イベント

AWSはパートナーとともに新たな価値を創造する――、AWS Partner Summit Tokyo 2021基調講演レポート

基調講演後の質疑応答

 なお、基調講演後、渡邉氏に個別質問をする機会を得たため、基調講演の内容および現在のクラウドを取り巻く事柄を尋ねた。

――「2020年はCOVID-19の影響が多い年だった」と発言していますが、ビジネス戦略などに変更はあったのでしょうか?

 COVID-19を契機にビジネスに変化があったのは確かですが、AWSのサービスや機能といった戦略は特に変えていません。COVID-19への迅速な対応が可能になったことで、クラウドの俊敏性などを証明したと言えるのではないでしょうか。

――「日本のお客さまのクラウド活用には、パートナーとの協業が欠かせない」とのことですが、それほど日本のビジネスにパートナーは重要なのでしょうか?

 極めて重要です。おそらく世界で一番パートナーとの協業が重要な地域は日本だと私は信じています。基調講演でもお話した通り、日本のIT人材の約72%はITベンダーに在籍しているという分布からも自明の理でしょう。

 日本のパートナーはお客さまをよく理解しています。営業が何世代にも渡ってお付き合いするといったケースも多く、下手をすればお客さま自身よりもお客さまのビジネスを理解しているという営業も少なくありません。お客さまとの未来を一緒に考えることができるパートナーを支援することは、結果としてお客さまのメリットにつながっています。

――新たなパートナープログラム「AWS ISV Partner Path」は、ISVやコンサルティングといった垣根を無くすということですが、どういったメリットがあるのでしょう。

 AWS ISV Partner Pathは、組織ではなくソリューションを認定するプログラムです。ISVパートナーはもちろん、コンサルティングパートナーも複数のソリューションを提供しているケースは多いいため、お客さま目線で、「このソリューションはAWSできちんと動く」ということを周知できることは、パートナーにもユーザー企業にもメリットがあると考えています。

――「日本はクラウドへの移行が進んでいる地域」と言うお話もありましたが、これまで日本はクラウド化が遅れていると言われがちだったと感じています。いつから先進的な国となったのでしょうか?

 日本がクラウドシフトに前向きになったのは、ここ1年~2年ほどのことです。日本企業はSIerやISVとの結びつきが強く、新しいテクノロジーの導入には慎重です。まず一部の先進的な企業やベンチャー、あるいはゲームなどのエンターテインメントの分野での成功事例をみて、SIerやISVが「これなら大丈夫そうだ」と動き出すと、一気に変化していきます。

 現在はクラウドテクノロジーのスキルを持ち、お客さまのビジネスを理解し、サービスやソリューションを持っているパートナーが増えたことで、クラウドへの移行が進んでいると言えるでしょう。

――データ転送に掛かる費用の面から、最近はパブリッククラウドからオンプレミス(プライベートクラウド)に戻る傾向もあると耳にします。AWSではどのように考えているのでしょう。

 クラウドの正しい使い方は、最適化できると考えています。最終的にお客さまがどのように判断されるかはわかりませんが、クラウドがお客さまのインフラの選択肢のひとつであり続けることは大きなメリットであり、差別化要素です。例えば今回のCOVID-19のようにサーバーの調達も思うように進まない状況では、クラウドのメリットである俊敏性や拡張性(縮退性)は最大限に発揮されました。

 また、ハイブリッドクラウドは、現実的な選択肢です。これまでオンプレミスにあったシステムが、一気にクラウドに移行する方が考えにくいのではないでしょうか。データとプロセスをきちんと分離できていれば、データはお客さまのデータセンターにおいたまま、クラウドにあるプロセスを利用するといったハイブリッドクラウドも実現可能です。

――SAP環境を提供するクラウドサービスは、ほかのクラウドプロバイダからも提供されていますが、AWSではどのように差別化していくのでしょうか?

 SAPとの付き合いが長く、大型のマイグレーション事例も多数あることは、特に日本のお客さまにとって大きな差別化要因になると考えています。また、AWSは常に進化を続けています。次々と新しいサービスや機能が追加されていますし、そのスピードを落とさないために投資を続けています。単にクラウドに移行しただけではコスト削減にしかなりません。その先の展開として「今後どのようにDXを推進していくのか」を考えたとき、AWSは圧倒的に多くの選択肢をお客さまに提供できます。

――現在、世界的に5Gが注目されていますが、昨年12月に東京リージョン、今年2月に大阪リージョンでも提供を開始した「AWS Wavelength」は、現在どの程度の顧客がいるのでしょうか? また、どのようなユースケースを想定しているのでしょうか?

 顧客数などは公表していませんが、お問い合わせはたくさんいただいています。まだまだユースケースを検討する段階にあるため、膨大な量のIoTデバイスからのデータ収集、コネクテッドカー、ゲームなどエンターテインメント分野での活用などのユースケースはいくつかでてきています。もちろんそのほかにも、お客さまのビジネスを理解しているパートナーと一緒に、さまざまなユースケースを検討し、新しいビジネスをしていきたいと考えています。

――日本では公共分野に注力するとのことですが、グローバルではどうなのでしょうか?

 米国では公共分野のクラウドは、AWSが圧倒的なシェアを持っています。一方、日本はこれまで利用があまり進んでいませんでした。しかし、ここ数年でcloud by defaultの原則など日本の公共市場も変化しています。そのため、2021年のパートナー戦略の中にも、公共分野"にも"注力することを含めています。ただし、AWSは特定の領域に対して「集中」と「選択」はしませんので、公共以外の分野にも積極的に投資をしていきます。

質疑応答に対応する、AWSジャパン 執行役員 パートナーアライアンス統括本部 統括本部長 渡邉宗行氏