ニュース

クラウドが導く“Beyond Finance”――、日本オラクル、SaaSによる予算管理サービスを提供へ

 日本オラクル株式会社は27日、全社的な予算管理ソリューションをSaaSとして提供する「Oracle Enterprise Planning and Budgeting Cloud Service(Oracle EPBCS)」を発表した。

 すでにグローバルで多くの実績をもつ旧Hyperionをベースにしたクラウドソリューション「Oracle Planning and Budgeting Cloud Service(Oracle PBCS)」を拡張したサービスで、各部門ごとの円滑な予算策定を支援しつつ、全社共通の基盤を利用することにより、各部門の事業判断と組織全体の最適化を同時に実現することを目指す。

 日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド事業本部長 桐生卓氏は「これからの予算管理には経理だけでなく各部門の視点も必要。多くの顧客の活用実績をベストプラクティスとして織り込み、SaaSとして提供するOracle EPBCSは"Beyond Finance"の時代にふさわしい、スピーディで精度の高い予算管理を実現することで、企業の変化対応力を強化する製品」と強調する。

日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド事業本部長 桐生卓氏

 Oracle EPBCSは基盤サービスとなるOracle PBCS上で構築されており、以下の4つのモジュール(ベストプラクティス)を提供する。モジュール単体でも、4モジュールまとめてでも導入できる。モジュール導入後の拡張も可能。価格は1ユーザーあたり月額250ドルからで、最小ユーザー数は10ユーザーから。

Oracle EPBCSはクラウドEPM(旧Hyperion)の基盤上で提供されるモジュール。予算管理や要因戦略などをSaaSとして手軽に利用することが可能に
Oracle EPBCSはモジュール単体での導入はもちろん、複数のモジュールを導入して連携させることも、段階的な導入も可能となっているも

・Workforce Planning:「どのようなスキルセットをもった人材がどのくらい必要か」といった戦略的な要員/人件費計画の策定プロセスを支援、単年度のみならず中長期的な計画も可能
・Project Financial Planning:投資や研究開発、大型設備投資、コンサルティンなど社内/社外プロジェクトの予算策定や進捗管理、ROI分析などを実現
・Capital Asset Planning:減価償却費用と連携したキャッシュフロー計画の立案、除却/売却の判断、リース/購買の判断など、設備投資計画プロセスの中長期的な視点で支援
・Financial Statement Planning:他のモジュールと連携し、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフローなど各種KPIが事前に定義された組み込み型のテンプレートを提供

Oracle EPBCSではHyperion由来の各業界におけるベストプラクティスをテンプレートとして利用できる
Oracle EPBCSのインターフェイス(Capital Asset Planning)

 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 事業開発本部 担当ディレクター 箕輪久美子氏はOracle EPBCSの特徴を「経営とオペレーションが統合されたHyperionの基盤をベースにしているため、事前定義されたベストプラクティスを利用できるだけでなく、(事業部門ごとの)部分最適になりがちな予算管理を全体最適に落としこむことが容易になる。さらにクラウドにより(オンプレミスと比較して)短期間でかつ安価で利用することが可能」と語る。

日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 事業開発本部 担当ディレクター 箕輪久美子氏

 2007年にOracleに買収されたHyperionは、戦略や予算、オペレーションを全社レベルで効率化/最適化し、高い精度で将来予測を行うBI(Business Intelligence)製品を多くのエンタープライズ企業に提供していたが、買収後は「Oracle EPM(Enterprise Performance Management)」のコアとして、同社の"経営とマネジメントの統合基盤"をあらわすキーワードとなっている。

 ここ数年、グローバル大企業では予算管理のスピードを速めることで大幅なコスト削減を実現しているケースが多く、たとえばOracle EPMのクラウドバージョンを導入した米Kraft Heintzは、対前年比ではなくゼロベースで予算を策定することで17億ドルものコストを削減している。

Oracle EPM Cloudにより17億ドルものコストを削減したKraft Heinzの事例

 ここでポイントとなるのが、各事業部門の予算策定と全社最適化のバランスだ。予算策定の主導権はあくまで業務ユーザーにありながらも、全社レベルで共通化された戦略のもとで実行できるオペレーションを実現する――。Hyperionはもともとこの分野で高い評価を得ていた。OracleはこのHyperionのノウハウをそのままクラウドでも提供しており、Oracle PBCSとして「数千ユーザーのスケーラビリティをそのままに、業務ユーザ主導による短期導入と全社最適を同時に実現」(箕輪氏)している。

 「Oracle PBCSにより、大企業だけでなく、これまでHyperionに手が出なかったミッドマーケット(年商1000億円以下の中堅企業)の導入も増えている」(桐生氏)。

 このグローバルの流れを日本にも持ち込むのが今回の発表の狙いだ。桐生氏によれば、「Oracle PBCSはオンプレミスに比較して、導入金額を平均1/7に、導入期間を最短1.5カ月まで短縮する」という。そしてこのメリットをさらにモジュールとして利用しやすくしたのがOracle EPBCSという位置づけだ。

 数千万円、数億円の投資をしなくても、月額課金で"試す"ことができるSaaSという提供形態は「予算管理アプリケーションの敷居を下げ、国内企業のEPMに対する関心を高める効果がある」と桐生氏は期待を示す。

 「国内企業の多くはいまだに予算管理や予測分析などをExcelに頼っているが、そこから脱却したいという声は日増しに強くなっている。そうした企業にとってクラウドはまさにトリガーとなるとOracleは考えている」と箕輪氏。SaaSによる予算策定や全社最適化を実現することで"Beyond Finance"――業務ユーザー主導によるオペレーションエクセレンス実現企業の増加を国内でも目指す。

オラクルが提唱する「Beyond Finance」は各部門による予算化を実現することで、スピーディな経営を実現し、企業の変化対応力を向上することを目的とする