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日本オラクルが好調なSaaS事業をアピール――、「今後もクラウドへの移行を促す」

 日本オラクル株式会社は4日、同社のSaaS事業について説明会を開催した。5月末に終了した2020年度の決算では、アプリケーション事業においてクラウドとライセンス事業の双方で2ケタ成長を遂げたという。

 日本オラクル 専務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括のピーター・フライシュマン氏は、2020年度を振り返り、「東京と大阪にデータセンターを開設し、日本を基盤としたSaaSビジネスが展開できるようになった。また、オンプレミスからクラウドへの移行を支援するプログラムも大きく成長している」と述べている。

2020年度の事業について

 「Oracle Cloud CXは、新たな利益を生むとして採用が進んでいる。またOracle Cloud ERPは、大手金融機関や大手通信企業で採用されている。Oracle Cloud HCMも、大手建設業、小売業、外食産業で採用された。さまざまな顧客がフロントエンドからバックエンドまで幅広いSaaSソリューションを全面採用しており、ANA、NEC、三菱ふそうトラック、ゴディバジャパン、旭タンカーなどの事例も発表している」(フライシュマン氏)。

日本オラクル 専務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括のピーター・フライシュマン氏

 同日には、雷の防護製品とサービスを提供する株式会社サンコーシヤが、Oracle Cloud ERP、Oracle Cloud EPM、Oracle Cloud SCM、Oracle CX Sales、Oracle CPQを包括的に採用したことを発表している。情報を一元管理し、経営資源を見える化して迅速な意思決定を実現することが採用の目的だという。

 このほかにもフライシュマン氏は、鹿島建設株式会社が人材開発を強化し、収益力と社員生産性の向上を目指してOracle Cloud HCMを採用したことや、住江織物株式会社がグループ企業の情報を可視化し、収益向上とガバナンスの高度化を目指してOracle Cloud EPMを採用したことについて触れた。

Oracle SaaSの導入事例

 オラクル自らも、自社のクラウドサービスを活用することで、同社の経理部門での決算業務が迅速化しているという。フライシュマン氏は、米Oracleの実績として「会計業務の作業工数が35%削減でき、買掛未払い金の月次締め処理時間が30%短縮できた。2020年3月の月次決算は、新型コロナウイルスの影響によって全面リモート勤務となったが、期間がさらに20%短縮でき、1日でクローズできた」としている。

米Oracle自らの導入効果

顧客のデジタル変革をともに実現できるよう信頼できるパートナーになる

 2021年度のSaaS事業の方向性については、「これまで以上に顧客のデジタル変革をともに実現できるよう、信頼できるパートナーになる」とフライシュマン氏は語る。

 「オラクルの強みは、ERPやHCM、CXなど、さまざまなソリューションをベストプラクティスに基づいて包括的に提供できること。その強みを生かし、顧客にクラウドサービスをより活用してもらい、成功に導いていきたい。そのために、顧客のビジネスや業界を理解し、デジタル変革を支援できるよう、全事業にわたってソリューションを提案していく。クラウドへの移行プログラムも引き続き推進し、ERPからの移行はもちろん、今年は新たにHCM分野でもオンプレミスユーザーのクラウド移行を進めたい」(フライシュマン氏)。

2021年度の事業目標

 クラウドへの移行については、オラクルのオンプレミス製品からの移行はもちろん、他社製品からの移行にも対応する。ERPといえば業界最大手としてSAPが君臨しているが、SAPに対するオラクルの強みについてフライシュマン氏は、「SAPのオンプレミス製品をクラウド化するとかなりの金額になるため、投資対効果を考慮してオラクルを選択する顧客がいる。オンプレミス製品は、大規模アップグレードでない限りイノベーションが起こらないが、オラクルのクラウド製品は四半期ごとに新たなイノベーションを施している」と語る。

 このほか、製品アップグレードについては、日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMクラウド事業本部の善浪広行氏が登壇。「オラクルにはCloud Customer Connectという約20万人が所属するコミュニティがあり、同コミュニティから要望を吸い上げている。四半期ごとにリリースする新機能は、約80%が顧客の要望によるものだ」と述べた。