ニュース

NECの2018年度第1四半期連結業績、営業損失107億円も赤字幅は縮小

 日本電気株式会社(NEC)は7月31日、2018年度第1四半期(2018年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比5.2%増の6129億円、営業損失は前年同期の144億円の赤字から改善したものの、107億円の赤字。税引前損失は前年同期の71億円の黒字から47億円の赤字に転落。当期純損失も前年同期の78億円の黒字から、57億円の赤字となった。税引前損益および最終赤字への転落は、前年同期に計上したNECトーキン、ルネサスエレクトロニクスの株式売却益などの特殊事情の反動として、マイナス156億円の金融損益等の影響がある。

2018年度第1四半期 実績サマリー

 NECの森田隆之代表取締役執行役員副社長兼CFOは、「エンタープライズ、パブリックを中心に好調に推移している。特に、金融、流通、製造などの民需分野では受注が極めて好調である。市場全体が活性化しており、受注するには人が足りない状況にあるという声もある。本業では、当社の計画に対してオントラックで進んでいる」と総括した。

ECの森田隆之代表取締役執行役員副社長兼CFO

セグメント変更を実施し、グローバルセグメントを新設

 なお、今回の決算発表からセグメント変更を行い、「グローバル」のセグメントを新設した。森田副社長兼CFOは、「NECが海外事業に集中し、成長させていくために、事業責任と権限を一元化したマネジメント体制でスピードを向上させることが目的である」と説明。

 「海外市場を中心に展開する事業を集約し、事業責任と権限を一元化したワンマネジメントで経営スピードの向上や、成長事業への集中投資、コスト削減などを図るのが目的である」とした。

 従来のテレコムキャリアセグメントの海外サービスプロバイダ向けソフトウェア・サービス事業、ワイヤレスソリューション事業、海洋システム事業、システムプラットフォームセグメントの海外向けユニファイドコミュニケーション事業、ディスプレイ事業、その他セグメントのエネルギー事業を含めた。

 また、テレコムキャリアセグメントを、ネットワークサービスセグメントに改称。「テレコムキャリアからグローバル関連事業を、グローバルセグメントに移行。さらに、5G時代の到来をにらんで、テレコムキャリア市場で培ったネットワークの強みを、サービスプロバイダや製造業、流通・サービス業、自治体などの市場に展開し、事業の方向性をシフトするものになる」と説明した。

セグメント変更の概要

セグメント別業績

 セグメント別業績は、パブリックの売上高は前年同期比8.7%増の1955億円、営業利益は前年同期から33億円増となり25億円の黒字に転換。「社会公共領域は中堅、中小向けが増加。社会基盤領域は航空宇宙、防衛向けが増加している」という。

 エンタープライズは、売上高が前年同期比9.5%増の962億円、営業利益は前年同期から14億円減の36億円。「コンビニエンスストア向けが好調な流通・サービス業向けや、保険業が好調な金融業に加えて、製造業を含めたすべての領域で売り上げが増加した。システム構築サービスも増益となり、実質的には増益だが、AIやIoT関連の投資費用の増加により減益になった。これまでコーポレートで負担していたものが、商用段階に移行したことで、ビジネスユニットでの開発費負担に見直したことが要因」という。

パブリックの概況
エンタープライズの概況

 ネットワークサービスは、売上高は前年同期比0.7%増の776億円、営業損失は前年同期から16億円悪化の22億円の赤字。「通信事業者の設備投資が依然として低調であり、これはあと1年ぐらいは続くだろう。5Gなどの投資費用の増加に加えて、プロダクトミックスが悪化。だが、この減益は当初想定した範囲内である」とした。

 システムプラットフォームは、売上高は前年同期比0.1%増の1084億円、営業損失は前年同期から21億円悪化し、36億円の赤字となった。

 「システムデバイスは減少したが、サーバー、ストレージ、企業ネットワークが増加。だが、一部プロジェクトが戦略受注ということもあり、期をまたぐ形で影響。ハードウェアの一時的な収益性悪化がみられた」という。

ネットワークサービスの概況
システムプラットフォームの概況

 グローバルは、売上高は前年同期比0.8%増の971億円、営業損失は前年同期から5億円悪化の82億円の赤字となった。「海洋システムが減少したが、セーフティの増加などにより増収になった」としたほか、「買収した英ITサービス企業のNorthgate Public Services(NPS)の新規連結効果もあり、セーフティの売上高は前年比倍増となった。英国最大規模の警察であるロンドン警察庁、英国3番目であるウエストミッドランドポリスの犯罪事案管理システムを受注。NPSとのシナジーも出てきている。NECが買収し、NPSの財務基盤が確立できたことで、ロンドン警察庁などの顧客を獲得できた」とした。

 また、「海洋システム領域は、大型案件の谷間にあり、一時的な減少はある」としたものの、インドのチェンナイとアンダマン・ニコバル諸島を結ぶ光海底ケーブル敷設プロジェクトを受注。アジア地域内の11拠点を結ぶ光海底ケーブル敷設プロジェクト「SJC2」も受注した。

 「GoogleやAmazonが自ら海底ケーブルの敷設にかかわってくるという傾向が出てきている。それにより、価格や技術に対する要求も強まっている。だが、これは市場が活性化している証しであり、フルターンキーで提供できるNECの強みも生かせる。当面の需要は堅調であり、第2四半期には、工場の生産を拡大すべく準備をしている。年間で前年実績を上回ることになる。きちっと技術開発を進めて、市場ポジションを維持したい」とした。

 さらに、「サービスプロバイダ向けソフトウェアおよびサービスは、SDN/NFVの開発費の抑制と商用化が進んだことで導入が拡大。通期では増収増益を見込める。パソリンクによるワイヤレスソリューションでは、500億円規模の事業であり、シェアも20%を持っているが、収益重視の戦略へと転換。海外拠点の構造改革や製品ラインアップの縮減、利益が出ない顧客への販売活動の抑制を進め、2019年度の黒字を目指す」とした。

グローバルの概況
グローバル事業の状況

 その他事業では、売上高が19.1%増の382億円、営業利益は50億円増の32億円と黒字化した。

 同社では、第1四半期のトピックスとして、エコシステムを活用しながら新事業開発を加速し、スピードをあげた商用化につなげるために、NEC X,inc.をシリコンバレーに設立。オープンイノベーションによる事業化を推進。アウトバウンド型の事業を立ち上げるほか、dotData,incに続き、中央研究所の技術をベースに、事業化を複数進めるための多様なスキームの活用で競争力がある技術のマネタイズを加速させるという。

 さらに、カルチャー変革の実行として、NECを根本から変革するために、日本マイクロソフトなどで人事部門のトップを歴任した佐藤千佳氏を招聘(しょうへい)して、Project RISEを始動。経営陣を中心に結果を厳しく問う評価制度を導入して、事業責任をより明確化。全社員に適用する行動基準を再策定したことを示した。

経営トピックス

2018年度の業績見通しは据え置き

 一方、2018年度の業績見通しは、4月27日公表値を据え置き、売上高は前年比0.5%減の2兆8300億円、営業利益は同21.7%減の500億円、当期純利益は同45.5%減の250億円としている。

 「構造改革費用として、一過性の悪化要因として400億円を織り込んでいる」とした。

業績予想サマリー

 セグメント変更に伴い、セグメント別業績見通しも一部変更した。

 パブリックの売上高は公表値に比べて50億円減の9450億円、営業利益は同30億円減の610億円。エンタープライズは、据え置き、売上高が4100億円、営業利益は320億円。ネットワークサービスは、売上高は同2050億円減の3600億円、営業利益は同10億円減の110億円。システムプラットフォームは、売上高は同1800億円増の5100億円、営業利益は同20億円増の320億円。

パブリックの見通し
エンタープライズの見通し
ネットワークサービスの見通し
システムプラットフォームの見通し

 新設したグローバルは、売上高は5050億円、営業利益はブレークイーブンとした。「NPSで300億円の増収効果があるが、オーガニックでも100億円規模の増収がある」(同)という。その他事業では、売上高が公表値と比べて1150億円減の1000億円、営業利益は据え置き150億円とした。

 「優先するのは利益確保である。まずは、普通の企業が達成している、営業利益率5%を目指す立場にある。それを達成した時点では、海外事業も相当の規模および利益を得ることができるようになる」とし、「2020年度の営業利益率5%の達成を、マネジメントとしてコミットし、実行していく」と述べた。

グローバルの見通し