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オラクルが2023年度のSaaS事業戦略を発表、顧客やパートナーを支える体制を強化へ

世間、顧客、オラクル、パートナーの“四方良し”で事業を展開

 日本オラクル株式会社は8日、クラウド・アプリケーション事業戦略について説明した。

 2022年6月からスタートした同社2023年度の重点施策として、「真のデジタルトランスフォーメーション実現を支援」、「顧客との多角的なエンゲージメントの深化」、「パートナーエコシステムの強化」、「顧客およびパートナーを支える体制の強化」の4点を挙げる。

2023年度 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業 重点施策

 日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏は、「2022年度は、日本におけるOracle Cloud Applicationsの採用がさらに加速し、SaaSビジネスが2桁成長を継続した。ピュアSaaSがキャズムを超えた1年だった」と発言。「2023年度は、これまでの施策をさらに深化させ、お客さま、パートナー、社会へのさらなる貢献をする1年にし、世間(ソサエティ)、買い手(カスタマー)、売り手(オラクル)、仲間(パートナー)の『四方良し』でSaaS事業を展開していく」と述べた。

四方良し
日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏

 4つの重点施策のうち、「パートナーエコシステムの強化」と「顧客およびパートナーを支える体制の強化」に、特に力を注ぐという。

 さらに、米Oracle、Oracle Applications Product Development担当のスティーブ・ミランダ エグゼクティブバイスプレジデントが、Oracle Cloud Applications部門における2023年度の方針として、「Designed for Change. Built for You.(われわれのサービスは、顧客の変革のためにあり、あなたの成功のためにある)」を打ち出したことに触れながら、善浪常務執行役員は、「最近になって本社開発部門からは、カスタマーサクセスという言葉が多く聞かれるようになってきた。SaaSは継続的に利用されないと意味がない。その点では、健全なマインドセットになってきたといえる。開発部門自らがお客さまの成功にコミットする姿勢が定着してきた」などと述べた。

 日本におけるSaaSビジネスの成長を裏づけるように、2022年度には、大型のSaaS導入案件が相次いでおり、パナソニックが会計基盤の刷新に伴い、オラクルのクラウドERPを採用。本田技研工業では間接材の集中購買にクラウドERPを採用したほか、大手製造業などでは人財管理基盤の構築や、サプライチェーンの構築、CXへの活用にオラクルのSaaSを活用しているという。

 2022年6月以降の発表事例でも、三井住友海上火災保険やあいおいニッセイ同和損害保険などが経費管理の効率化を目的にオラクルのクラウドERPを採用。さらに、他社からの大型リプレース案件の事例もあったとのこと。「お客さまの導入意識が変わっており、それに対するパートナーの姿勢にも変化がある。2023年度も国内企業の事例化にこだわり、SaaSで日本のDXを変えるというエコシステム化の実現を本格化していく」と述べた。

2022年度Oracle Cloud Applications採用のさらなる加速と多様な活用
Oracle Cloud Applications採用のさらなる加速

 2023年度の重点施策のひとつめに挙げた「真のデジタルトランスフォーメーション実現を支援」では、「次世代の経営プラットフォーム」と、「プロジェクトを成功させる導入方法論」、そして、「パートナーと一体化した支援体制」に力を注ぐとする。

 次世代の経営プラットフォームは、いくつかの要素で構成される。

 「Complete Suite」は、エンドトゥエンドで業務領域をカバーし、フロントからバックオフィスまでベストオブブリードのアプリケーションを完全にスイート化するとともに、コンポーザブルなアーキテクチャとして提供するもの。「Best Technology」では、ミッションクリティカルな業務を支えるために求められるパフォーマンスやセキュリティ、可用性を備えたOracle Cloud Infrastructure(OCI)が、Oracle Cloud Applicationsに最適なインフラストラクチャとしての役割を果たすとした。

 また、「New Applications Platform」として、ERPやSCM、HCMなどに分野において、最新のテクノロジーを駆使し、顧客のデジタル化ニーズに対応することができる点を示した。

真のデジタルトランスフォーメーション実現を支援

 一方、プロジェクトを成功させる導入方法論では、変革に向けたビジネスプロセスのひな型となる「Modern Best Practice」、オラクルコンサルティングで活用しているDX実現型のアプリケーション導入手法である「True Cloud Method」、継続的なDXを推進する支援サービスである「Cloud Adoption Service」を挙げ、「クラウド導入に必要なものを取りそろえ、これをより進化させるとともに、ノウハウをパートナーに提供し、日本における真のDXを定着させる」などとした。

オラクル独自の導入方法論

 「パートナーと一体化した支援体制」では、これらのテクノロジーやプラットフォーム、ビジネスプロセスモデル、導入方法論をパートナーにも移転することを目指し、エコシステムのさらなる拡大や、イネーブルメントの強化、各種ワークショップなどを行う。

 「DXのひとつとして、多くの企業にとって重要なテーマがサステナビリティである。ここでは、ビジネスプロセス全体の可視化や、SaaSによって必要なところを順次取り込んでいく継続的な取り組みが大切である。オラクルは2008年にサステナビリティに関する基本戦略を打ち出しており、SX(Sustainability Transformation)に関しては、長年のノウハウ蓄積がある。この実績をパートナーや顧客に展開できる。加えて、米OracleのChief Sustainability OfficerのJon S. Chorleyは、SaaS開発部門に所属しており、サステナビリティに関する課題を製品開発に反映しやすい環境を実現している」などと述べた。

エンドトゥエンドで、サステナビリティ経営(SX)の実現をサポート

 さらに、米Oracleのミランダ エグゼクティブバイスプレジデントと定例会議を設けている数少ない国のひとつに日本が含まれていることを明かし、強力な支援体制を得られやすいことを強調。「日本において、Customer-First Mindsetを実践する上で、クラウドを活用したビジネスの成功を支援するカスタマー・サクセス・マネージャーを拡充していく。また、重要プロジェクトにおける本社開発部門からの直接サポートや、パートナーに対する開発部門の支援、ユーザー会への支援などが行われている」と語った。

 重点施策の2つめとなる「顧客との多角的なエンゲージメントの深化」では、具体的な取り組みとして、ユーザー会の拡大を目指すという。

 日本オラクルでは、2022年度に、これまでオンプレミスが対象だったユーザー会である「OATUG」に、新たにSaaSのユーザー会を発足。すでに、ERP/EPM Cloud SIGとCX Cloud SIGが活動を開始。2023年度には、Oracle Cloud HCMに関するユーザー会を発足する予定であり、これらの活動を通じて、日本のユーザーの声を本社の開発部門にも反映させていくという。

 また、本社製品開発チームによるサポート体制を強化。本社開発部門に、日本市場との橋渡しを行うための専任の日本人社員をアサイン。「オラクルコンサルティングのエース級の人材をアサインできた。日本の要件に基づいた新機能の実装などにつなげたい」とした。

ユーザー会(Cloud SIG)の拡大、本社製品開発チームとの連携強化

 重点施策の3つめである「パートナーエコシステムの強化」では、エコシステムのさらなる拡大に取り組む。2022年7月に日本で開催した「FY23 OPN(Oracle Partner Network) Japan Partner Kickoff」イベントには、オンライン参加を含めて約150社のパートナー企業から約800人が参加。「SaaSに対する熱量が高まっており、大きな盛り上がりをみせた」という。

 また、イネーブルメントの強化を重要なテーマに位置づけ、クラウドビジネスモデルの紹介や、業務や製品に関するトレーニングの提供を行う「オンボーディング支援」、日本オラクルのプリセールス技術部門によるワークショップの提供や、業界・業種ごとの提案アプローチ、業務知識のトレーニングを新規に提供する「スキル領域拡大支援」、オラクルコンサルティングによるプロジェクト支援や導入ノウハウの共有、CoEの立ち上げ、人材育成支援などを行う「パートナープライム支援」、サステナビリティやESGなどの社会課題をテーマに、中長期的なビジネスづくりに取り組む「次期ビジネス機会発掘」を推進する。

パートナー・エコシステムの強化

 4つめの「顧客およびパートナーを支える体制の強化」では、事業戦略部門の新規設立や、優秀な人材の積極的活用に取り組むとした。

 「2023年度は営業力の強化よりも、営業を支援するコンサルティング、カスタマー・サクセス・マネージャー、SEに対する投資を深めていく。これが『四方良し』に向けた正しい道であると判断している」と述べ、カスタマーサクセスの体制強化のほか、サステナビリティやESGなどの社会課題をテーマとした顧客支援を行う事業戦略部門の新設、インダストリーソリューションやエンド・トゥ・エンドソリューションの展開強化のほか、グローバルソリューションの日本への展開を行うインダストリーソリューション推進組織の新設、優秀なタレントやエンジニアの積極的採用と活用、育成を進めるという。

顧客およびパートナーを支える体制の強化

 「オラクルはSaaSで勢いがあることをとらえて、一緒に仕事をしたいという人が増えている。ライバル会社の日本法人社長経験者が一緒にやりたいと言ってきたケースもある」などと述べ、外部からのタレント獲得が積極化していることを示した。