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NTT Com、Smart Data Platformの拡充など、事業構造変革に向けた3つの重点施策を発表

2020年度の事業戦略説明会をオンラインで開催

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は22日、2020年度の事業戦略説明会をオンラインで開催した。説明会ではNTT Com 代表取締役社長の庄司哲也氏が、2020年度の重点施策として、「Smart Data Platformの拡充」、「ソリューション提供能力の強化」、「新規事業の創出」の3つに注力していく方針を発表した。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の庄司哲也氏

 説明会の冒頭で、庄司氏は、新型コロナウイルス感染症拡大への対応について触れ、「当社およびNTTグループは『指定公共機関』として、通信インフラを提供する社会的責務を可能な限り果たしていく必要があると考えている。現在、当社ホームページ上ではOCNのインターネットトラフィック状況を開示しており、テレワークや在宅学習などで、平時よりも日中のトラフィックが大幅に増加していることがわかった。そこで、OCNモバイルONEの25歳以下の契約者に4月、5月の通信容量を10GBまで無償で追加した」とする。

 また自社の企業活動としては、「全従業員の8割以上が自宅からテレワークを行っている。閉域接続やクラウド型セキュリティを併用するなど、複数のセキュリティ対策を実施し、テレワークに最適なクライアント環境を提供している」と述べた。

 2020年度の事業戦略としては、公衆交換電話網(PSTN)からIP網への移行(2025年切り替え完了予定)に伴い、固定電話サービスによる事業収益・利益が大幅にダウンサイズすることに加え、個人向けOCNサービスの市場縮退も予測されることから、事業構造の変革と新たなビジネスモデルの構築が急務であると判断。

 「固定電話収益の減少や市場縮退の影響を補うことができる事業構造に転換し、当社グループ全体の持続的成長を支える収益基盤の確立を図る。特に、『Smart Data Platform』を強化・拡充し、業界や社会のDX実現に向けたソリューションを迅速に提供できる体制を整える。さらに、これまでの事業ドメインにとらわれない新たな事業創出に向けて取り組んでいく」とした。

事業構造変革に向けた3つの重点施策

 事業構造変革に向けた重点施策として庄司氏は、「Smart Data Platformの拡充」、「ソリューション提供能力の強化」、「新規事業の創出」の3点を挙げ、これらの施策を推進していくために組織体制の見直しを実施したという。「Smart Data Platformの拡充についてはプラットフォームサービス本部が、ソリューション提供能力の強化についてはビジネスソリューション本部が、新規事業の創出についてはイノベーションセンターが、それぞれ中心となって担っていく体制を整えた」としている。

2020年度に取り組む3つの重点施策

 各施策の具体的な取り組みとしては、まず「Smart Data Platformの拡充」では、同社が昨年9月から提供している、データ利活用に必要なすべての機能をワンストップで利用できるプラットフォーム「Smart Data Platform」について、ネットワークデータセンターやアクセスネットワーク、マネージドセキュリティ、Apps on SDPFなどさまざまな機能の強化・拡充を実施していく。

「Smart Data Platform」の概要

 ネットワークデータセンター機能の拡充では、従来までの首都圏での展開に加えて関西圏にも拡張する。「ネットワークデータセンターの機能については昨年、首都圏のデータセンターで主要IX事業者とのダイレクト接続を実現するとともに、クラウド事業者が提供する多様なサービスとの相互接続性を向上した。2020年度は、関西圏にもネットワークデータセンター機能を拡張し、関西圏に展開する複数のデータセンター間との接続を進めていく」という。

ネットワークデータセンターの概要

 また、顧客の拠点とデータセンター、クラウドサービスを簡単に接続する「Flexible InterConnect」(FIC)において、新たに「XaaS事業者向け接続機能」を開発・提供する。この機能は、クラウド事業者が提供するサービスをFICの接続先として追加できるもので、これにより最小限の設備でFIC基盤上に自社クラウドサービスを展開することが可能となる。

 アクセスネットワークの拡充では、4月からフルMVNO基盤を利用したeSIMによるモバイル通信プランを提供開始。今後、ゼロトラストネットワークに対応するSD-WANを強化するほか、期待が高まっているローカル5Gについても、サービス化に向けた実証を開始している。

アクセスネットワークの拡充

 マネージドセキュリティの拡充としては、各企業の秘匿性の高いデータを安全に流通させる仕組みである「DATA Trust」を、「Smart Data Platform」の基盤機能の1つとして提供する。「DATA Trust」は、ソフトウェアイノベーションセンタの研究成果を活用したもので、データの所有者がデータの利用条件や利用者を指定でき、秘匿性の高いデータを安全に流通・分析することが可能となる。

「DATA Trust」の概要

 「Smart Data Platform」を活用して提供するアプリケーション「Apps on SDPF」の拡充では、自然言語の処理に強みを持つAIシリーズ「COTOHA」の新たなラインアップとして、高精度の要約文作成AIエンジン「COTOHA Summarize」を追加する。また、コンタクトセンターの顧客満足度(CX)を向上するサービス「CX Platform」を今年秋にリリースするほか、社員証の電子化によって働き方と従業員管理のDXを実現するアプリケーション「Smart Me」を今年夏ごろにリリースする計画も明らかにした。

「Apps on SDPF」の概要

 重点施策の2点目「ソリューション提供能力の強化」の取り組みについて、庄司氏は、「『Smart Data Platform』に収集・蓄積したデータの利活用を通じて、業界・社会の課題を解決し、『Smart World』を実現していくために、City、Factory、Education、Healthcare、Mobility、Workstyle、Customer Experienceの7つの領域で、専門の実行組織として『推進室』を設置した。この体制を中心に、NTTグループ各社およびユーザー企業との連携によって、スピード感を持ってサービスやソリューションの開発を進めていく」と説明した。

 具体的な事例として、Smart City領域におけるトヨタ自動車との業務資本提携や、Smart Factory領域におけるデジタルマッチングプラットフォームの提供、Smart Education領域における「まなびポケット」の提供について紹介した。

 3点目の重点施策である「新規事業の創出」としては、既存のドメインにとらわれない新しい事業を、パートナー企業や顧客とともに生み出していく方針。「昨年度からオープンイノベーションプログラムを開始しており、すでに200以上の新事業アイデアが生まれている。本年度も新たなテーマを設定し、参加企業・団体に広く応募を呼びかけていく。また、社会的課題の解決を目指すコミュニティ『C4BASE』を通じ、企業や業界の枠組みを超えてビジネス課題に向き合うことで、新たな気づきやDXに向けたアイデアを生み出していきたい」との考えを示した。