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SaaSで顧客のDXを支援可能――、日本オラクルがSaaS事業の最新動向を説明

 日本オラクル株式会社は12日、同社のSaaSへの取り組みについて説明した。

 同社では、「インダストリーを軸とした体制構築」、「Oracle EBSおよびPeopleSoftの顧客のSaaSへの移行促進」、「パートナーとの協業ビジネスのさらなる展開」を、今年度のSaaS事業の基本戦略に掲げているが、「インダストリー別の組織体制への再編が終わり、業種ごとのナレッジの蓄積や、業界ごとの顧客への提案が進んでいる。また、既存顧客との関係再構築を強化しており、あらためてあいさつまわりから行って、課題を聞いたり、クラウドシフトを促す提案をしたりしている」(日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMクラウド事業本部の善浪広行氏)という。

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMクラウド事業本部の善浪広行氏

 さらに、「大手企業でも基幹システムへのSaaS採用が始まっており、そうした動きにあわせて、パートナーとの連携を強化した。これまでのように、作り込みを進展させるためのパートナーシップではなく、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を一緒に推進できる体制を構築している」と、現状の取り組みを説明した。

 また自社の強みについて、「ビッグバンアプローチによる取り組みにより、全社規模でトランスフォーメーションしている事例や、特定業務領域や海外拠点からDXを開始するといった、フェーズによる展開を進める事例もある。顧客が置かれている環境がそれぞれ異なり、かけられるリソースも異なる。さまざまなアプローチを提案できる点は日本オラクルのSaaSの強みになる」とした。

 ここでは、通貨処理機などをグローバルで展開するグローリーの事例を紹介している。決済手段の多様化や、キャッシュレス化へのシフトなど急変する経営環境において、新たな事業を創出する基盤を作り上げることを目的に、会計、生産、見積もり、販売、サブスクリプションの管理に至るまでのシステムを刷新。業務効率化や意思決定のための情報の一元化だけでなく、付加価値が高いビジネスを行うための基盤を構築することができたという。

グローリーの事例

 また、日本オラクル クラウドアプリケーション事業統括 事業開発本部 ERP/SCM企画・推進担当ディレクターの中島透氏は、SaaSにおけるDXへの取り組みについて説明。業務の効率化を推進する「デジタルエクスペリエンス」の強化、洞察や意思決定を支援する「インテリジェントプランニング」、業務プロセスのバリエーションを提供する「業務機能の進化」、業界固有の要件である「業界への対応」といった観点から解説を行った。

日本オラクル クラウドアプリケーション事業統括 事業開発本部 ERP/SCM企画・推進担当ディレクターの中島透氏

 具体的には、経営管理や会計領域において、100以上の機能を強化したことを紹介。デジタルエクスペリエンスの強化では、空欄や不適切なコードがある管理項目にAIが適切な値を提示したり、MLが異常値を検知して、その対応結果を学習したりする仕訳の自動判断機能のほか、エラーハンドリングの自動化や、インシデント追跡が可能なセキュリティダッシュボードを活用した、リモートワークフォースにおけるセキュリティコントロール機能、画面操作アシスト(EPMガイデッド・ラーニング)などを提供していると述べた。

 またインテリジェントプランニングでは、Oracle EPM Suiteを活用して、予測モデルにより、高速で正確なプランニングを自動で策定するほか、Oracle Fusion Cloud EPMの計画や予算と、Oracle Fusion Cloud ERPのプロジェクト管理の連携によって、より高度なプロジェクトシナリオの管理が行えることなどを示している。

経営管理・会計領域の強化ポイント
デジタルエクスペリエンスの強化

 このほか、サプライチェーン領域の強化ポイントとしては、デジタルアシスタントなどの機能を強化していることに触れた。

 同領域におけるデジタルエクスペリエンスでは、チャットボットによる検索工数の大幅削減などにより、業務遂行負荷の軽減につなげられること、インテリジェントプランニングでは、MLアルゴリズムを活用したプランニングアドバイザーにより、高度な需要予測をもとにした新製品の投入タイミングを最適化できることなどを紹介。ディスクリート型生産やプロセス型生産に加え、プロジェクト型(セイバン)生産管理にも、単一システムで対応できるようになったことも示している。

サプライチェーン領域の強化ポイント

 日本オラクルの中島氏は、「業務に溶け込んだ最新テクノロジーの適用を行っているのが特徴であり、買収した企業の製品も、一度、ソースコードをばらして、マスターはOracle Fusion Cloud ERPを参照し、データをつなげ、業務連携ができるようにしている。その結果、業務間を渡る意思決定や、自動化できるような新機能を搭載できている。今後追加される機能や新たなテクノロジーも利用できる」などとした。

 一方、善浪氏は、「時代が変化するなかで、進化するアプリであるSaaSがより求められている。2023年度には、国内エンタープライズERP市場において、9割以上がクラウドになると予測されており、中でもSaaSが6割を占めるとの予測が出ている。十数年前にCXがクラウド化したように、基幹システムがクラウド化する流れが来ている。新型コロナウイルスの影響で、エンタープライズERPのクラウド化の動きはさらに加速するかもしれない」と前置き。

 「当社がこだわっているのはピュアSaaSの部分である。10年以上をかけて、毎年、多くの研究開発投資を行い、多くのユーザーの声を取り入れながら、いいところ取りで、クラウドネイティブのアプリケーションに作り直してきた。3カ月に一度、新たな機能を提供し、時代の流れにおいても陳腐化しない機能や仕組みを提供できる。フロントシステムのCXからバックエンドのERP、人事までを網羅し、これらの業務がシームレスにつながり、そこにAIなどの最新のテクノジーが組み合わさっているのが特徴だ。苦労して取り組んできたものが、ここにきて成果になってきた。オラクルがやってきたことは間違っていなかったと判断している」と、その特長をアピールしていた。

 また、「時代の変化が激しいために、As-Isの定義ができても、To-Beの定義ができないという声が多く、ビッグバンアプローチの要件定義ができないという声もある。だがオラクルであれば、こうした課題も解決できる。業務にあわせてAIなどを随時取り込むことが可能であり、標準機能を拡充することで作り込みを抑制できる。これはコストに跳ね返ってくるものであり、競合他社の見積もりに比べて導入コストが圧倒的に違う。特に、インターフェイスやBIの実装ではかなりの差が生まれる。オラクルはSIでもうけようとは考えておらず、クラウドを導入してもらうことで継続するビジネスモデルに移行している」と、価格面について優位性があることも強調した。

DX推進を支えるOracleのソリューション
『短期間・低コストでDXの成果を獲得』と『将来の変化に追随可能なシステム』が選定のポイント