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エンタープライズITに迫りくるエッジコンピューティングの足音―― VMwareが「Amazon RDS on VMware」「Project Dimension」などを発表

~VMworld 2018 初日キーノート

 「私は30年以上にわたってITの世界で生きてきたが、いまが一番エキサイティングでおもしろい時代だと感じている。今回は私にとって6回目のVMworldだが、あらためてこの会社のCEOとしてこの場に立てることをうれしく思う」――。

 米VMwareのCEOであるパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏は、8月27日(米国時間)、米国ラスベガスで開催された米VMwareの年次プライベートカンファレンス「VMworld 2018」のオープニングキーノートで、2万1000名を超える聴衆を前にこう語った。

米VMwareのパット・ゲルシンガーCEO

 今年で創立20周年を迎えるVMwareはvSphere、NSX、vSANなど数々のイノベーティブなテクノロジーを世の中に送り出してきた。では“ITがもっともエキサイティング”という現在、インフラベンダーとしてのVMwareは次世代のインフラをどう見据えているのだろうか。

 本稿では、VMworld 2018の初日に発表されたアップデートから5つを取り上げ、VMwareが描いている次世代のITインフラについて検証してみたい。

1998年の創業から今年で20周年を迎えるVMware

Amazon RDS on VMware:よりタイトになるAWSとの連携

 ちょうど1年前のVMworld 2017で、オレゴンリージョンでのローンチが発表された「VMware Cloud on AWS」だが、当時は“Initial Availability”という、機能も顧客も非常に限定された状態での提供だった。

 あれから1年が経過した今回、昨年と同様AWSのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOがオープニングキーノートに登壇し、ゲルシンガーCEOとともにこれまでの両者によるマイルストーンを振り返っている。

昨年に引き続き、AWSのアンディ・ジャシーCEO(右)オープニングキーノートのゲストに登壇、Amazon RDS on Vmwareなど大きな発表を直接行っている

 VMware Cloud on AWSでは、ほぼ四半期に一度のペースで“1つのリージョンと1つのサービス +アルファ”といったボリュームでのアップデートが行われてきた。対象リージョンはバージニア、ロンドン、フランクフルトと増え続け、利用可能なサービスも単なるホスト単位でのSDDC製品(vSphere、vSAN、NSX、vCenter)の利用から、VMware Site Recovery、マルチAZ(Availability Zone)サポート、Horizon 7、Elastic DRSと拡充してきている。

 そして5回目のアップデートである今回では、シドニーリージョンのローンチ、vSANにおけるEBS(Elastic Block Storage)のサポート、数千単位の仮想マシンをまとめてオンプレミスからVMware Cloud on AWSに移行するバルクライブマイグレーション、最新のIntel Skylakeプロセッサを採用したER5.metalインスタンスの利用、NSXとAmazon Direct Connectの統合などが発表されている。

 アップデートのペースも内容も、今後はこれまで以上のスピードとボリュームで進んでいく予定で、この1年でVMwareとAWSの両者が“チーム”として密接な関係を築いてきたことがうかがえる。

 さらにジャシーCEOは、近い将来におけるアップデートの内容についてもいくつか言及している。その中でも興味深いのが、2019年第2四半期における大阪ローカルリージョンでのローンチと、「Amazon RDS(Relational Data Service) on VMware」だ。

 前述したように現時点では5つのリージョンでの利用が可能となっているが、2018年中には東京や米国政府専用リージョンのAWS GovCloud(米国西部)を含む5つのリージョンが追加される予定となっている。

 これに加え、ジャシーCEOは2019年度の予定を明らかにしており、第1四半期にはシンガポールなど4つのリージョン、第2四半期には大阪ローカルリージョンを含む4つのリージョンでVMware Cloud on AWSが新たに利用可能となる。

 2019年の上半期に大阪ローカルリージョンでの利用が可能になることは予想外の発表で、日本のユーザー企業、特に東京と大阪でのディザスタリカバリを要望する企業の声に応えた格好だ。VMwareとAWSの両社が、ともに日本市場を重視していることをあらためて示したといえる。

オレゴンリージョンだけでスタートしたVMware Cloud on AWSだが、この1年でリージョンは5カ所に増え、2018年Q4には東京での提供も始まる。大阪ローカルリージョンの2019年Q2開始は予想外に早く、VMware関係者からも驚きの声が上がっていた

 もうひとつの発表である「Amazon RDS on AWS」もまた、会場から驚きの声をもって迎えられたニュースだ。ユーザーはプライベートなVMware環境において、OracleからMariaDBまで、AWSが提供する豊富なRDSメニューから好きなデータベースサービスを選んで利用することができる。

 もともとVMware on AWSの構想が発表された時点から、VMwareの製品/サービスをAWS上から利用するだけでなく、AWSのマネージドサービスをオンプレミスからシームレスに利用できるようにする計画は明らかになっていたが、Amazon RDS on AWSはそれを具現化した初めてのケースとなる。

会場を沸かせたAmazon RDS on AWSの発表。プライベートなVMware環境でAWSのマネージドサービスが使えるようになるのは、今回が初めて

 「VMware Cloud on AWSはわれわれの顧客にとって最高のパブリッククラウドジャーニーとなる」――。キーノートに登壇したVMwareのレイ・オファレル(Ray O'Farrell)CTOは、VMware Cloud on AWSをこう表現している。この1年で広さと深さを増した両社のパートナーシップだが、イノベーションのスピードもその内容も、これからさらにアップグレードしていくのは間違いない。

ゲルシンガーCEO(左)とともに、今回発表されたテクノロジープレビューを紹介するレイ・オファレルCTO(右)。VMwareには部門ごとにCTOが存在するが、オファレル氏はその最高責任者となる