大河原克行のキーマンウォッチ

これまでの当たり前を捨て、必要なものをいかに強くしていくか――、NEC・新野隆社長が語る「119年目の大改革」

 日本電気株式会社(以下、NEC)が、新たな中期経営計画に挑んでいる。

 2018年1月に発表した新中期経営計画では、2020年度に売上高3兆円、営業利益1500億円、営業利益率5.0%を目標に掲げている。数字の上では、前中期経営計画が掲げた2018年度の達成目標を後ろ倒しにしただけに見えるが、グローバル事業の拡大やセーフティ事業の成長など、その内容は大きく異なる。

中期経営計画の目標(2018年1月のNEC記者会見より)
中期経営計画のロードマップ(提供:NEC)

 そして新野隆社長は、その達成に向けた強い決意を裏づけるように大胆な人事や組織改革を実行。GEジャパンで34年間にわたり、グローバル事業の経験と実績を持つ熊谷昭彦氏を副社長として招聘(しょうへい)し、グローバルBU(ビジネスユニット)長に登用するなど、これまでのNECのなかでは異例ともいえる、外部の血を積極的に入れ始めた。

 「2018年は、変革に向けたギアチェンジの年。これまでの『当たり前』を捨て、本当に必要なものを、いかに強くしていくかに取り組むことになる」と語る新野社長に、NECのこれまでとこれからを聞いた。

NECの新野隆社長

“119年目の大改革”

――2018年4月以降、新野社長が「変わった」という声を聞きます。NECは2018年を、「119年目の大改革」と表現し、「変革に向けたギアチェンジの年」と位置づけていますが、むしろ、新野社長自らがギアチェンジしたように感じます。

 私は、2016年4月の社長就任と同時に、3カ年の新たな中期経営計画をスタートしました。この中期経営計画は、遠藤さん(=遠藤信博前社長、現代表取締役会長)から、「社長になるのだから次の中計は自分で作れ」と言われ、私が策定し、私が自分の責任で推進しました。

 しかし、外部環境の変化などがあったものの、1年とたたずにボロボロの結果になってしまった。なにが悪かったのだろうかと自問自答したときに、実は、なにも変わっていない、これではまったく駄目だということに気がついたのです。

 NECの社員には頭のいい人たちが多い。特に、いままでやってきたことを学習しながら発展させていく能力には長けています。言われたことを一生懸命やるというのは日本人の体質ともいえますが、NECの社員はその傾向がさらに強い。その背景には、ビジネススタイルが、長年にわたってお客さまからの要望を実現するというものであり、エンジニアも、SEも、営業も、すべてが同じ姿勢。なにをするかということを考えるよりも、言われたことを最高の技術を使って最後までやり遂げる、というのがNECのビジネスのベースであり、NECの成長を支えてきたやり方だったわけです。

 その結果、尖った社員が少なくなり、仮に尖った人がいても、「そんなことはやるな」とさえ言われる雰囲気がありました(笑)。

 しかし、いまは仕事のやり方が大きく変わり、ビジネスも大きく変わらなくては、企業は生き残れません。NECの社員は、「自らが変化をして、自らが市場を作っていく」というやり方に変えなくてはなりません。それを頭ではわかっていても、足腰が変わっていかない。

 2017年4月に、わずか1年で中期経営計画の撤回を発表したわけですが、1年目の結果を見たときに、「これだけ世の中が変わっているのに、頭だけで考えようとしている。実行力がまったく追いついていない。その姿勢を根本的に変えないといつまでたってもかわらない」ということを実感したのです。

 「ギアチェンジ」といったのは、ご指摘のように、社員もギアチェンジをしなくてはいけませんが、私もギアチェンジをしなくてはいけないということです。私の経営スタイルは、できる人間を配置して、ある部分は自由にやってくれというものでした。権限を委譲しながら、責任をもってやってもらえばいいと思っていたのですが、1年やってみて、それが結果につながらない。このやり方では駄目だと判断したのです。

 そして、NECにいる人材だけでやっていても成長には限界がある。外からもいろいろな人にきてもらうことで、社内を変えていくことが大切です。それによってNECが変わることができる。だからこそ、「全員がギアチェンジをしてほしい」と社員にいっています。

――社長就任直後のインタビューでは、社長が各地に出向いてタウンミーティングで話すと、一度の機会で終わってしまうが、危機感を共有した経営陣や事業部長クラスが、現地で何度も繰り返し話すことで、危機感を共有できるとしていました。これも権限委譲のひとつの形と見ていましたが。

 いまは、社員とともに変革を進めていくために、私自身が全国の拠点をまわり、対話会を実施しています。2018年7月末までに26回の対話会を開催し、約1万人の社員と対話をしました。

 また、約30人の現場のエース級人材を“変革の推進役(Change Agent)”に任命して、2018年7月から変革プロジェクト「Project RISE」を本格的にスタートしています。

対話会での新野社長(提供:NEC)

外からの「血」を取り入れて変革を推進

――中期経営計画の未達が続いています。社内には「負け癖」のような意識が定着してはいませんか。

 中期経営計画を作ると、大半の社員が「3年後に、こんな数字はできっこない」と思ってしまう。「そんなことを言われても難しいし、自分は、いまやらなくてはならないことをしっかりとやっている」という雰囲気が社員の間にありました。

 「しらけムード」があったのは確かです。それでも経営陣は、これをやるんだと言い切る。その結果、経営と現場がどんどん乖離(かいり)してくる。

 私は、「負け癖」というよりも、社員が「なぜ、それをやるのか」ということを理解していなかったり、「自分たちが努力すれば達成できるんだ」という意識が希薄だったりしたためだと感じています。それがまん延しているから、未達の繰り返しになる。

 だから、トップが現場に行って、なんのためにこれをやるのかということを言い、「こうやったら達成できる」「もし達成に向けた阻害要因があるのならば言ってくれ。絶対に解決する」という話をしています。

 私は、経営と社員の信頼関係がすべてだと思っています。経営と現場の信頼関係がないと動かない。それが醸成できていなかったことを強く反省しています。まずは、そこからやらないといけないと思っています。

――外からの「血」を入れるということでは、2018年4月1日付で、GEジャパンの社長だった熊谷昭彦氏を副社長として招聘しました。

 NECのグローバル戦略は、グローバルビジネスユニットが営業機能と地域を統括する役割を持ち、事業責任は国内にある各ビジネスユニットが持つ、という仕組みを長年続けてきました。

 しかし、その体制のなかで、さまざまな手を打ってきたものの一向に成果が出ない。どうしても各ビジネスユニットとの利害関係が発生し、スムーズにビジネスが動かない。1年やってみて、この延長線上で続けても駄目だと判断しました。

 そこで新たな体制では、グローバルで責任を持てる事業は国内事業から切り離し、それをグローバルビジネスユニットに移管して、製販一体の体制としました。以前から国内でやってきたやり方と、これからグローバルで成長するやり方とは違います。

 同じマインドではできないし、同じ経営体制ではできない。まずはグローバル事業における責任と権限を一元化することで、収益構造の立て直しに着手したのです。

 では、その新体制で、グローバルビジネスを誰にやらせようかと考えたときに、5000億円のビジネスにまで拡大させ、そこで利益をしっかりと出していくかじ取りを、NEC社内のグローバル事業経験者に任せるには荷が重い。ここには、グローバルビジネスで実績をあげた経験者に来てほしいと思っていました。

 そうしたなか、NECとGEデジタルが一緒に仕事をする経緯で、熊谷さんがGEジャパンを辞めるという話を聞き、「ぜひ一緒にやってほしい」とお願いしたわけです。GEのやり方にはいいものが多いですが、そのままNECに当てはまらないものもある。

 しかし、グローバルでどうやっていけばいいのかという知見とノウハウには、大いに期待しています。

熊谷昭彦氏を副社長として招聘するなど、改革を進めているという(提供:NEC)

――熊谷副社長には、具体的には、どんな点を期待していますか。

 私は、グローバルビジネスに関しては、かなりの部分を熊谷さんに任せようとしていますし、そのために、かなり緊密なコミュニケーションを行っています。例えば、モバイルバックホールのパソリンク事業はずっと赤字ですが、手がつけられない状態にあります。いままでのしがらみを一度断ち切って、将来に向け、どうすればいいのかということを、事業の観点から冷静な目で見て、やるべきことはやっていこうと考えています。この部分についても、私が熊谷さんをしっかりとサポートし、一心同体の形で取り組んでいきます。

 外から熊谷さんのような人材が来るということは、いままでのNECにはないことでしたから、社員も心配をしていたところがありますし、正直、私も心配していた部分がありました(笑)。しかし、これまでの約5カ月間を振り返ると大正解ですね。

 「なんのために、これをやっているの」と熊谷さんが聞くと、社員も、「これはやめてもいいのではないか」「これは変えられるのではないか」「これは現地にもっと責任を持たせた方がといいのではないか」といったように、次々とアイデアが出てきます。

 いままでの自分たちが気がついていないことに気がつき、それを変えなくてはいけないということを社員が理解しはじめています。熊谷さんも頭ごなしにガンガン言わないタイプなので(笑)、必ず人の話を聞いて、良いとは良い、悪いことは悪いと判断する。しかも、決断が速い。クイックレスポンスで物事を進めてくれています。これは、NECが弱かった部分でもあり、そうした風土改善にも貢献してくれています。

 もちろん、外から人を持ってくればそれで終わり、とは思ってはいません。いままでと違う変化を与えながら、自分たちがどう変わらなくてはいけないのかということを、NEC社員が身をもって考えていかないと、これだけ大きなずうたいは変わっていきません。

 こうした新たな流れを、強い力に変えていくことが大切だと思っています。

 NECにとって、ずっと懸案だったグローバルビジネスをギアチェンジするだけでなく、これまでの「当たり前」を捨て、本当に必要なものをいかに強くしていくか、という点において、組織を変えて新たな人に入ってきてもらったわけです。

――外からの「血」としては、新設した「カルチャー変革本部」に、日本マイクロソフトなどで人事部門の責任者を歴任した佐藤千佳氏を執行役員本部長として起用しました。

 佐藤さんには、新設したカルチャー変革本部の本部長に就任してもらい、社員一人ひとりが実力を最大限に発揮できる文化への変革を図ります。新たな人事評価制度の導入により、厳しく成果を評価し、これを報酬に反映する仕組みや、変革を促すためのコミュニケーション、オープンでカジュアルな風土の醸成を担ってもらうことになります。

 NECの人事制度は、これまでにもいろいろなことに取り組んできましたが、どうしても古い制度を引きずる傾向が強く、現場の変化に追随できているとはいえませんでした。一人ひとりを育成し、いかにチームとして強くするかを考えないと、組織は発展しません。プロフェッショナル人材を外部から入れることで、人事面からも変化を起こすことになります。

――一方で、CFO(最高財務責任者)には、経理畑での経験がなく、グローバル経験が長い森田隆之代表取締役 執行役員副社長が就きました。この人事の狙いはなんですか。

 これまでのNECを振り返ると、人事部門と経理・財務部門の人事はアンタッチャブルだったといえます。その道のプロがずっとトップに就くという流れでした。

 それはある時代は当たり前の仕組みであり、その方がよかった時代でもありました。NECは苦しい時期が続いていたので、絶対に踏み外さない、絶対にこけない「守り」の経理・財務体制を敷いていました。

 しかし、これからNECが本当に変わっていく、攻めていく、グローバルに出ていくというときに、もっと経営のノウハウを持ち、打って出るマインドを持った人材が、経理・財務部門にも必要です。

 変わろうとしたときに、人事部門や経理・財務部門がアンタッチャブルというわけにはいきません。経理・財務部門も、自分たちの仕事は、経理・財務の仕事だけでいいというような考え方では通用しなくなっています。

 大きく変えていくにはそのマインドを変える必要があります。

「経営の継承」は維持

――社長就任直後にインタビューした際に、「経営の継承」という言葉を使っていたのが印象的でした。昨今の取り組みを見ていると、これを撤回したように感じますが。

 「経営の継承」という姿勢は変わっていません。過去のNECの社長交代は、どちらかというと前社長のやり方を意識的に変えるという姿勢が見られました。もちろん、変えた方がいい部分もありますし、継承した方がいいものもあります。

 しかし、いずれにしろ、経営がぶつ切りになっていた部分がありました。社長が代わるたびに経営方針が変わるというやり方は、私から見れば、結果として悪い方向に振れたと見ています。

 従来は、ネットワークはネットワーク、ITはITというように縦割りの組織であり、NECのすべてが見えるのは、社長という立場しかありませんでした。

 それは、まったくもって会社としておかしい。そこで、遠藤さんの社長時代の2012年から経営チームという仕組みを導入し、そのメンバー全員が、社長の立場に立って会社をどうしていくのかを考える体制を取りました。

 仮に、私が社長を辞めて新たな人が社長になっても、経営チームは基本方針を継承していくことになります。これが、私が言っている「経営の継承」という意味になります。

 次の社長は、生え抜きである必要も、日本人である必要もないとは考えていますが、NECという会社は、ほかからポンと来てトップについて大なたを振るっても、すぐには変わりません。

 いまは、NECのなかに、スーパーマンと言える人材はいませんし、一人が引っ張っていく会社でもありません。私は、経営チームとして、誰をトップに据えたときに、一番強い経営チームになるのかということを考えています。次の経営チームをどう作っていくのかということをまず考えて、次の社長を選んでいきたいと思っています。

――NECの社長としては、すでに後半戦に入っていますか(笑)

 その答えは、影響が大きすぎるので言いません(笑)。

――2018年1月からスタートした、新たな中期経営計画の進行の手応えはどうですか。

 新中期経営計画は、「社会ソリューション事業で貢献する」という方向性は従来と変わりません。ただ、これをどう実行していくのかという点で、弱さがあったことを反省し、やるべきことをやっていくためにはどうするか、ということにフォーカスをしています。

 中期経営計画のなかでもっとも重要なのは、実行力の改革です。以前からの「自前主義」を排除し、あらゆる手を使いながら、計画の実行性を高めることに取り組んでいます。

 2018年8月までの動きを振り返ると、当初想定していたことに対しては計画通りですが、実績といえるところに至るまではまだまだだと感じています。

――NECは、ピークとなった2000年度の売上高が5兆4097億円、営業利益は1851億円でした。しかし、2017年度実績は、売上高2兆8444億円、営業利益は639億円(2017年度はIFRSを適用)と、ほぼ半減しています。今後のNECが目指す姿はどうなりますか。

2017年度の実績サマリー(2018年4月のNEC記者会見より)

 ひとことでいえば、NECが目指す姿は、「社会価値創造型企業」です。5~10%という、きちっとした利益率を確保できる会社に変わっていき、そのビジネスモデルによって、社会に貢献する企業を目指します。売上高をむやみに大きくすることに、力を注ぐつもりはありません。

 ただ、いまのNECの社会への貢献や、お客さまとのつながりを考えた場合に、1兆円の売上高で、世界になくてはならない企業だといえるのか、という言い方もできます。その観点からとらえれば、売上高は、4兆円、5兆円と伸ばしていきたい。

 大切なのは、NECは、どの領域で、なにを強みにして、そのポジションをとっていくのかということです。その領域における価値が大きければ、売り上げも利益も大きくなります。

 NECはこれまで、国内SIビジネスを中心に事業を推進してきましたが、そのために、ハードウェアもソフトウェアもすべてを自前で持つことにこだわってきました。

 しかし、いまのSIビジネスは、あちこちからハードウェアやソフトウェアを持ってきて、それをインテグレーションする仕組みが一般化しています。これが進んできたときに、NECがコアとする製品はなにかということを考える必要があります。

 すべてのものが変わり目を迎えていますから、汎用コンピュータやスーパーコンピュータといったコアとなる製品や技術を自前で持っていることがいいのか、ネットワークについても、NTTグループに対してさまざまな機器提供を行ってきているが、5G時代においては、ハードウェアをどう位置づけるのか、ネットワークのグローバル展開をどうするのかといったことも考える必要があります。

 5%の営業利益率は、赤字の事業をやめたり、組織をスリム化したりすれば到達するでしょう。しかし10%の営業利益率を出すには、いまの会社の仕組みを大きく変えないと実現しません。そのなかには、営業利益率20%のビジネスを新たに作っていくことも必要です。

 システムインテグレータのなかには、営業利益率で10%以上を達成している会社もありますが、それは、かなり領域を特化していることが背景にあり、NECが同様のことをやることはできません。NECは、国内のあらゆる産業にお客さまがいて、置かれた立場が違います。SIだけで、営業利益率を改善したり、売り上げを伸ばしたりできるとは考えていません。

 また、NECが進んでいる道は、システムインテグレータを目指しているIBMとも、富士通とも違います。日立や東芝のように強いハードウェアを持っている企業とも違います。どこかをベンチマークしたり、手本にしたりというよりも、むしろ、われわれ自身がNECの次の姿を作っていかなくてはなりません。

“世界で通用する技術”を生かしたビジネスモデルをどう作るか

――では、NECの次の姿とはどんなものになりますか。

 GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のような企業は、グローバルプラットフォームをしっかりと作っており、そこにわれわれが追いつくことはできません。しかし、NECには、最先端AI技術群である「NEC the WISE」のような世界で通用する技術があります。これらを使ったビジネスモデルをどう作るのか、といったことに力を注ぐことになります。

 また、データ分析をAIで自動化する新会社であるdotDataや、新事業開発を加速するためのNEC Xを、それぞれシリコンバレーに設立するといった取り組みを通じて、オープンイノベーションによる事業化を推進することにも力を入れています。

 われわれがうまくやればビジネスとして成立できそうなものもあり、そこで、グローバルプラットフォーム上のマイクロサービスとして、われわれがどう提供できるのかを進めていくことになります。また場合によって、この技術を売却したり、パートナーシップを組んで成長させたりしていく、という判断をすることもあるでしょう。

 世界中を見渡しても、NECのように研究部門を持って、優れた技術を有している企業はあまり多くはありません。そこがNECの強みだといえます。

 しかし、これまでのNECは、いい技術があっても、それを知ってもらうことに課題があり、ビジネスにつながっていないという反省がありました。

 では、それをマネタイズするにはどうするか。外でどんどん使ってもらって、それを評価してもらって、駄目ならばやめればいい。モノになるのであれば、自分でやっても、売ってもいいという判断もする。いい技術が10個あったとしても、それに1000億円ずつの投資をすることはできません。それは米国や中国の企業と立場が違う。最適な出口を判断すればいいと思っています。

 悪いパターンは、いい技術を持っていても、国内でじっくりとPoCをやり、いよいよ世界に出すといった段階では同じようなものが世の中にたくさんある、というスピードの欠如です。これが繰り返され、いい技術を持っていてもマネタイズできないということにつながっていました。大きく反省しなくてはならない部分です。

 その一方で、NECは、ネットワークを早くやめた方がいいのではないかという声もありますが(笑)、IoTの世界では、ITとネットワークが重要であり、エッジにおいても、クラウドにおいても重要な技術であり、ビジネスになります。

 またセーフティの領域でも、セキュアで低遅延なネットワークを持っていることが強みになります。グローバルプラットフォームには太刀打ちできませんが、AIとネットワークの優れた技術を持っていることは、NECの強みになります。

dotDataやNEC Xの設立など、新たな取り組みを進めている(提供:NEC)

――グローバルビジネスを成長の柱に据える一方で、国内エンタープライズ事業への取り組みがおろそかになる可能性はありませんか。

 国内の成長率は、パイが決まっています。これからNECが成長を遂げるには、グローバルで成長していくことが不可避です。

 しかし、国内ビジネスは足元のビジネスとして重要であり、そこに対する力の入れ方に変化はありません。2020年に向けては旺盛な需要がありますし、ガバメントクラウドといった新たな領域のビジネスも動き始めます。さらに、2025年に向けたSAP関連需要も大きなビジネスになる。国内のSI事業やクラウド事業は、むしろ人が足りないほどです。

――いま、NECが抱える課題はなんでしょうか。

 ひとことでいえば、社内の「文化」です。技術、顧客、競合、市場のすべての環境が変化しています。変化対応力が、企業の強さを決める要因ですが、そこに課題があります。現場の社員までを含めて、自分で市場を見て、自ら考えて、指示を待たずに自ら行動するということができていない。外から来た人に見てもらうと、明らかにNECのやり方は遅れていることがわかります。

 文化を変えるには、少なくとも10年はかかります。だから、文化を変えるというよりも、いま、大切なのは、それを変える仕組みや仕掛けを早く作って、それを回すということです。企業文化や制度、仕組みから抜本的に変革し、社員の力を最大限に引き出すことで強いNECを取り戻したい。そのために、この1年間で徹底的に変えていきます。

 2018年は変革に向けた「ギアチェンジ」の年。「119年目の大改革」として、これまでの当たり前を捨て、本当に必要なものをいかに強くしていくかに徹底的に取り組んでいきます。私は社長として、この大改革をやり遂げられると思っています。