ニュース

日本オラクル・三澤社長が2024年度の事業方針を解説 「日本のためのクラウド提供」を表明

 日本オラクル株式会社は6日、2023年6月からスタートした同社新年度の事業方針について説明。「日本のためのクラウドを提供」、「お客さまのためのAIを推進」の2点を重点施策に掲げた。

 「日本のためのクラウドを提供」では、ひとつめとして、「日本のお客さまのための専用クラウドを提供する」とした。

 日本オラクルの三澤智光社長は、「当社は、他社に比べると十数年遅れてIaaSやPaaSに参入したが、それは十数年あとのアーキテクチャで設計しており、競合にはできなかったことができるということでもある」と前置き。

 「クラウドデータセンターをコンパクトに構築でき、クラウドを制御するエンジンもコンパクトで、高速に動作する。これを活用して、お客さまのデータセンター内でも同じサービス環境を提供できる。すでにDedicated Regionとして提供しており、野村総合研究所ではリテール証券会社向けバックオフィスシステムのTHE STARを稼働。これは、日本の証券会社の約50%が利用しているものであり、日本ではほかに例がない、クラウドを活用した大規模ミッションクリティカルシステムである」とした。

日本オラクル 取締役執行役社長の三澤智光氏
日本のお客さまの要件にあわせた多様なクラウド展開モデル
野村総合研究所によるリテール証券会社向けバックオフィスシステムの稼働事例

 さらに、「パートナー向け専用クラウドであるAlloyによって、パートナーが自社サービスとしてクラウドを提供できるようになる。日本の企業は、マネジメントについては、日本の信頼できる会社にやってもらいたいと思っている。Alloyは、日本にこそ適したものである。クラウドテクノロジーを使い、安定的に稼働する時代に入ってきており、日本のための専用クラウドを提供することができる」と述べた。

 2つめは、「ガバメントクラウドへのコミットメント」だ。日本オラクルに、デジタル・ガバメント推進部を設立し、デジタル庁向けやガバメントクラウドに関する体制を強化。ガバメントクラウド専用のOCI情報提供サイトの開設や、ガバメントクラウド用リファレンスアーキテクチャの提供、政府および自治体向け無償研修プログラムの提供などによって、ガバメントクラウド推進支援を強化する一方、地場IT企業やISVパートナーとの共創セミナーの実施をはじめとしたパートナー協業を推進する。

 「ISVでのOCI化が本格的に進むのは、2023年後半からになる。それにあわせて、ガバメントクラウドへの取り組みをより積極化したい」と語った。

 なお、オラクルでは、EU圏向けソブリンクラウドの提供を発表。ドイツとスペインのデュアルリージョン構成によって、すべてのデータとアプリケーションをEU圏内に保有する環境を整えている事例も紹介した。

Oracle EU Sovereign Cloud

 3つめは、「ハイブリッドクラウドによる、ミッションクリティカルシステムのモダナイゼーション」とした。ミッションクリティカルのワークロードに対応するために、クラウド基盤を一から再設計している点を強調。堅牢なセキュリティ機能を、無償あるいは低コストで提供していること、TCO低減に貢献する価格体系を実現していることなどを示しながら、次のように語った。

 「ミッションクリティカルシステムのクラウド化に失敗したという例をよく聞く。それは、パブリッククラウドのテクノロジーと、オンプレミスのテクノロジーは相性が悪いからだ。大規模ミッションクリティカルシステムは、ピーク時の処理性能を想定した専用のハード環境が用意され、ワークロードを処理するため専用の高速ネットワーク環境を持っている。また、クラスタリングによる可用性や、ステートフルなデータベースが活用されている。だが、これらの要件を満たしているパブリッククラウドは世の中にはない。だから、超ミッションクリティカルなレガシーシステムはクラウド化しにくい」と、失敗の原因を説明。

 その上で、「当社のクラウドでは、小さくつくるデータセンターテクノロジーと、ミッションクリティカルのワークロードを稼働させるテクノロジーを持っているのが特徴である。そして、セキュリティはクラウドに組み込むことを前提に設計しており、ほぼ無償で利用でき、自動化されているために設定ミスによるセキュリティインシンデントも発生しない。OCIを利用すると、最低でも50%安くなり、圧倒的なコストパフォーマンスがある。これらは、10年遅れで設計されたからこそ実現できているもので、後出しじゃんけんのような強さがある」と述べた。

 競合他社に比べて、コンピュートでは67%の低価格化、ストレージでは98%の低価格化、ネットワークでは96%の低価格化が図れること、新たに発表したExadata X10Mでは、「これ以上の性能を発揮できるデータベースシステムは地球上には存在しない」と表現。顧客の方針やロードマップに合わせて最適なモデルを選択でき、統一されたテクノロジーで運用可能な点も強調した。

クラウドのメリットをミッションクリティカル・システムでも享受いただくために
お客さまのTCO低減へ貢献する価格体系

 4つめが、「クラウドネイティブSaaSによる、お客さまのトランスフォーメーションの推進」である。Oracle Fusion Applicationsが、クラウドネイティブのテクノロジーで作り直した新たなSaaSであることを示しながら、「従来のERPは、バラバラのインフラと個別のインスタンスで提供され、それぞれにバージョンアップとメンテナンスが必要となり、AIなどの技術革新の価値が享受しづらい。お客さまの競争力を失うだけである。だが、クラウドネイティブSaaSであるOracle Fusion Applicationsは、統一されたOCIのインフラの上で、集約された個別インスタンスを実現しており、常に最新機能に自動アップデートされ、追加コストが必要なく、AIなど技術革新の価値を取り入れることができる」と述べた。

トランスフォーメーションを推進するため、一から作り直したクラウドネイティブSaaS

 5つめの施策は、「ERPにまつわる従来のコスト構造から、お客さまを開放」とした。

 「日本のERP業界のコスト構造に挑戦していかなくてはならない。多額の初期導入コスト、複雑な運用に伴うコスト、5~7年後に発生するバージョンアップ時の多額のコストなどを考えると、ERPは金食い虫である。システムライフサイクルコストの大幅削減によって、ITコスト構造の変革を実現しなくてはならない」と述べた。

ERPにまつわる従来のコスト構造から、お客さまを開放

OracleのAI戦略

 一方、もうひとつの重点施策とした「お客さまのためのAIを推進」では、SaaSにおいて、Oracle Fusion Cloud ApplicationsやNetSuiteなどに生成AIや学習済みモデルを組み込むこと、PaaSでは、顧客データをセキュアに活用し、お客さま専用モデルとして構築可能な生成AIサービスや各種AI開発サービスを提供すること、IaaSでは、大規模なAIモデル作成を、高速で低コストに実現できる環境をOCIで提供していることを挙げた。

お客さまのためのAIを提供

 SaaSについては、シングルデータモデルにより、全体最適化したAIを利用できることに加えて、四半期ごとのバージョンアップにより、最新AIの技術の価値を享受できることを示し、第1弾として、Cloud HCMに生成AI機能を搭載。人事部門の生産性向上を実現できるようにしていることを紹介した。さらに、ERPやSCM、CXにもAIを組み込み、自然言語でさまざまな問い合わせができるようになるという。「ERPが面白くなる時代がやってくる」などと述べた。

技術進化の恩恵を即座に享受できるよう、クラウドネイティブSaaSに組み込まれたAI

 またIaaSでは、「F1は、高速サーキットで走らせることでその性能を最大限発揮できるのと同じく、最高性能のGPUの性能を発揮できる環境を提供するのがOCIとなる。RoCE v2 RDMA Networkにより、大量のGPUを支える超広帯域ネットワークを実現し、OCI Superclusterによって、クラウドデータセンター全体をスーパーコンピュータのようにデザインでき、大規模言語モデルの学習に求められる時間とコストを最小化できる。ベンチマークでは、学習時間とコストがいずれも50%削減できたケースがあり、AIベンチャー企業が、インフラとしてOCIを選択しているケースが増加している」とした。

大規模なAI作成を、高速かつ低コストに実現するOCI Supercluster

 また、大規模言語モデルを開発するCohereと連携したことについても言及。「当社の生成AIに向けた一歩になる。データセキュリティやプライバシー、ガバナンスを守りながら、企業向けに特化した生成AIを提供している企業であり、OracleのSaaSに取り込むとともに、Autonomous DatabaseやMy SQLにも取り込むことになる」とした。なお、「AIの領域の詳細については、2023年9月に開催されるOracle CloudWorld 2023で、はっきりとした姿を伝えられる」と述べた。

Cohereとの連携

 こうした新年度の方針を打ち出しながら、日本オラクルの三澤社長は、「日本の企業にとってはレガシーモダナイゼーションは必須であり、そうしなければ新たなビジネスモデルや環境に追随できず、日本の競争力は劣ることになる。ヒト、モノ、カネの重要データをレガシーシステムのなかに格納したままでなく、これらのデータを利活用できる環境を整えることが必要である。また、クラウドのテクノロジーを使って、定期的にアップグレードし、セキュリティを強化することが大切である。一方で、コンシューマITが驚くほどの進化を遂げたように、今後は、エンタープライズの技術進化が進むことになる。そのドライバーがAIである。劇的な変化と進化が起こることになる。日本の企業は5~7年でシステムをアップグレードしてきたが、そのままの状況では技術的負債がたまるだけである。そうたことが起こらないように、オラクルは、進化を享受するシステムを提供しつづけないといけない」と述べた。

2023年度 日本オラクルの重点施策の成果を振り返る

 また2023年5月に終了した2023年度については、「ミッションクリティカルシステムの近代化」、「ビジネスプロセス全体のデジタル化」、「安全、安心で、豊かな暮らしを支える社会公共基盤の実現」、「社会・企業活動のサステナビリティを加速」、「ビジネスパートナーとのエコシステムを強化」の5つの重点施策に取り組んできたことを振り返る。

2023年度 日本オラクルの重点施策の成果

 そして、「日本の多くの企業において、OCIを活用したミッションクリティカルシステムの近代化が進むとともに、Oracle Fusion Cloud Applications Suiteにより、業界や企業規模を問わずに、ビジネスプロセスのデジタル化に貢献することができた1年だった。中央省庁に加えて、地方自治体向けのガバメントクラウドを推進し、ISVや地場パートナー、地方公共団体に対して働きかけを行い、地方自治体に強いパッケージベンダーとの連携強化も図った。また、スマートシティの実現などに向けた活動も強化した。パートナーによるOracle Cloudの資格保有者は前年比7割増となっている。オラクルがクラウド事業を本格化したのは、大阪にデータセンターを設置した2020年度からであり、まだクラウド技術者が足りていない。今年度も技術者拡大や、パートナーへのOCIの導入および採用を推進していきたい」と述べた。

 また、米Oracleが発表した2023年度の業績についても説明。売上高が前年比22%増の500億ドル(約7兆円)となり、「数年前までは売り上げ成長に苦労していたが、2023年度は高い成長により、好調な業績となった。成長エンジンはクラウド事業であり、第4四半期はクラウド全体では前年同期比55%増、そのうち、IaaSおよびPaaSが77%増、SaaSが47%増となっている。競合他社に比べて大きな成長を遂げ、シェア拡大につながっている。時価総額でみると、B2Bに特化したIT企業としてはナンバーワンである。Oracleが元気を取り戻してきた。日本オラクルも同様に好調であり、過去最高の売上高を達成している。データベースを中心としたソフトウェアライセンスが順調に推移し、クラウド事業が大幅に成長している」と語った。

米Oracle 2023年度の事業概要