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AWSはパートナーとともに新たな価値を創造する――、AWS Partner Summit Tokyo 2021基調講演レポート
2021年4月2日 09:30
アマゾンウェブサービスジャパン株式会社(AWSジャパン)は3月23日~24日、パートナー向け年次イベント「AWS Partner Summit Tokyo」をオンラインで開催した。
その中で基調講演に登壇した執行役員 パートナーアライアンス統括本部 統括本部長 渡邉宗行氏は、2021年のAWSジャパンのパートナー戦略を紹介している。
渡辺氏は冒頭、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きかった2020年を振り返り、「2020年はこれまでまったく経験したことのない年であり、いまだにその状況は続いている。2度の緊急事態宣言の発令と在宅勤務の推奨、東京オリンピックの延期、新政権発足、デジタル庁の新設など、生活やビジネスと取り巻く環境は急激で非連続に変化した。しかし、こうした社会情勢の変化の中でも、クラウドテクノロジーを活用することで、顧客のニーズにも俊敏かつ柔軟に対応できる」と述べた。
クラウドのメリットを活用した事例として渡邉氏は、米Moderna社によるCOVID-19ワクチンの開発プロジェクトを紹介した。Moderna社ではAWSの機械学習(Machine Learning:ML)機能を活用し、COVID-19の遺伝子データを入手してからわずか3日でCOVID-19ワクチンの基本デザインを完成させ、その63日後にはワクチンの臨床試験を開始したという。
「2003年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)のパンデミックでは、ワクチン開発に20カ月を要しているのに対し、2カ月ほどでCOVID-19ワクチンを完成させたことになる。これこそクラウドのメリットのひとつである『俊敏性』を生かした良い事例だと言える」(渡邉氏)。
さらに国内の事例として、1000人規模のリモートワーク環境を10日で構築したコクヨ、高知県の土佐ガスグループの一時的なリモートワーク需要増加に柔軟に対応したアツミ電子計算センター、COVID-19対策用の支援システムを1週間で構築した札幌市などが紹介された。
COVID-19はさままな領域において甚大な影響を与えたが、デジタルテクノロジーに与えた影響は一過性のものではないと渡辺氏は述べる。
「ハンコから脱却したオンライン決済、AIを活用したソーシャルディスタンスの管理などパンデミックをトリガーとしたさまざまな変化は、決して一過性のものではない。恒常的なニーズ、つまりニューノーマルとなる。そしてAWSはパートナーと共に、環境変化への対応スピードをいっそう強化し、新たな価値を創造する必要があると考えている」(渡邉氏)。
加速する新機能の追加
2020年、AWSは2757の新サービス・新機能を発表している。このサービス・機能の追加速度は年々加速しており、渡邉氏は「AWSはイノベーションへの投資スピードを落とさない。多くのお客さまからの声に基づいて、新サービスや新機能の開発を日々続けている」と述べている。
「AWSはイノベーションのために『reinvent(再発明)』が必要だと考えている」と述べる渡邉氏は、2020年12月にオンラインで開催された「re:Invent 2020」において、AWSの最高経営責任者(CEO)のAndy Jassy氏が挙げた、reinventに必要な8つのキーワード「強いリーダーシップ」「変化を受け入れる」「発明に貪欲(どんよく)なタレント」「課題解決力」「スピード」「複雑性の排除」「高度なツールを持つプラットフォーム」「積極的なトップダウンの目標」を紹介した。
「これら8つのキーワードは、テクノロジーだけでなく、組織のリーダーシップやカルチャーの変化が必要になるということを表している」(渡邉氏)。
re:Invent 2020では、新たに27のサービスや機能の追加が発表されているが、渡邉氏は「今年の特筆すべき点として、『インスタンス』『ハイブリッドクラウド』『サーバーレス』など、インフラのコアテクノロジーに対しても投資があったことだ」と述べ、インスタンスとハイブリッドクラウドについては、いくつかの具体例を紹介している。
インスタンスについては、ARMベースのAWS Graviton2プロセッサを使用した「C6gn」インスタンスや、MLに特化した「G4ad」インスタンスをはじめとするいくつかのインスタンスが新たに追加された。
ハイブリッドクラウドについては、AWSのコンテナ環境をオンプレミスでも稼働できるようにする「Amazon ECS Anywhere」や「Amazon EKS Anywhere」、顧客やパートナーのデータセンターにエッジコンピューティング環境を実現する「AWS Outposts」の小型版が追加されている。
また、国内におけるハイブリッドクラウドの基盤として、これまでローカルリージョンだった大阪リージョンが、東京リージョンと同じフルリージョンに増強されるほか、AWSのコンピューティングリソースを通信事業者の環境から利用できる「AWS Wavelength」をKDDIとの協業で国内提供することなとが挙げられた。
現在AWSは200を超えるサービスを提供し、さまざま顧客のワークロードを支えている。昨年3月に開催されたAWS Partner Summit Tokyoでは「175を超えるサービス」と発表されていたことから考えても、AWSがサービス開発に多大な投資をしていることは明らかである。また、グローバルインフラストラクチャーとしては、リージョンが22から25、アベイラビリティゾーンは69から80、エッジロケーションは189から230へと増強されている。渡邉氏は「これらの投資は、今後も引き続き行っていく」と説明した。