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NEC、2017年度の連結業績は増収増益 2018年度は構造改革実施で減収減益に

 日本電気株式会社(以下、NEC)は27日、2017年度(2018年3月期)の連結決算を発表した。

 売上収益は前年比6.7%増となる2兆8444億円、営業利益は前年から220億円増の639億円、税引前利益は同189億円増の869億円、当期純利益は同186億円増の459億円、フリーキャッシュフローは同168億円増の1158億円となった。

2017年度連結業績の概要

 2018年度は構造改革を実施するため減収減益となる計画で、売上収益は前年比0.5%減の2兆8300億円、営業利益は前年から139億円減の500億円、当期利益は同209億円の250億円、フリーキャッシュフロー同700億円減の400億円を見込む。

 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は、今年2月に発表した中期経営計画で掲げた、収益構造改革を実現するために、「2018年度は構造改革をやりきる。そのための費用400億円を織り込み、やるべきことは今年度中にきっちりとやりきる。2019年度以降につながる成長の第一歩となる年としたい」と改革を断行する決意を強調した。

代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏

セグメント別の概況

 セグメント別では、パブリックが売上収益は前年比22.6%増となる9391億円。社会公共事業は指名停止の影響で減少したものの、社会基盤領域では日本航空電子工業の連結子会社化の影響もあって売り上げが増加した。

 営業利益は前年から213億円増の544億円。売上増に加えて、宇宙事業の採算性改善、前年にあった偶発損失引当金繰入等の減少により増益となった。

 なお1月30日時点での予想では、売上高9550億円、営業利益530億円だったのに対し、売り上げは届かず、営業利益は予想を14億円上回った。

 エンタープライズは、売上収益は前年比1億円増となる4087億円。製造業および流通・サービス行向けビジネスが減少したものの、金融機関向けビジネスの売上増によって前年並みとなった。

 営業利益は前年から40億円減の357億円。IoT関連の投資費用などが増加したことで減益となった。1月30日時点での予想と比較すると、売上高は4050億円予想から37億円増加し、営業利益は340億円予想から17億円増加している。

パブリックの概況
エンタープライズの概況

 テレコムキャリアの売上収益は前年比3.4%減の5797億円。海外ではTOMSが伸長したものの、モバイルバックホール、海洋システムの減少などが原因となって減収となった。

 営業利益は前年から160億円減の20億円。売上減に加え、海外で実施した構造改革費用の計上などの影響で減益となった。1月30日時点での予想と比較すると、売上収益は5700億円予想から97億円増加したが、収益は130億円予想から大幅に減少している。

 システムプラットフォームは、売上収益は0.8%減の7143億円。保守サービスの減少などが影響して減収となった。営業利益は18億円増の314億円。売上減に伴う減少はあったものの、費用効率化などにより増益となった。1月30日時点での予想と比較すると、売上は7100億円予想から43億円増加したが、営業利益は320億円予想に届かなかった。

テレコムキャリアの概況
システムプラットフォームの概況

 その他は、売上収益は前年比19.2%増の2026億円。海外向けセーフティ事業やスマートエネルギー事業の増加により増収となった。

 営業利益は50億円改善してマイナス119億円。IoT基盤の投資費用増が大きく影響しマイナスとなったが、海外事業とスマートエネルギー事業では改善されたことから、前年比では81億円改善している。

 1月30日時点での予想と比較しても、売上は1900億円の予想から126億円増加し、営業利益もマイナス150億円の予想から31億円改善している。

その他事業の概況

2018年度の業績予想

 2018年度の業績予想は、前述の通り構造改革費用を織り込んだために、減収減益を見込む。

2018年度連結業績の見通し

 「17年度実績の営業利益639億円に対し、17年度の構造改革費用などでプラス261億円の押し上げ効果があるものの、構造改革費用400億円、成長投資100億円などの一過性の悪化要因があることから減益となる見通し」(新野氏)と説明する。

 400億円の構造改革費用の内訳としては次の3点を計画し、SGA(販管費)を下げて、将来のための投資となる原資を作ることを目指していく。

1)国内3000人の構造改革を想定し、現在組合に提案中。対象となるのは間接部門、ハードウェア事業領域で、今年度中に実施を見込む
2)従業員のリソースシフト関連費用、オフィスフロア効率化などを実施
3)NECプラットフォームズの一関事業所、茨城事業所の生産拠点移管など、生産拠点を再編

収益構造の改革

 セグメント別では、パブリックは前年比1.2%増となる売上収益9500億円を予想。社会公共領域が2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機としたビジネス拡大などによる増加を見込む。

 一方で社会基盤領域は連結子会社の売上減により減収を見込んでいる。

 営業利益は前年から96億円増となる640億円。前年度に実施した構造改革費用の効果や不採算案件の抑制による増益を見込んでいる。

 エンタープライズの売上収益は前年比0.3%増となる4100億円と予想する。流通・サービス業向けの増加を見込んでいる。営業利益は前年から37億円減の320億円。システム構築サービスは増益を見込んでいるものの、AI、IoT関連の投資費用の増加により減益を見込んでいる。

 テレコムキャリアの売上収益は前年比2.5%減となる5650億円と予想する。海外ソフトウェアが増加するものの、国内通信事業者の設備投資抑制傾向が継続することから減収となる見込みだ。営業利益は前年から100億円増の120億円。前年度に実施した構造改革の効果などによって増益を見込んでいる。

 システムプラットフォームは、売上収益は前年比3.4%減の6900億円と予想する。前年度にあった大型案件が減少することから減収となる見込みだ。営業利益は前年から14億円減の300億円で、売上減に伴い減益となる見通し。

 その他の売上収益は前年比6.1%増の2150億円と予想する。海外セーフティ事業の増加によって増収を見込んでいる。営業利益は前年から269億円改善して150億円を見込んでいる。スマートエネルギー事業、海外事業の改善に加え、NECエナジーデバイス株式の譲渡などによって改善が見込めると予想している。

セグメントを変更へ

 なお、各事業の中で課題となっているものを改善していくために、セグメントを次のように変更を行った(下図参照)。

セグメントの変更を実施

 テレコムキャリアは17年度実績で、パソリンク事業の収益悪化などがあったことから、国内については「ネットワークサービスビジネスユニット」と改組。従来のキャリア向け事業に加え、5G事業機会の対応と、キャリア以外の多業種へ対応していくことによって収益の最大化とリソース最適化を推進する。海外については、新しい「グローバルビジネスユニット」の下でポートフォリオを見直し、構造改革を進める。

 モバイルバックホールについては、黒字化が困難な場合には撤退も視野に入れて事業改革プロジェクトを実施。現在の赤字継続状態から早急に黒字化することを目指す。

 エネルギー(NECエナジーソリューションズ)は、大型蓄電システム市場が英、米で立ち上がるなど売上増と損益改善が見込めることから、黒字化を進めていく。

 さらに成長を実現するために、国内では2020年のオリンピック・パラリンピックに向けた生体認証・画像解析を用いたパブリックセーフティなど強みがある領域での事業機会獲得を進める。また、マイナンバーでの実績や経験を活かし、デジタルが場面と領域でも売上拡大を目指す。「今後3年間、この領域は成長が期待できる」(新野氏)

 グローバルについては、「組織変更によって分散していた事業をグルーバルビジネスユニットに集結し、事業責任を執行役員副社長の熊谷(昭彦氏)に集中させることで、スピーディーな事業成長実現する体制を作り、成長を実現する」(新野氏)とこれまでとは異なる姿勢でのビジネス開拓を進める。

 この象徴ともいえるのが4月26日に発表したデータ分析プロセスをAIによって自動化するソフトウェアを開発・販売する新会社「dotData, Inc.」。「これまでは、海外企業を買収した場合、その技術を日本で展開するために研究開発を行い、その後に海外へというパターンだった。しかし、これでは海外で事業展開をする際に時間差が出て、その間に同じような技術を持った企業が誕生していて、優位性がなくなってしまう。今回、海外では海外で事業展開を行い、国内は国内で事業展開を行うことで、国内、海外それぞれで最適化をはかる体制とする」(新野氏)とこれまでとは異なる手法を取り込む。

 新会社を率いるのは、NEC データサイエンス研究所で主席研究員をつとめていた藤巻遼平氏で、「海外でIPOすることになれば、藤巻は大きな成功益を納めることができる。NECに就職することで、こんな機会を獲得することができるということをアピールすることにつなげたい」(新野氏)と最先端技術者獲得にもつなげる施策としていく。