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日本オラクルが2022年度のSaaS重点施策などを説明、顧客との多角的なエンゲージメント強化などに取り組む
2021年8月6日 06:00
日本オラクル株式会社は5日、SaaSビジネスの取り組みについて説明。同社2022年度(2021年6月~2022年5月)のSaaS事業の重点施策として、「真のデジタルトランスフォーメーション支援」、「顧客との多角的なエンゲージメントの強化」、「パートナーエコシステムの拡充」、「従業員キャリアプランのサポート」の4点に取り組む考えを示した。
「真のデジタルトランスフォーメーション支援」では、Oracle Cloud Applicationsによって、業務の変革に貢献する姿勢を強調。日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏は、「SaaSを活用する企業が増加しないと日本の競争力が落ちるという声がユーザーから挙がっている。SaaSベンダーとして、10年先の各業界の動きをとらえるなど、少し先のことを考えながら顧客と会話ができる組織にしたい。そこに投資をしていく」と述べた。
「顧客との多角的なエンゲージメントの強化」では、新たにOracle Cloud Applicationsユーザー会を発足することを明らかにした。
同社には、23年間の歴史を持つオンプレミスのOracle Applicationのユーザー会「OATUG(Oracle Applications & Technology Users Group)」があり、現在、343社、約1000人が参加しているが、このなかにクラウドのユーザー会を、2021年10月を目標に発足。ユーザー間の情報共有やグローバルユーザーとの交流などの活動を行っていくという。
また、米本社の製品開発部門との連携強化を図り、顧客エグゼクティブとの早期および長期の関係構築、開発チームの顧客プロジェクトへの参画、オンラインサイトのCustomer Connectを活用した顧客の声を反映する仕組みの活用強化などを挙げた。「現在、新機能の約8割が、顧客の声をもとに実装されたものである」などと述べ、日本のユーザーからの声も積極的に反映させる考えを示した。
「パートナーエコシステムの拡充」については、アライアンス部門と連携しながら、SaaSの営業部門内に、新たにパートナーエコシステムを構築する組織を発足する。
「SaaSビジネスの拡大にあわせて、パートナーの拡充が必要である。正しいDXを日本で推進するためには、クラウドネイティブに実装できるパートナーや、日本オラクルがカバーできない領域のソリューションを提供できるパートナーとの連携を強化したい。新組織にはシニアメンバーをそろえており、日本のDXをともに牽引するためのスキルや体制確立の支援を行う」とコメント。
「近江商人の世間良し、売り手良し、買い手良しに加えて、パートナー良しが加わる四方良しが、日本オラクルのSaaSビジネスの姿になる」などとした。
また、「従業員キャリアプランのサポート」では、若手社員の積極的な採用に加えて、8月1日付での組織変更にあわせ、新卒6年目の女性社員を営業部長に登用するなど、人事面での改革も進めているという。
オラクルのSaaSが選ばれる理由は?
一方、同社2021年度(2020年6月~2021年5月)の国内SaaSビジネスの業績は、2桁成長を達成。日本オラクルの善浪執行役員は、「オラクルのSaaS採用の動きが飛躍的に加速し、多様な活用へと広がっている。幅広いアプリケーションを提供でき、DXの推進に適していること、ピュアSaaSとして短期導入を実現したり、伸縮性があるシステム拡張が可能であること、四半期ごとにアップデートしており、環境、社会、ガバナンス(ESG)への関心の高まりといった時代の変化に追随できることが、オラクルのSaaSが選ばれる理由である」とした。
日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 事業開発本部ERP/SCM企画・推進 担当ディレクターの中島透氏は、「オラクルのSaaSの構造上の特徴は、さまざまなトランザクションデータを単一の統合データモデルに集約していること、SFAやサプライチェーン、会計などの業務領域の網羅性があること、ダッシュボードをあらかじめ組み込み、データを見つけ出しやすいユーザー利便性を提供していることのほか、業務プロセス連携やデータ分析による企業活動の高度化が可能である点」と説明。
「グローバル進出への対応、ビジネスモデルの変革、異業種からのビジネス参入の脅威や自らの新規参入など、ビジネス環境が大きく変化するなかで、業務の効率化、全体最適化、迅速な意思決定、顧客満足度の向上、ITインフラ投資の削減、非財務情報の活用という観点から、Oracle Fusion Cloud ERPの採用が進んでいる。ガートナーでは、クラウドERPは、ハイブリッドなアプローチから、単一のクラウドERPスイート上での運用に移行していると指摘。これはOracle Fusion Cloud ERPの特徴そのものである」などと述べた。
ガソリン計量機や給油施設などを展開するタツノでは、既存ビジネスのサービス化とカーボンニュートラル社会に対応した事業変革を支える基幹システムに、Oracle Fusion Cloud Applications製品群を採用。データ中心のアーキテクチャーとともに、CX、SCM、会計などを網羅する特徴が評価されたという。
三井住友フィナンシャルグループでは、グループ200社の経理業務の効率化、邦銀初となるシェアードサービスを活用したコスト低減と統制の強化のために、Oracle Fusion Cloud SCM/ERP/EPMを採用。グループ全体の業務プロセスを標準化し、単一のグループ経営基盤の整備を推進し、最適な意思決定にも効果が出ているという。
そのほか、トヨタグループのWoven Planetでは、Cloud ERPをわずか2カ月で導入。鹿島建設では人材育成のプラットフォーム構築に採用、NECでは顧客情報をOracle Unityを活用して、統合デジタル基盤を構築するといった事例が出ている。
日本オラクルの善浪執行役員は、「次の時代の変化に向けて、企業システム全体をオラクルのSaaSに任せたいという動きがある。例えば、顧客からは、5年後、10年後に、もう一度、社内からエースとなる人材を集め、ERPプロジェクトをやる自信がないという声が上がっている。SaaSによって、時代の変化にあわせたアプローチをする方が、企業体力や投資の点でも適切である。AIや自動化を取り入れることができる点もSaaSが最適であるという考えが広がっている」と指摘した。
Oracle Fusion Cloud ERP/EPMの最新機能
Oracle Fusion Cloud ERP/EPMの最新機能についても説明した。
会計領域では、四半期ごとに100以上の機能強化を継続的に進めており、最近ではAIや機械学習の機能を内蔵。従来とは異なる水準での効率化やインサイトの提供を実現。洞察や意思決定を支援するインテリジェントプランニングや、自動予測機能などもリリースしているという。
新機能のひとつであるIDR(インテリジェント・ドキュメント・レコグニション)は、メールで送られてきた帳票データを読み取り、ERPデータ登録を行うAIを活用した次世代OCR機能。オラクルでは、インドにある自社のシェアードサービス拠点で活用。買掛、未払金の月次締め処理時間を30%削減したという。
また、過去のトレンドや傾向値から、将来を予測するプレディクティブ・プランニングは、頻繁に機能強化が行われており、予測精度の向上、ダッシュボードの進化などを通じて、最適な予測を実現。今後はさまざまな業務領域に活用できるようになるとのこと。
Oracle Fusion Cloud SCMでは、標準機能を強化。さまざまなビジネスモデルに対応できるように進化している
Dual UOMではひとつの材料を2つの単位で評価したり、販売管理では直販、代理店販売、ECサイトといったさまざまなチャネルからの受注情報を集約し、供給の最適化などに反映できるという。
新たに追加されたプロダクション・スケジューリングでは、分秒単位での製造スケジュールを生成。サプライプランニングの結果をもとに、工程への投入順序を調整し、スピードを重視したり、急に発生したビジネスイベントにも対応することができる。
日本オラクルの中島ディレクターは、「新機能は、これからも四半期ごとに追加されることになる。2~3年前に比べてSaaSの優位性が広く認められるようになっている。オラクルのSaaSにより、顧客のビジネスを支援していきたい」とした。