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AWSとKDDIが「AWS Wavelength」を国内提供開始、5Gの超低遅延性能を活用可能

 Amazon Web Services(AWS)とKDDI株式会社は16日、KDDIの5Gモバイルネットワーク上で動くAWSの各種サービスを利用できる「AWS Wavelength」を提供開始したことを発表した。まずは東京から開始し、近く大阪でも開始予定。

 AWS Wavelengthとは、AWSの各種サービスを、提携した通信事業者などの設備で動かすものだ。2020年8月に通信事業者の米Verizonから提供開始し、続いてVodafoneとSKテレコムが開始。今回のKDDIが世界4社目で、日本では最初となる。

 利用企業のサービスがKDDI(au)の5Gモバイルネットワークに直結する形になるため、5Gの利用者に対してインターネットなどを経由せずにサービスを提供できる。これにより、5Gの特徴である超低遅延を生かすことができる。

 まず利用できるAWSサービスは、コンピューティングのAmazon EC2、ブロックストレージのAmazon EBS、コンテナのAmazon EKSとAmazon ECS。今後、利用者の要望に応じて拡充していく。利用開始は、AWSのコンソールなどから、通常のAWSサービスと同様に行う(事前にアクセスのリクエストが必要)。利用方法も通常のAWSサービスと同じだ。

 両社は2019年12月に、KDDIの5GネットワークにAWS Wavelength環境を構築することを発表していた。今回はそれがサービス開始となったことが発表された形だ。

KDDIの5GネットワークでAWS Wavelengthを提供開始
まずEC2、EBS、EKS、ECSが利用できる
KDDIは世界で4社目、日本で最初
左から、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 岡嵜禎氏(執行役員 技術統括本部長)、KDDI株式会社 丸田徹氏(執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発副本部長)、株式会社TVT 高橋俊成氏(最高技術責任者)

低遅延に加えてクラウドモデルなども企業は期待

 同日にオンラインで開催された記者会見で、KDDI株式会社の丸田徹氏(執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発副本部長)は、5Gの「高速・大容量」「多接続」「低遅延」の3つの特徴を挙げ、今回はその中で特に低遅延に磨きをかける新しいサービスだと説明した。

 従来はモバイル回線向けサービスもAWSのデータセンターからインターネットなどを経由していたため、遅延があり、その遅延予測もできないことが問題だったと丸田氏は説明。AWS Wavelengthにより5Gネットワークの中で完結し、5Gの超低遅延を生かせると語った。

5Gの特徴のうち「低遅延」に磨きをかけるサービス

 また、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の岡嵜禎氏(執行役員 技術統括本部長)は、モバイルエッジインフラを利用しようとする企業が期待することとして、「低遅延」に加えて、従量課金で利用できる「クラウドモデル」や、クラウドとエッジで同一のAPIと運用管理、クラウドと同じ機能追加ペースを挙げた。

 岡嵜氏は海外での事例として、ストリーミングコンテンツやエッジ推論、ネットワークゲームなどでの利用例も紹介した。

 またユースケースとしては、ヘルスケア分野で画像解析からポリープを検出して治療の短縮効率化するケースや、ちょっとした違いが品質を左右する工業製品でその違いを検知するスマートファクトリーのケースを説明。そのほか、コネクテッドカーやリアルタイムゲーム、AR/VR/XR、双方向ライブストリームなども挙げた。

モバイルエッジインフラに企業が期待すること
海外でAWS Wavelengthを採用した企業の例
AWS Wavelengthのユースケース

オンラインゲームや時刻同期、AIなどの実証実験結果

 KDDIのAWS Wavelengthの実証実験に参加した企業として、株式会社TVTの高橋俊成氏(最高技術責任者)も記者会見に登場し、検証結果を報告した。

 同社はネットワークゲームなどを企画・開発しており、通信遅延などの通信品質がゲームデザインに影響することから、5GとWavelengthでどれほど制限が緩和されるかを検証したという。

 デモ動画では、バーチャルキャラクターを相手に5Gと4Gのそれぞれのユーザーが「連続後出しジャンケン」をプレイ。5Gが圧倒的に有利になるところを見せた。

 この実験では、5G回線に接続する端末のRTTが4G回線と比較して40~50%ほどに抑えられたことを確認し、ゲームプレイ体験が向上する期待が持てたと高橋氏は報告した。

連続後出しジャンケンで5Gと4Gの遅延の違いを実験
実験の構成
実証実験の結果のまとめ

 そのほかの実証実験についてもKDDIの丸田氏は紹介した。

 計測器メーカーの日置電機株式会社では、電源品質測定の時刻同期を実験した。4G通信では遅延変動があり、高精度のGPSでは設置場所が限定され、固定回線では敷設・管理のコストが高いという課題があった。それに対して、5Gにより2msの時刻同期を実現し、設置場所が制限されずにどこでも設置できるようになったという。

 ブレインズテクノロジー株式会社では、製造現場で機器の異常を予兆からAIで検知する異常検知を実験した。無線化は柔軟になるところを、5Gで4Gと比較して約43%の遅延時間を改善。さらに、SIMを挿すだけでセキュアにクラウドに接続でき、AWSの柔軟性を受けられたという。

 日本テレビ放送網株式会社では、5GとWavelengthを使用したクラウド上の編集システムを実験した。ストレスを感じることなく撮影素材のアップロードやクラウド上の編集を行うことができる可能性を実感したという。

計測器メーカーの日置電機株式会社による実証実験の結果
ブレインズテクノロジー株式会社による実証実験の結果

 そのほか、新規ビジネス創出拠点の「KDDI DIGITAL GATE」でAWS Wavelengthが2021年1月から体験できるようになることや、KDDI 5Gビジネス共創アライアンスでもAWS Wavelengthを使えるようにしていくことなども丸田氏は紹介した。

「KDDI DIGITAL GATE」でAWS Wavelengthが2021年1月から体験できるように
KDDI 5Gビジネス共創アライアンスでもAWS Wavelengthを使えるように