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IaaS・PaaS・SaaSで前年比2倍以上の実績を残したい――、日本オラクル・三澤智光社長

日本オラクルの新年度事業戦略を説明

 日本オラクル株式会社は8日、2021年6月からスタートした同社新年度(2022年度)の事業戦略について説明した。

 日本オラクルの三澤智光社長は、重点施策として、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速」、「ミッションクリティカルなシステムのクラウド化」、「次世代社会公共基盤の実現支援」、「パートナーエコシステムの拡充」の4点を挙げ、「2022年度は、日本のクラウドトランスフォーメーションをより加速できると確信している。IaaS、PaaS、SaaSでは、前年比で倍以上の実績を間違いなく残したい」と話した。

 同社では2022年度の全社業績見通しとして、2021年度の売上高2085億円に対して、1~4%増を掲げている。

2022年度の重点施策

 三澤社長は、「アフターコロナとともに、日本の経済は再加速することが想定され、それに向けたDXが重要になる。スピード感を持ち、コストを抑え、DXを実現するには、Oracle Cloud Applicationsがお役に立てる。レガシーのモダナイゼーションを実現し、コスト削減を実現することを日本市場に対してコミットする」と述べた。

日本オラクル 執行役社長の三澤智光氏

 また、「日本のミッションクリティカルシステムのクラウド化はまだ進んでいない。それを断言できるのは、日本のミッションクリティカルを支えてきた実績がオラクルにあるからだ」と前置き。

 「その一方で、安易なクラウド化やオープンソース化による弊害が山のようにある。汎用クラウドが得意なのはサービスを分散化させ、データベースを分散化させ、スケールアウトさせる点だが、ミッションクリティカルシステムの特性は、ヒト、モノ、カネが持つ複雑なエンティティを集中することであり、クラウドが得意する特性とは明らかに違う」と指摘する。

 「また、集中処理をするということはデータベースに重たいワークロードを要求することになる。これをクラウドに移行すれば無理が生じ、膨大なアプリケーションの開発、改修コストが発生したり、性能が発揮できないために、より性能が高い、高価なクラウドを導入したりといったことが発生し、予算が大幅に超過するといった問題が起こる。あるいはクラウド化を途中であきらめたり、オンプレミスに回帰したりすることになる。こうした事態を何件も見ている」とコメント。

 その上で、「これを解決するのがOCIである。アプリケーションの改修が必要なく、性能を担保し、コスト削減も実現できる。Amazon RDSは数万IOPSの性能にとどまるが、OCIでは最大2400万IOPS以上の性能になる。どちらが基幹システムのクラウドに向いているのかが理解してもらえるだろう。今後、OCIの特徴をもっと理解してもらうことが大切である。OCIを活用することで、基幹システムの自動化が促進され、運用コストが削減できる。それが理解されることで、基幹システムのクラウド化は止まらなくなるだろう」と、自社クラウドサービスの強みを強調した。

 このほか、「9月のデジタル庁創設にあわせて、公共システムのDXも重要なテーマになる。ここに貢献したい。既存公共システムの多くを支えてきた実績があるオラクルにとって、これは使命である」とも語る。なおOCIは、ISMAPへの登録が完了しているという。

 さらに、「これらの3つの重点施策を推進する上で、パートナーとの連携は不可欠である。一緒になって、重点施策を完遂したい」としたほか、「IaaS、PaaSにおけるエコシステムが弱いと考えている。OCIのインテグレーションが得意であるというパートナーは増えているが、こうしたパートナーをより充実させたい。コストコンシャスなサービスを提供しているクラウド専業パートナーのリクルートも重要である」とする。

 なお、パートナー向けにはインセンティブ制度の見直しを随時実施しており、「2022年度は手厚い仕組みが用意できる」との考えも示した。

新たな支援サービスやプログラムで顧客を支援

 これらの重点分野への取り組みを推進する上で、新たに発表したのが、「Oracle Cloud Lift Services」である。

 オンプレミスで稼働しているワークロードをOracle Cloud Infrastructure(OCI)に移行する際に、さまざまなノウハウを無償で支援するサービスであり、「クラウド移行の経験が足りない企業に対して、日本オラクルのサービス部門が蓄積したサービスを提供し、ケーススタディ支援、フィジビリティスタディ支援、PoC支援、早期立ち上げ支援を行う」という。

 ミッションクリティカルシステムにおいて、オンプレミスで稼働しているOracle DatabaseをOCIに移行したり、VMware上で稼働しているワークロードをVMware on Cloudに移行したり、ハイパフォーマンスコンピューティングのクラウド移行を支援したりする。

Oracle Cloud Lift Services

 さらに、OCIを100円利用すると、翌年にサポート費用を25円削減するOracle Support Rewardsの提供、アプリケーションのサポート費用をクラウドアプリケーションの利用料に充当するCustomer to Cloud、OCIのサービスを柔軟に利用できる料金体系であるUniversal Credit、クラウド、オンプレミス双方で利用可能なライセンスであるBYOLを提供していることも示した。

Oracle Support Rewards
既存の企業資産を保全し柔軟にクラウド化できる仕組み

 三澤社長は、「オラクルは、SaaSであるOracle Cloud Applicationsと、IaaSおよびPaaSであるOracle Cloud Infrastructureの2つのブランドでクラウドサービスを提供している。SaaS、IaaSおよびPaaSをハイパースケールの仕組みで提供している唯一のベンダーである」とアピールする。

SaaSとIaaS/PaaSをハイパースケールの仕組みで提供している唯一のベンダーだという

 「Oracle Cloud Applicationsが選択されている理由は、費用対効果が高く、短期間での導入が可能であることだ。ERPの最大の課題はアップグレードのコストである。そのたびに数十億円の費用がかかり、さらにそれを支えるハードウェアのメンテナンスコストも膨大になる。Oracle Cloud Applicationsは、ピュアSaaSのアーキテクチャーであり、基幹システムにアップグレードの考え方を無くし、インフラやメンテナンスの考え方もなくすことができる。また、AIによる自動化や、顧客が意識せずに定期的なアップグレードができるメリットと、ハイパースケールのIaaS、PaaSであるOCIの上で動作するセキュアな環境である点が特徴だ。オンプレミスのアーキテクチャーのソフトウェアをAWSに乗せて、それでクラウド化としているERPとはまったく異なる」とした。

 その上で「今後、オラクルのSaaSは、大型のERPやSCMオルタナティブとして認知され、安くて、速くて、便利だという認知を高めていく必要がある」との課題も示す。

 またOCIについては、「2018年にすべてが完成した新たなクラウドサービスであり、20数年前に作られたアーキテクチャーをもとに増改築したサービスとは異なる」と述べ、「OCIは、費用対効果が高く、速く、セキュアである。ミッションクリティカルなシステムへの移行が可能であることや、自律化やハイブリッドクラウドへの対応、クラウドネイティブアプリケーションの構築にも適しており、それが選ばれている理由である」とした。

 その一方で、「顧客満足度を改善していかなくてはならない。これまで外国人社長が続いていたことで、オラクルにモノを申したいというお客さまやパートナーが多かったのも事実だろう。私に対しては、日本語で文句を言えるので、少しはストレス解消になっているのではないか(笑)」とコメント。

 「実際、辛辣な言葉をもらっている。襟を正さなくてはならないのは、日本の重要な基幹システムのかなりの部分でオラクルのテクノロジーを使ってもらっているという点である。ただ、これらを塩漬けのままにしておくことはできない。DXを実現するためには、基幹システムのヒト、モノ、カネの情報が重要になってくる。これらを自在に操ってもらうためのモダナイズを、クラウドのテクノロジーを使って支援していくのが、オラクルのミッションである。ここに、着実にまじめに取り組んでいくことで満足度を高めたい」との考えを示した。

 また、「ハイパースケーラーの比較が行われるなかで、日本においては、AWSやAzureは根づいているが、GCPに後塵を拝しているとはまったく思ってない。OCIには、巨大なSaaS、IaaS、PaaSの事例がある。スーパーミッションクリティカルの事例があるのもオラクルならではといえる。エンタープライズ市場では、OCIおよびOracleのSaaSがトップクラスと言われるようになりたい」と述べた。

 さらに三澤社長は、「私たちのミッションは、人々が新たな方法でデータを理解し、本質を見極め、無限の可能性を解き放てるように支援していくことである。2022年度の戦略は、このミッションに基づいたものとし、着実に実行していくことになる。単にお客さまに寄り添うのではなく、ITベンダーとしてアドバイスができるトラステッドテクノロジーアドバイザーになりたい」とした。

Oracle Cloudの採用が加速

 一方、同社2021年度(2020年6月~2021年5月)を振り返り、「Oracle Cloudの採用が飛躍的に加速し、大きな広がりを残せた年であった」とし、3つの観点から導入事例を紹介した。

 ひとつは基幹システムでのOracle Cloudの活用である。

 三井住友フィナンシャルグループでは、200社以上のグループ企業に対して、Oracle Cloud ERPの導入を決定。グループ共通の会計、購買システムを実装し、コスト構造の見える化を推進し、踏み込んだコスト削減を図ったという。「金融グループで200社以上におよぶ共通システム化は日本では例がない」。

 またNECでは、営業部門やサポート、メンテナンス、開発部門が持つ顧客データを統合し、デジタルマーケティングに活用。その基盤にOracle Unityを採用した。野村総合研究所では、Oracle Dedicated Region Cloud@Customerをデータセンターに実装し、日本の金融規制に迅速に対応できる体制を構築。金融機関に対するミッションクリティカルサービスを、パブリッククラウドのアーキテクチャーで提供している。エディオンでは、店舗、在庫など12の基幹システムをオンプレミスからOCIに移行したという。

 「これまではクラウドでは無理だと思われていた基幹システムにおいて、クラウド化が実行できた1年であった」と総括した。

基幹システムでのOracle Cloud活用の広がり

 2つめには、Autonomous Databaseの採用が進展したことだ。

 オカムラではOracle Autonomous Data Warehouseをデータ分析基盤に採用。32%のコスト削減と柔軟なリソースの増減、レスポンスタイムを60分の1に短縮することができたという。

 オムロン阿蘇では、わずか1カ月で生産ラインの見える化の実現と70%のコスト削減を達成。リージョナルマーケティングでは、190万人の会員数をほこるポイントカードEZOCAの管理においてAutonomous Databaseを採用した。

 防災科学技術研究所では、防災情報サービスプラットフォーム基盤整備支援業務にOCIを採用。コンバージド データベースにより、RDBMS、JSON、Spatial、Graphといった各種ファイルシステムをシングルインターフェイスでアプリケーション開発することが可能になり、開発コストの削減や短期間でのカットオーバーを実現したという。

クラウドネイティブな自律型データベース活用の広がり

 3つめがISVアプリケーションにおけるOCIの活用拡大である。

 ワークスアプリケーションズやスーパーストリーム、ラクラス、Cybereasonが、各社製品の基盤にOCIを採用。「最新のアーキテクチャーで作られたOCIは、他社のクラウドに比べて、安くて、速くて、セキュアであるという点が評価された。ISV各社が、クラウドネイティブのアーキテクチャーの実装によるサービスの向上、AIを活用した高度な分析サービスの提供につなげることができる」とした。

 そして4つめが、社会貢献を支える基盤としてOracle Cloudの採用が進展したことだ。NTT西日本、小田急電鉄、三島市、富良野市において、スマートシティや地域活性化、住民サービスの向上などにOCIを活用しているという。

ISVアプリケーションでのOCI活用の広がり
社会貢献を支える基盤としての広がり

 一方、グローバルでの導入事例についても触れた。

 ドイツ銀行では、数万のデータベースを活用することによって生まれていたレガシーのさまざまな課題をクラウドで解決。Australian Data CentresではOracle Dedicated Regionを活用して政府向けサービスを提供した。

 Red Bull Racing Hondaや英国プレミアリーグのバックエンドシステムにもOCIが採用されるなど、スポーツの領域でも活用が増加しているという。

グローバルでもさまざまな用途でOracle Cloudの活用が広がる

 なお、サスティナビリティへの取り組みについても説明。2025年までに、すべてのOracle Cloudと、オラクルのファシリティにおいて、100%再生可能エネルギーでの稼働を目指していることを紹介した。

 日本では、環境省と連携し、Oracle Utilities Opowerにより、各家庭で使用している電力使用状況をレポート化し、30%の消費者に対して、カーボンニュートラルを考えるきっかけを促進。また、2.8%の電力削減に成功し、4.7万トンのCO2削減にも貢献したという。