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バッファロー、NAS製品「TeraStation」の管理業務を支援するクラウドサービス「キキNavi」を提供

15周年を迎える「TeraStation」の歴史を振り返る

 株式会社バッファローは、法人向けNAS製品群「TeraStation(テラステーション)シリーズ」を管理するクラウドサービス「キキNavi」の提供を4月17日から開始する。

 料金は無料で提供するが、これは、NAS管理を行っているシステムインテグレーター(SIer)や販売店のビジネスをサポートするためだ。

 TeraStationは2004年に最初の製品を発売し、今年で15周年を迎える。バッファロー 取締役兼ストレージプロダクト&サービス事業部長 石丸正弥氏は、「今回、キキNaviのアイコンはクラウドのイメージの雲と、お客さま、販売店のみなさん、バッファローの3者の結びつきを強くしたい、という意味を込めてデザインした。われわれが提供しているものは、物を売って終わりではない。長く使い続けてもらうことができる、資産を守るソリューションとなるために、お客さま、販売店の協力が不可欠ということでこのサービスを提供する」と、サービス提供の狙いを説明する。

バッファロー 取締役兼ストレージプロダクト&サービス事業部長 石丸正弥氏

 具体的には、TeraStationを管理しやすくするキキNavi提供によって、一部のSIerなどで行われている、有償のテラステーション管理サービスの提供会社を増やしていくことが狙い。そこで4月17日時点では、SIerや販売店などのみにキキNaviを提供する。なお、将来的には個人向けにも提供する計画だ。

キキNaviの説明と画面

 また4月12日に行われた発表会では、次期製品として、スナップショット機能を搭載した「TeraStation TS6000シリーズ」が公開された。2019年夏の発売予定で、スナップショットと、iSCSIボリュームバックアップ機能が新たに加わる予定となっている。

SIerなどのNAS管理業務を支援する「キキNavi」

 キキNaviを提供する背景を、バッファロー ストレージプロダクト&サービス事業部 NASマーケティング課長の磯畑明彦氏は、「TeraStationのユーザーや、販売するパートナー企業にヒアリングを行ったところ、挙がった要望の中で一番多かったのが、保守・管理の負担が増しているという声だった。情報システム部門の仕事は増えているのに、管理担当者の人数は増えていない。そこでSIerなどに仕事を依頼するのだが、そちらも対応する人の数は増えていない。なんとかならないのかという相談が多かった」と説明する。

バッファロー ストレージプロダクト&サービス事業部 NASマーケティング課長の磯畑明彦氏

 そこでバッファロー側がまず、保守・管理の負担についてヒアリング内容を分類したところ、次の4つとなった。

稼働状況の把握

状況確認のための訪問を減らす、100台・200台といった多台数を管理する場合にメールでの死活監視は工数増大の傾向、電話での障害報告は状況がわからない、多台数のNAS管理を効率化したいなど。

遠隔簡易操作

状況確認のための訪問回数を減らしたい、障害発生時にはログを急ぎ取得したいなど。

稼働状況の共有

お客様とNASの稼働状況を共有したい、社内の複数部署でNASを管理しているので稼働状況を把握したいなど。

設定情報の保存

以前の設定状況を保存しておくことで筐体交換時、リプレース時の設定にかかる作業負荷を軽減したいなど。

 こうした声に対する回答として、今回は「キキNavi」を提供する。TeraStationの稼働状況通知がクラウド上にアップロードされ、保守や管理を行っている側はクラウド経由で情報を把握することができる。

 主な機能は、課題として挙がっていた稼働状況の把握、遠隔簡易操作、稼働状況の共有、設定情報の保存の4つだ。

キキNaviとは?

 稼働状況の把握は、TeraStationの状態をブラウザから一覧監視。死活監視、CPU使用率、メモリ使用率などシステム状態、HDDの使用率やS.M.A.R.T.情報などの情報、USB接続機器の情報などをブラウザから監視できる。

 障害通知はメールで送信し、受信メールからキキNaviにログインして確認することができる。復旧ガイダンスは、エラー内容に沿ったガイダンスを表示する。

稼働状況の把握

 遠隔操作として、遠隔からTeraStationを簡易的にメンテナンス操作できる。例えば、動作が不安定な場合などの再起動に加え、計画停電などが行われることがあらかじめわかっている場合にはシャットダウンをタイマー設定できる。

 さらに、障害の原因把握のためのデバッグログの取得、脆弱性が発見された場合などのファームウェアアップデート、個体の特定を行える“I`m here”機能などを搭載しているとのこと。

遠隔簡易操作

 稼働状況の共有については、複数企業のTeraStationを管理している会社向けに情報共有、監視と簡易操作機能や、保守・管理に関わるメンバー全員を担当ごとに権限設定などを行うことができる。

稼働状況の共有

 設定情報の保存として、以前の情報を引き継ぎたい時のためにユーザー/グループ、共有フォルダー、アクセス制限などを保存しておくことができる。なお、キキNaviが保存するのは状態把握のためのものだけで、データの内容等などキキNaviには保存されない。

設定情報の保存

 キキNaviが対応するTeraStationは、中規模オフィス向けのTS51210RHシリーズ、TS5410RNシリーズ、TN5810DNシリーズ、TS5610DNシリーズ、TS5410DNシリーズ、TS5210DNシリーズ、TS5210DFシリーズ。また、小規模オフィスSOHO向けのTS3410RNシリーズ、TS3410DNシリーズ、TS3210DNシリーズ。

 まずはLinux版からスタートし、今後Windows Server版も検討する。また、管理担当者だけでなく、ユーザーが管理画面を見るサービスも今後提供予定だ。

対応製品

スナップショットに対応した「TS6000」を提供予定

 今後の製品については、「これまでファイルベースのバックアップに対応してきたが、スナップショット機能を望む声が強い」(バッファロー ストレージプロダクト&サービス事業部 NAS第一開発課長 原幸人氏)ことから、スナップショットに対応したTS6000の発売を予定している。

 スナップショット機能を搭載することで、CADファイルなど、複数ユーザーがデータ保存を行う場合に、特定の時間までさかのぼって復元したいといったニーズに対応する。

スナップショットのメリット

 また、iSCSI接続時のPCサーバーの負荷を軽減するために、iSCSIボリュームバックアップにも対応。サーバーを経由しないデータ転送を可能とすることで、PCサーバーへの負荷を軽減する。

 新製品は2019年夏の出荷を予定している。

TS6000シリーズ

TeraStation 15年の歴史

 なお、TeraStationは最初の製品発売から15年を迎えており、石丸取締役がこれまでの歴史を振り返った。

 「ちょうど15年前、2004年に初代のTeraStationを発売したが、まず、TeraStationの前に『ネットワークにつながるハードディスク』としてLinkStationを発売した。当時はNASが浸透する前。容量は80GBで、今から考えると少ない容量だった。そこから、もっと大容量が欲しいというニーズに応え、発売したのが初代TeraStationになる」と、発売までの経緯を説明。

 「今から見ると“バカ高い”ということになるが、当時は1TBで10万円を切る、エポックメイキングな製品となった。大容量で10万円を切る価格は、企業で稟議なく購入できるということで、年間3万台以上を販売した。コンシューマ向けでは珍しくない販売台数だが、法人向けは検証のタイミングがあり、購入までに半年から1年かかるのが普通。しかし、この製品は発売直後に垂直起ち上げとなった。それだけニーズがあったんだなと思う。国内だけでなくCESで賞を受賞し、海外のお客さまにとってはTeraStationのバッファローという認知となっている」と述べ、大きな意味があったと振り返る。

 初代製品は唯一銀色の筐体で、「銀Tera」と呼ばれるなど人気を集めた。しかし、「いろいろなクレームも多く、ちょっと胸が痛くなる製品でもある」と石丸氏は苦笑いした。

 そのため「その後の歴史を振り返ると、最初の数年は製品品質を上げるための時期。パフォーマンスをもとより、メンテナンスしやすく、長期保存してもらうための機能向上を続けた」のだという。

 「銀Teraで怒られたのは、HDDだからどうしても壊れるが、銀TeraはHDDの交換ができない仕様となっていたこと。それで2代目以降は、何かあったら交換できる仕様とした」とのことで、ユーザーの声を聞きながら、製品の品質向上を続けたとした。

 「その後、世代を重ね、安心して使ってもらえるものになった。歴史の後半は、ラインアップの拡充。お客さまのいろいろなニーズに応えてラインアップをそろえていった。例えば、当初のLinuxからWindows Storage Server対応も行った」。

初代TeraStationの“銀Tera”
TeraStationの歩み:2004年~2008年
TeraStationの歩み:2011年~2017年

 さらに、バッファローとしてビジネス的に大きな転換点となったのが2017年だという。

 「メーカーとして物売りの会社として活動してきたが、お客さまに提案しているのは『もの』であって『もの』ではない。お客さまのデータを守るのが仕事。今まで、壊れて消えたデータに対して手はなかったが、それでは安心して使ってもらえないということで、2017年からデータ復旧サービスを開始した。これは小さいようで大きな転換点。物売りから“こと売り”という意識が強くなる転換点だった」。

TeraStationの歩み:現在

 現在では、TeraStationシリーズの累計出荷台数が100万台を突破。製品の容量も最大で144TBまで拡大している。

 「累計出荷台数100万台を突破したということは、100万人のお客さまからいろいろな声を頂いたということになる。NASはそれなりの価格の製品なので、100万台に到達している会社はない。バッファローが№1と自負している。そしてお客さまの声を100万種類聞いている」と述べ、これからもユーザーニーズに合わせた製品を提供していく姿勢をアピールした。

15周年を迎え、累計出荷台数100万台を突破したことを強調していた