観点から、MySQL HeatWaveを使いたいと考えても、データ転送量(Egress)が課題となっていたり、データ保護の観点やクラウド間を連携することで生まれるネットワークレイテンシの課題が生まれたりしていた。また、既存アプリの周辺サービスとの統合という意味でも、AWSのなかにHeatWaveがあることが必要だと考えた」とする。

日本オラクル MySQLグローバルビジネスユニット アジアパシフィック&ジャパン担当 MySQLソリューションエンジニアリングディレクターの梶山隆輔氏

 これまでは、AWS AuroraからOCI上のMySQL HeatWaveに移行するユーザーも多かったが、アプリケーションの一部をAWSで引き続き稼働させたいと考えているユーザーも少なくない。これらのユーザーに対して、AWSから課金される高価な(Egress側の)データ転送料金や、オラクルのクラウドで稼働するデータベースサービスにアクセスする際の遅延などの課題を解決できる手段として提供するという。

 MySQL HeatWave on AWSの構築、運用、サポートは、オラクルのMySQLのチームで行っているのが特徴だ。

 「AWSのインフラの上にMySQL HeatWaveを構築し、それを利用してもらうことになる。AWSのコンソールにはMySQL HeatWaveは表れない。AWS上にデータ管理基盤や運用基盤、インタラクティブなコンソールを実装。独自のUIをオラクルで用意し、そこにアクセスして設定や管理を行う形で、機械学習も利用可能になる」という。

 先日、日本オラクルが発表したOracle Database Service for Azureでは、Microsoft Azure上のコンソールにOracle Database Serviceの管理画面が表示されるものの、起動するインスタンスはOCI上にあるという仕組みになっていた。MySQL HeatWave on AWSの仕組みはそれとは大きく異なるものになる。

MySQL HeatWave on AWSの特徴
MySQL HeatWave on AWSのコンソール

 日本オラクルが発表したベンチマークテストの結果によると、MySQL HeatWave on AWSは、AWS上で動作するRedshiftより20倍高速であり、Snowflakeよりも16倍、Google BigQueryよりも16倍、Microsoft Synapseよりも5倍高速だという。

 また、4TB TPC-Hベンチマークによるコストパフォーマンスの調査では、MySQL HeatWave は、Redshift の7倍、Snowflakeの10倍、Google BigQueryの 12倍、Microsoft Synapseの4倍に達するという。

 「MySQL HeatWaveは、分析処理、機械学習、トランザクション処理で競合製品に対する高いコストパフォーマンスを実現している」としたほか、「サーバー側のデータマスキングと匿名化、データの非対称型暗号化、SQLインジェクションなどのデータベース固有の攻撃に対するリアルタイムな保護を提供するデータベースファイアウォールなどが利用できるため、Amazon Auroraよりもさらにセキュアである」とも述べた。

AWS上のHeatWaveは競合のサービスよりも数倍高速という
コストパフォーマンスの高さも特徴

 さらに、自動化を支援するMy SQL AutopilotもAWS上でそのまま利用できることを示しながら、My SQL Autopilotの機能のひとつであるAuto Thread Poolによって、自動的にチューニングを行い、トランザクション処理でAuroraの10倍以上のスループットが実現できることも強調した。「機械学習を活用したMySQL Autopilotによるトランザクション処理性能の最適化が図れる」という。

Auroraの10倍以上のスループットが実現できるという
機械学習を活用したMySQL HeatWaveの自動化

 また、Auto Shape Prediction for MySQL for OLTPにより、MySQLのトランザクション処理時に最適なシェイプの予測が可能になり、「稼働基盤であるコントロールプレーンとの統合や、定期的な稼働統計の収集により、最適なメモリサイズ、CPU数などを予測して、提案することができる。最適なリソースの提案により、コスト抑制効果も期待でき、管理作業の負荷も軽減できる」という。

 加えて、MySQL HeatWave on AWSでは、OCI環境で利用できる機械学習機能のHeatWave MLも利用でき、「Redshift MLよりも25倍もの高速化が図れる」とした。

 HeatWave MLは、トレーニングや予測、説明を含むインデータベース機械学習機能を提供するものであり、ETL(抽出、変換、ロード)の複雑さやレイテンシ、コストを発生させることなく、リアルタイムのデータに対して、セキュアに機械学習を利用することができる。

Auto Shape Prediction for MySQL for OLTP
MySQL HeatWaveによるデータベース内での機械学習

 日本オラクルの梶山氏は、「MySQL HeatWave on AWSは、アプリケーションがAWS上にあり、データベースにAuroraを使っている既存のAWSのユーザーにとって大きなメリットを提供できる。性能面で課題があったり、分析する際にデータを移動させなくてならないために、データの鮮度が落ち、リアルタイム分析ができなかったり、あるいはセキュリティ上の懸念が発生するという課題も、MySQL HeatWave on AWSで解決できる。データをAWSから移動することなく、また開発者が新しいプラットフォームについて学ぶ必要がなく、MySQL HeatWaveのイノベーションのメリットを享受できる」と述べた。

 なお、今後のマルチクラウドの方向性については、「近い将来には、Microsoft AzureでもMySQL HeatWaveが利用可能になる予定である」としている。