特別企画

ユーザーのマルチクラウド化を支援する――、米Nutanixがソフトウェア会社になったワケ

 米Nutanixは、ハイパーコンバージドインフラスラクチャ(HCI)のアプライアンス製品の企業として2009年にスタート。2013年には日本法人を設立した。

 依然としてHCIのイメージが強い同社だが、実はその後、ソフトウェア基盤の提供ヘ軸足を移しており、現在では、プライベートクラウドからパブリッククラウドまで、場所を意識せずに使える「インビジブルインフラ」を標榜。“意識せずに使える”インフラとして、ユーザーにメリットを提供しているという。

 今回は、このようなNutanixのビジネスモデルの変遷とその戦略について話を聞いた。

パブリッククラウドかオンプレミスかを意識する必要はない

 「今のクラウドは、レンタルモデルだけでなく自社所有モデルといったように、あらゆるところにある」と、NutanixのDheeraj Pandey氏(創立者、代表取締役会長兼CEO)は語る。

NutanixのDheeraj Pandey氏(創立者、代表取締役会長兼CEO)

 「クラウドがどこにあるかというアーキテクチャーを3つの法(Law)が定義している」とPandey氏。1つめは、主体がどこにあるかという「国の法(laws of land)」。2つめは、“データの重力”と言われるように、データにともなってどこに人やマシンがあるかという「物理法則(laws of physics)」。3つめは、クラウドを所有したほうが安価か借りたほうが安価かという「経済の法則(laws of economics)」だ。

 こうした背景をもとにしたのが、Nutanixのインビジブルインフラの考えだという。「ソフトウェアの会社になったことで、ユーザー企業は場所を意識せずにわれわれの製品を使えるようになった。まずオンプレミスで使ってもらえるが、それをパブリッククラウドでも使える。こうしたインビジブルインフラをこれからも追求していく」とPandey氏。

 「お客さまがデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するとき、まず既存インフラのモダナイゼーションから始め、次にプライベートクラウドに進み、さらにマルチラウドに進むだろう。これに応じるかたちでNutanixの製品群を広げている」(Pandey氏)

 氏はアプライアンスのビジネスをMacやiPhoneに、ソフトウェアのビジネスをWindowsやAndroidにたとえ、「われわれもソフトウェア会社になることでビジネスを拡大できる」と語った。「ユーザー企業がどれだけ利用するかに応じて支払ってもらうために、ソフトウェア会社に変わった。アプライアンスだとCAPEXだけだが、ソフトウェア会社になることでOPEXとしても投資してもらえるからだ」。

既存システムのモダナイゼーション、プライベートクラウド、マルチクラウドの各段階に製品

 Nutanixの製品ラインアップについてはRajiv Mirani氏(CTO、クラウドプラットフォームズ担当)が解説した。

NutanixのRajiv Mirani氏(CTO、クラウドプラットフォームズ担当)

 製品ポートフォリオは、「Nutanix Core」「Nutanix Essentials」「Nutanix Enterprise」の3種類に分類されている。「お客さまがマルチクラウド化に進んでいく段階をそのまま表している」とMirani氏。

 まず最初の段階として、既存インフラのモダナイゼーションがある。これを助ける製品群がNutanix Coreだ。HCIのためのOSである「AOS」とハイパーバイザーの「AHV」、管理ツールの「Prism」がこのカテゴリーに入る。

 次の段階としてプライベートクラウドに進むのを助ける製品群がNutanix Essentialsだ。ここでは、セルフサービス、自動化、オーケストレーションなどが必要になる。SDNの「Nutanix Flow」や、ファイルサーバーの「Nutanix Files」、管理に機械学習などを取り入れた「Nutanix Prism Pro」がこのカテゴリーに入る。

 さらにマルチクラウドに進むのを助ける製品群が「Nutanix Enterprise」だ。ここについては、開発者とIT部門の2種類の観点がある。まず開発者は、パブリッククラウドで使っている機能をプライベートクラウドでも同じように利用したい。それに対しては、オブジェクトストレージの「Nutanix Buckets」や、データベースの「Nutanix Era」、Kubernetesの「Nutanix Karbon」などがある。

 一方のIT部門は、プライベートクラウドで使っている機能をパブリッククラウドでも使いたい。それに対しては、ディザスタリカバリ(DR)の「Nutanix Xi Leap」や、Desktop as a Service(DaaS)の「Nutanix Xi Frame」がある。

 さらに両者にわたって、ワークロードをマルチクラウドのどこで走らせのがよいか、パフォーマンスや法規制などから考えるのを助けるのが「Nutanix Xi Beam」だ。

「たくさんのプロダクトを次々に出しているが、これらは共通のビジョンに向けて整理されている」(Mirani氏)。

HCIはまだ初期段階

 さて、Nutanixは企業のマルチクラウドまでのロードマップに合わせて製品をラインアップしているというが、企業側ではまだ、HCIを導入する段階やそれより以前の段階にあるところも多い。

 これについて尋ねると、Pandey氏も「HCIはまだ初期段階」と答える。「HCCIの市場規模は、1000億ドル規模だと思っている。しかし今はまだ、ソフトウェアだけで20~30億ドル規模、ハードウェアを合わせても40~50億ドル程度で、IT予算の5%未満しか活用されていません」。

 そうした企業へのメッセージとして氏は、レガシーなインフラではサーバー管理者やネットワーク管理者、ストレージ管理者、アプリケーション管理者などが分かれ細分化されている点を問題点として語り、「まず第一歩として、そうしたサイロ化されたチームを1つにすることが大事だ。クラウドのオペレーションは、全員で考える必要がある」と語る。「われわれがこれまで学んだ教訓は、『IT部門の組織改革が必要』と企業に伝えること。ITとの信頼関係ができて、その先にマルチクラウドがある」

 また、Nutanixの市場について、ニュータニックス・ジャパン合同会社の町田栄作氏(コーポレートバイスプレジデント兼社長)は、「業種、業態、企業の大小を問わず、地方自治体でも、大手金融でも使われている」と言う。「いまあるデータベースやハイパーバイザーなど、すべてを入れ替えてくださいとは、われわれは言わない。いいとこどりできる環境を提供しつづけ、ソフトウェアの柔軟性や利便性を訴求していく」とした。

ニュータニックス・ジャパン合同会社の町田栄作氏(コーポレートバイスプレジデント兼社長)

 最後に、Pandey氏に、日本市場へのメッセージを聞いた。

 「日本には高齢化と自然災害という2つの課題があると聞いた。また、人不足や、グローバルでの競争、サイバーセキュリティの課題などもある。いずれについても、必要になるのは自動化だといえるだろう。インフラの自動化とシンプル化が必要だ。また、日本に限らず、ミレニアル世代や女性の参加が重要。Nutanixのワークロードでいちばん多いのがVDI(仮想デスクトップ基盤)だが、VDIは、女性が家庭から仕事できるようになり、労働市場に参加できるようにしていると思う」(Pandey氏)。