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NEC・新野隆社長が「2020中期経営計画」の進ちょくを説明、「セーフティは売り上げ・損益の改善が順調に進む」

 日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、「2020中期経営計画」の進ちょく状況について説明した。同計画では、「収益構造の改革」「成長の実現」「実行力の改革」の3点を重点課題として取り組んでおり、それに向けた成果などについて言及している。

 「収益構造の改革」としては、12月28日を退職日とする特別転進支援施策を10月29日から実施したこと、パソリンクによるワイヤレスソリューション事業において、収益性改善に向けた取り組みを実行していること、エネルギー分野では、NECエナジーデバイスの売却先が決定する一方で、NECエナジーソリューションズは改革途上にあり、収益性改善に取り組んでいることを示した。

 パソリンクによるワイヤレスソリューションの収益性改善の取り組みでは、上期においては黒字化を最優先テーマとし、利益率にこだわった案件の選別、機種の絞り込みなどを実施。「現地法人からの反発もあったが、第2四半期では収益改善が進み、ブレークイーブンに来ている。下期も収益性改善に向けた取り組みを加速するとともに、同事業で中期的に収益を確保するための施策の検討を進め、2018年度中に方針を決定する」とした。

 ここでは、「上期には効果が出てきているが、継続的な黒字化を目指した構造改革を進めており、その見通しが立たないということになれば、あらゆる手段を考えたい」(NECの新野隆 代表取締役執行役員社長兼CEO)とした。

NECの新野隆 代表取締役執行役員社長兼CEO

 また「成長の実現」においては、2020中期経営計画において、グローバル事業の成長エンジンに位置づけている「NEC Safer Cities」が、NPS(Northgate Public Services Limited)との新規連結や、オーガニックでの案件獲得により、「セーフティは、順調に売り上げ、損益の改善が進んでいる」とした。

 NPSとの連携では、英国警察向けITソリューションでトップシェアを獲得。さらには、英国ソフトウェア企業であるi2Nの買収、米国の生体認証システム企業のTascentに出資している実績を紹介。投資枠2000億円を活用したさらなるM&Aも視野に入れていることも示した。

 オーガニックの取り組みでは、2018年度上期に、米国政府案件を受注。さらにAPACや欧州、インドで空港・航空会社向け案件を受注。インドネシアでのアジア競技大会にシステムを提供したという。

 さらに、「実行力の改革」では、「創業119年目の大改革」として、社内改革プロジェクト「PROJECT RISE」を推進しているとに触れ、社員の力を最大限に引き出すために、2018年度の取り組みとして、「目指す姿への変革を促す行動指標『Code of Values』の設定」「成長を促す人事評価制度の確立と経営層の適用」「業務やプロセスの50%削減を目指すキャンペーンの全社展開」の3点を掲げていることを紹介した。

 また10月24日に発表した、サムスン電子とのグローバル市場に向けた5Gポートフォリオ拡大に関する協業についても触れ、「それぞれの強みを生かして、5G標準に準拠した製品を共同開発し、これをグローバル市場に展開していく。市場の変化をとらえ、グローバルで5Gにおけるリーディングポジションを獲得するとともに、ITとネットワークの強みを生かして、ソフトウェア・サービス領域への展開を推進する。5Gは、周波数が多岐に渡るなど、キャリアごとの要求に対応するために開発費がかかる。これを1社でやるにはリスクがある。国内では、NTTドコモ向けの協業でスタートし、グローバルにはサムスンの北米やインドでの実績を生かしながら、販路を広げていく」とした。

 また、NECの森田隆之 代表取締役執行役員副社長兼CFOは、「この協業によって、開発費では3割程度の削減効果があると見込んでいる。来年度には開発成果を出せる」とした。

NECの森田隆之 代表取締役執行役員副社長兼CFO

 なお、IBMによるRed Hatの買収については、「IBMが買収したことや、買収金額については驚いた。Red Hatとは、日本市場においてWin-Winの関係を構築してきた。これまでと変わらないようにやっていきたい。クラウド指向が強くなるなか、NECがマルチクラウドのシステムインテグレーションとしての役割を発揮することが、ますます重要になってくる」(新野社長)とした。

2018年度上期の連結業績、営業利益は90.1%増

 一方、NECの2018年度上期(2018年4月~9月)の連結業績は、売上収益は前年同期比3.8%増の1兆3364億円、営業利益は同90.1%増の138億円、税引前利益は同29.3%減の217億円。当期純利益は同51.3%減の91億円となった。

 売上収益は、パブリックやエンタープライズが増加したことが増収に影響。営業利益では、パブリックやネットワークが減少したものの、グローバルやその他事業が改善。最終利益は、前年同期に計上したNECトーキン、ルネサスエレクトロニクスの株式売却益の影響などにより減益になったという。

2018年度上期実績サマリー
2018年度上期の概況

 「上期はいくつかの領域で改善の効果が表れている。計画に対しては、売上収益で350億円、営業利益では40億円改善。またセグメント別では、エンタープライズやネットワークサービスが売上収益で計画値に対して上振れし、営業損益ではグローバルが上振れした。下期も改革の手を緩めず、年間の計画および中期経営計画の達成に向けて取り組みを進めていく」(NECの新野社長兼CEO)という。

セグメント別の上期実績サマリー

 セグメント別業績では、パブリックの売上高が前年同期比3.8%増の4197億円、営業利益は前年同期から23億円減の123億円。「社会公共領域は前年並みだが、社会基盤領域は航空宇宙・防衛向けが増加。一方、社会基盤領域では前年度に一過性の利益を計上したことなどが影響して減益になった」という。

 エンタープライズは、売上高が前年同期比10.3%増の2117億円、営業利益は前年同期から1億円減の157億円。「製造業のほか、コンビニ向けの流通・サービス業、保険・証券が好調だった金融業向けがいずれも増加。一方で、AIやIoT関連で20億円の投資負担増があったが、システム構築サービスの増益により前年並みを確保した」とした。

パブリックの概況
エンタープライズの概況

 ネットワークサービスは、売上高は前年同期比1.6%増の1760億円、営業利益は前年同期から21億円減の34億円。「ITサービスは減少したが、ネットワークインフラの増加により増収。だが、ITサービスの特定プロジェクトの一過性の損失として30億円を計上したことにより減益になった」

 システムプラットフォームは、売上高は前年同期比0.5%増の2426億円、営業利益は前年同期から13億円減の40億円となった。「ビジネスPCが増加したが、新製品の立ち上げに伴う投資費用の増加によって減益になった」という。

 グローバルは、売上高は前年同期比0.6%増の2133億円、営業損失は前年同期から60億円改善したものの、50億円の赤字となった。「海洋システムやディスプレイが減少したが、セーフティが増加。ワイヤレスソリューションの収益性が改善した」という。

 そのうちセーフティでは、NPSの新規連結や、既存体制での案件獲得により、前年同期比75%増と大幅に増収。サービスプロバイダーソリューションでは、欧州のTier1キャリアからの大型受注を獲得するなど、受注が増加しているという。

 また海洋システムは一時的に減少しているが、アジアと米国を結ぶ1万6000kmの光海底ケーブル「BtoBE Cable System」の供給契約を締結しており、今後の売り上げ拡大が見込まれている。

システムプラットフォームの概況
グローバルの概況

 その他事業では、売上高が前年同期比12.0%増の730億円、営業利益は前年同期から63億円増の60億円となった。

 一方、2018年度の業績見通しは、4月27日公表値を据え置き、売上収益は前年比0.5%減の2兆8300億円、営業利益は同21.7%減の500億円、当期純利益は同45.5%減の250億円としている。

通期業績予想サマリー

 「営業利益を減益予想としているのは、構造改革費用を一過性の悪化要因としてあげていること、成長投資を見込んでいることが理由。上期終了時点では、おおむね計画通りの進ちょくとなっている。下期に向けては、上振れを期待できるところ、リスクがあるところがあるが、通期の業績予想を達成できる」とした。

 また、「2018年度上期の国内ITサービスの受注は、金融、公共、製造を中心に好調に推移しており、上期受注は、前年同期比7%増となっている。通期の売り上げ貢献に期待している。グローバル事業は上期損益では約60億円の改善を達成し、計画通りに推移。下期も220億円の改善を見込み、引き続き収益改善への取り組みを強化する」と述べた。