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日本マイクロソフト、新たなパートナービジネス戦略と協業展開を発表

インダストリー・ワークスタイル・ライフスタイルの3分野でイノベーションを推進

 日本マイクロソフト株式会社は、8月31日に開催される「Japan Partner Conference 2018」に先立ち、パートナービジネス戦略に関する記者発表会を8月30日に開催した。発表会では、グローバルおよび国内でのパートナービジネスの取り組みを説明するとともに、同日新たに発表された、パートナー各社との協業展開の概要について紹介した。

左から:東芝デジタルソリューションズ取締役 兼 東芝デジタル&コンサルティング 取締役社長の沖谷宣保氏、NEC 執行役員の松下裕氏、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏、米マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント One Commercial Partner担当のガブリエラ・シュースター氏、博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員の佐々木学氏、カヤック 代表取締役の久場智喜氏

 まず、グローバルにおけるパートナービジネスの概況について、米Microsoft コーポレートバイスプレジデント One Commercial Partner担当のガブリエラ・シュースター氏は、「グローバルでのAzureの売上高は昨年、前期比で100%の成長を達成し、クラウドソリューションプロバイダ(CSP)は225%増加した。また、Office 365の売上高は前期比36%成長、Dynamics 365も同52%の成長となった」と、好調にビジネスが推移していると説明。

 これを踏まえたうえで、日本市場に期待する大きなビジネスチャンスとして、「東京オリンピック2020に向けたインフラの準備」、「働き方改革の推進」、「Society 5.0によるデジタルトランスフォーメーション」の3つを挙げ、「パートナー企業にとっては、新しいビジネスを構築したり、顧客への新たなソリューションを展開できるチャンスになる。そして、この取り組みが日本のGDPを高め、日本企業が世界全体を変革させていく可能性もある」との考えを述べた。

米Microsoft コーポレートバイスプレジデント One Commercial Partner担当のガブリエラ・シュースター氏

 日本でのパートナービジネス戦略については、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏が説明。

 「昨年は、“Power of Partners and Microsoft”を掲げ、デジタルマーケティングやAIなどの領域でパートナー企業とさまざまな協業展開を行ってきた。この結果、昨年1年間で800以上のソリューションを日本市場に投入することができた」という。

 「今年は、AIの民衆化に取り組むと同時に、Windows SQL Serverの最新化を進めていく。また、2025年に向けてSAPのマイグレーションにも力を注ぐ。さらに、Surface as a Serviceの展開を促進し、Surfaceの20%をas a Service化することを目指す。そして、中小企業や官公庁のクラウド化を加速することで、市場の活性化とともに、デジタルトランスフォーメーションを推進していく」と、今年のパートナービジネス戦略の方向性を示した。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏

 2020年に向けたビジネス展開としては、「インダストリー」、「ワークスタイル」、「ライフスタイル」の3つの注力分野を挙げ、それぞれの分野でパートナー企業と協業しながらイノベーションを推進していく方針。同日に発表された、新たな協業展開についても、この3つ分野でのイノベーションを実現するものとなっている。

 まず、「インダストリーイノベーション」の分野では、東芝デジタルソリューションズおよび東芝デジタル&コンサルティングと、製造業や社会インフラなど、さまざまな顧客のデジタルトランスフォーメーションの推進において協業し、Azureを活用したソリューションの共同開発・販売、デジタルビジネス戦略に関するコンサルティングを実施することを発表した。

東芝IoTアーキテクチャ「SPINEX(スパインエックス)」の概要

 東芝デジタルソリューションズ取締役 兼 東芝デジタル&コンサルティング 取締役社長の沖谷宣保氏は、「東芝デジタルソリューションズでは、東芝IoTアーキテクチャ『SPINEX(スパインエックス)』のもと、モノづくりや産業現場の知見、IoTやAIなどの先端技術を結集し、デジタルトランスフォーメーションを実現するソリューションを提供してきた。今回の協業に伴い、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連ソリューションをAzure上に実装・開発し、提供していく。これに向けて、すでに300人を超えるAzureエンジニアを育成している。また、東芝デジタル&コンサルティングでは、東芝デジタルソリューションズと連携し、顧客のデジタルトランスフォーメーションを実現するAzure上のソリューションや運用サービスを提供していく」と述べた。

 この協業の第1弾として、東芝デジタルソリューションズのIoTを活用した産業機械・設備の見える化クラウドサービス「IoTスタンダードパック」をAzureに対応し、同日から提供開始した。Azureの活用により、監視対象の規模拡張にともなうスケーラビリティ性の向上や、導入期間・コストの大幅な削減、顧客ごとのアドオンアプリケーション開発やAzure上のさまざまなアプリケーションとの連携を可能にし、顧客の要件に柔軟に対応したソリューションを提供可能になったという。

東芝デジタルソリューションズ取締役 兼 東芝デジタル&コンサルティング 取締役社長の沖谷宣保氏

 「ワークスタイルイノベーション」の分野では、NECとの協業により、クラウドソリューション「Microsoft 365」導入時に必要なサービスを組み合わせたフルマネージド働き方改革サービス「NEC 365」を共同開発し、同日からNECで販売活動を開始した。「NEC 365」は、Windows 10やOffice 365が利用できるMicrosoft 365に加え、約300社/約100万ユーザーのOffice 365導入実績で培ったノウハウをもとに、運用管理者が直面するクラウドサービス特有の課題を解決する、NEC独自の付加価値サービスを提供する。

「NEC 365」のサービス概要

 NEC 執行役員の松下裕氏は、「当社は、これまで数百社の顧客にOffice 365やMicrosoft 365を導入してきた実績を持っている。今回の『NEC 365』は、この導入実績と膨大なノウハウを集約し、サービスとして提供することで、顧客の働き方改革の実現を多角的かつ継続的に支援する。具体的には、Microsoft 365をスムーズに導入、利用、運用、保守していくために必要な機能を、導入・運用・セキュリティ・利活用促進・利便性向上の5カテゴリに分け、全15のサービス群を用意。働き方改革実現へのステップで必要となる機能や情報を継続的に提供していく」と、サービス概要について紹介した。

 なお、「NEC 365」で提供される各サービスは、日本マイクロソフトのプレミアサポートの技術者向け、教育サービス・問い合わせ対応・最新情報提供サービスなどの支援を受けた開発・サポート体制のもと、提供されるという。また、両社の顧客に対して、両社共同で「NEC 365」の提案活動を行っていく。

NEC 執行役員の松下裕氏

 「ライフスタイルイノベーション」の分野では、ソーシャルAIチャットボット「りんな」のテクノロジーを応用した、新たなAIデジタルマーケティングソリューション「Rinna Character Platform」を同日から提供し、ソリューションパートナーとして、カヤック、電通、博報堂アイ・スタジオの3社が参加することを発表した。

 「Rinna Character Platform」は、“女子高生AI”の「りんな」のテクノロジーを活用した法人向けデジタルマーケティングソリューションで、用途に応じて性別や口調などをカスタマイズした独自のAIキャラクターを新たに作ることができるという。

「Rinna Character Platform」の概要

 ソリューションパートナーとして参加するカヤック 代表取締役の久場智喜氏は、「当社は、テクノロジーを使って面白いモノを作るクリエイター集団となっている。今回、『りんな』のテクノロジーと当社のクリエイティビティを組み合わせることで、ユーザーに対してより面白い体験を提供できるようになるとワクワクしている」と語った。

カヤック 代表取締役の久場智喜氏

 博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員の佐々木学氏は、「これからの時代は、単なる顧客体験だけでなく、継続的な顧客接点を作っていくことが重要になってくる。その中で、今回の『Rinna Character Platform』は、顧客に対して新しいクリエーティブの表現が可能になると期待している。このテクノロジーを活用して、世の中が少しでも便利になるソリューションを提供していきたい」と意欲を見せた。

博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員の佐々木学氏

 「Rinna Character Platform」のシステムは、基盤となる「雑談会話モデル」、プロダクトやサービスのおすすめなどを行う「レコメンド機能」、ゲームなどファン要素を担う「スキル」で構成される。法人の顧客は、「Rinna Character Platform」を活用して、マーケティングに用いるAIキャラクターを構築することで、企業側からの一方的な情報発信ではなく、ユーザーとキャラクターの間で感情的なつながりを重視した双方向コミュニケーションが可能となる。その結果、ユーザーに企業への親近感を持ってもらうとともに、ユーザーからより自然にフィードバックを収集することができる。