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マイクロソフトはどんな未来を描いていくのか? クラウド・AI時代のパートナー戦略を見る
Japan Partner Conference 2018 基調講演レポート
2018年9月4日 06:00
日本マイクロソフト株式会社は8月31日、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京において、同社の年次パートナーイベント「Japan Partner Conference 2018」を開催した。
今年で15年目を迎えたJapan Partner Conference 2018の会場には、約2300人のパートナー企業が参加。最新技術の紹介や基本戦略について説明し、2020年に向けて、マイクロソフトがパートナーとともにどんな未来を描き、どのように世界を変えていくのかを紹介する場となった。
DXはもう生活やビジネスの一部に?
午前10時から約2時間30分にわたって行われた基調講演では、「デジタルトランスフォーメーションはもう生活、ビジネスの一部」と題し、「ITモダナイゼーション」「働き方改革」「インダストリーイノベーション」といったマイクロソフトの注力分野を中心に、パートナーとマイクロソフトが実現した先進的な取り組みを、さまざまな事例やデモを交えて紹介し、「Shared Vision」「Shared Success」「Shared Future」という日本マイクロソフトが打ち出すパートナーとの基本戦略を強調してみせた。
登壇した米Microsoft One Commercial Partner担当のガブリエラ・シュースター(Gavriella Schuster) コーポレートバイスプレジデントは、「私は日本が大好きであり、日本というと、品質とイノベーションという言葉が思いつく。特に、クルマ、家電、カメラ、ゲームなどでは、過去20年間にわたり、世界のリーダーであった」と切り出す。
同氏自身、自宅で数多くの日本製品を使っているとのことで、「初めて購入した新車はホンダのアコードだった。当時、私は米国自動車産業の本拠であるデトロイトに住んでおり、しかもお客さまのひとつがGMであった。同僚から批判されたが、そのクルマは13年間乗り続け、その後、ホンダのオデッセイ、トヨタのRAV4、トヨタのシエナに乗った」と、自身のエピソードを披露。「今後20年も、日本の企業が、製品のイノベーションを続け、高い品質を維持することを支援したい」と述べる。
また、「日本は、少子高齢化や労働人口減少の課題がある。1人あたりの生産性を上げていく必要があり、その結果、労働力不足を解決し、イノベーションを継続することにつながる。ボット、IoT、AI、データは、人間の能力を拡張するものとして受け入れる必要がある。それが製造の未来であり、家電の未来であり、サービスの未来である。日本には、26兆円の市場があり、そこに、パートナーと顧客が価値を実現することができる。日本という国は、さらなる成長が期待できる」とした。
具体的には、「東京オリンピック」「働き方改革」「ソサエティ5.0」という3つのチャンスが日本の市場にはあると指摘。
「東京オリンピックは3000億ドルの経済効果があり、150万人の新規雇用が生まれていると指摘されている。ここではスポーツファンとの新たなエンゲージメントを作り上げたり、世界に向けて、日本がAIやアナリティクスを活用した先進的な国であるということをアピールしたり、イノベーションを訴求できるチャンスでもある。ここには、当社のインテリジェントエッジやインテリジェントクラウドを活用可能。研究開発の中に、これらを歯車のように組み込んでほしい。われわれは一緒にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するユニークな立場にいる」などとした。
さらにIDCの調査では、Microsoftの1ドルの売り上げに対して、パートナーは9ドル64セントのビジネスを行っているという結果を示しながら、「2018年6月末締めの2018年度では、Microsoftは初めて1000億ドルを突破し、1104億ドルの売り上げを達成した。これにバートナーの売り上げを掛け合わせると、1兆ドルもの効果を世界経済にもたらすことになる。パートナーを通じたAzureの売り上げは100%増となり、CSP(Cloud Solution Provider)の成長は225%増、Office 365の売り上げは36%増、Dynamics 365の売り上げは52%増となっている。だが、調査によると、今後5年間で最低でも4.5兆ドルのビジネスチャンスが生まれ、われわれが触れているのは市場の全体の5%程度にすぎないという結果も出ている。まだまだ成長する機会がある」などとした。
続けて、150億のデバイスがネットワークにつながる一方、接続が保証されない場所での処理や、コネクテッドカーのように遅延が認められない場所での接続のためには、インテリジェントエッジが必要であること、データとAIが重視される中で、企業にとって重要なのはデータであり、データがDXにおける「通貨」となることなどを指摘。だが、データの活用に手を付けている企業がまだ少ないこと、IoTを活用している企業は20%にとどまっていることなどを示しながら、「ここに大きなビジネスチャンスがある」と述べた。
講演ではパートナーによる活用例として、豊田自動織機がAzureを活用して予兆保全を行ったり、働き方改革により労働時間を20~25%削減したりといった成果を上げていること、富士通では、AIとビッグデータを活用して、社員が効率的に働ける環境を実現していることを紹介した。
また、シュースターコーポレートバイスプレジデントが担当しているOne Commercial Partnerの役割にも言及し、「次の10億ドルのビジネスを構築するためにどうするべきかを考えており、正しい投資を行うこと、パートナーと顧客とをつなぐことを実行していく組織である。すでにその成果として、初年度に2万8000のアプリ、サービス、ソリューションを提供し、そのうち1000が日本のパートナーによるものだ。300万件のリードや、10万件以上の共同受注(Co-Sell)の実績が生まれ、パートナーを通じて50億ドルの売り上げが達成された。2019年度もこの勢いを継続し、パートナーのビジネスを支援したい」とした。
そのほか、同社のクラウドパートナーであるCSPの仕組みが複雑になっていることを簡素化し、ひとつのライセンスプログラムとして提供することを発表。パートナーのソリューションを、これまで以上に販売しやすい環境を構築すると約束した。
あわせて、AppSourceとAzure MarketplaceをMicrosoft Marketplaceから単一の窓口として閲覧できるようにし、ここからパートナーのアプリやソリューション、サービスを提供するという。
「5万2000社の顧客や数千社の販売パートナーとの連携を強化し、月間200万人のアクティブビジターが訪れる環境を構築。Microsoft Marketplaceから1000件のリードをパートナーに提供したい」と語った。
また、Windows Server 2008およびSQL Server2008のサポート終了についても言及。「オンプレミスとして使い続けるのか、クラウドに移行するのかといった話をぜひしてほしい。だが、これはAzureへの移行を促進し、クラウドネイティブになれるチャンスであることを強調してほしい。日本には移行が必要なサーバーが約40万台もある。それらのサーバーが、パートナーの提案を待っている」とした。