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マイクロソフトはどんな未来を描いていくのか? クラウド・AI時代のパートナー戦略を見る
Japan Partner Conference 2018 基調講演レポート
2018年9月4日 06:00
4つのAzure活用事例
続いて、Microsoft Azureに関する4つの事例について、パートナーや顧客が登壇して説明した。
日本ビジネスシステムズの牧田幸弘社長は、2017年11月から、東京、大阪、横浜で、本田技研工業が取り組んでいる、国内向けカーシェアサービス「Every Go」において、Azureを活用していることを紹介。
スマートフォンで入会してWebで予約すれば、あとはICチップ付きの運転免許証でクルマの鍵が開けて利用できるという。
Azureを選択したのは、ユーザーインターフェイスやバックエンドをサポートする機能を充実しており、利便性が高いサービスを提供できること、料金体系の変更など、ユーザーニーズをとらえたサービス変更を、柔軟にシステムに反映できること、などが理由だとした。
また、6カ月でシステム開発を完了したというスピードもメリットだったという。今後、機械学習機能を活用することで配車戦略や売り上げ予測などにも役立てたいとしており、「これまでは顧客のシステムを作ることがわれわれの仕事だと考えていたが、顧客のビジネスをエンジニアが知り、一緒になってビジネスそのものを作るという新たな手法を採用した。ビジネスバートナーとなることが、今後のSIerの目指すべき姿だと感じた」と述べた。
ジュピターテレコムではドリーム・アーツと連携し、働き方改革を実現する4Circleプロジェクトを推進していることを紹介。ここにAzureを利用しているという。
ジュピターテレコムは、CATV会社を中心に約45社と合併してきた経緯があり、異なる経験や価値観を持った社員が多いのが特徴だ。4Circleプロジェクトでは、こうした社内環境において、コミュニケーションの活性化、情報管理の徹底、働き方改革、システム整備の4つの観点から取り組み、メール文化の改革や社内ポータルの刷新などを通じて、コミュニケーションを活性化し、収益向上に貢献することを狙ったとする。
当初はAWSの利用を想定していたが、社内にOffice 365を導入するタイミングであったこと、スピードを重視し5カ月で仕上げたいと考えていたこと、成長にあわせて柔軟な拡張性があること、さらには日本マイクロソフトからも強力な支援を得られることでAzureを採用したと述べた。
一方で、日本航空ではエルテスとの協業によって、SNSのモニタリングシステムにAzureを活用しているという。航空機の利用は、頻繁に出張する人以外は数カ月に一度であり、その性質上、JALとの接触回数が少ないというのが実態だ。
そこで、SNSの公式アカウントから、毎日なにかしらの情報を提供し、航空機を利用しない間にも接触を図り、コメントにも丁寧に返信をしているほか、ソーシャルリスニングにより、新たなサービス創出やサービスレベルの向上に向けたヒントをコメントの中から抽出しているという。
また、Webリスクモニタリングにも対応。エルテスが提供する24時間で対応する有人でのリアルタイム監視サービスにより監視を行ってる。これらのサービスでは、Azureが持つ高いセキュリティ環境を活用することで、ユーザーが安心するサービスを提供できることにもつながっているとした。
農業データ基盤におけるAzureの活用については、慶応大学教授であり、内閣官房 副政府 CIOの神成淳司氏と、ネクストスケープ 代表取締役社長の小杉智氏が説明した。
日本の農業が置かれた立場として、就労人口が減り、平均年齢が70歳を超えていることを指摘するが、その一方でこうした課題を解決するためにITの活用が促進されているほか、トラクターを利用している場所が私有地であるため、遠隔自動運転が推進される環境にあるなど、IT化が促進しやすい環境にもあると話す。
しかし現在の農業ICTにおいては、データやサービスの相互連携がなく、データプラットフォームの構築の必要性が求められている。
そこで2019年4月から、農業データ連携基盤「WAGRI」の正式稼働を予定しており、これによって、農業におけるデータを活用した生産性向上、経営改善に取り組むことができるという。
ここに、CosmosDBやSQL Azureなどを活用。データの特性にあわせて永続化層の変更を行えることや、センサーデータの増加やアクセス増加にも柔軟に対応できること、クラウドとインテリジェントテクノロジを活用し短期間でのDXを実現できる点にメリットがあることなどを説明した。