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ゲットワークスとGXテクノロジー、液冷採用のコンテナ型データセンター「湯沢GXデータセンター」を本格運転開始

 コンテナ型データセンターの構築や運用を手がける株式会社ゲットワークスと株式会社GXテクノロジーは、新潟県湯沢町で「湯沢GXデータセンター」を本格運転開始。2025年2月20日に「運転開始記念式典」を開催した。

 運転開始記念式典には、ゲットワークス 代表取締役の中澤秀則氏とGXテクノロジー 代表取締役の瀧澤泰三氏に加え、湯沢町町長の田村正幸市氏や、パートナー各社が参列した。

 また、式典参加者のためのデータセンター見学会も催されたほか、報道陣には各社からのプレゼンもなされた。

湯沢GXデータセンター
湯沢GXデータセンター運転開始記念式典のテープカット。右から、Supermicro株式会社 James Hsieh氏、Schneider Electric株式会社 浅田実氏、東北電力株式会社 浜口智洋氏、株式会社ゲットワークス 中澤秀則氏、湯沢町町長 田村正幸氏、株式会社GXテクノロジー 瀧澤泰三氏、株式会社NTTデータ 渋谷誉人氏、菱洋エレクトロ株式会社 辻井幸弘氏、エレクス株式会社 鈴木良雄氏

 式典のあいさつで、ゲットワークス代表取締役の中澤秀則氏は、この場所を選んだ理由として、冷涼な気候と、降雪が融けて供給される豊富な水による冷却、さらに新幹線停車駅(越後湯沢駅)からも近いことを挙げ、「なかなか探してもない」と好条件を強調した。

 また、GXテクノロジー代表取締役の瀧澤泰三氏は、「湯沢町に豊富にある資源をデータセンターの運営に活用する取り組みは、この先に作られるデータセンターの指標になりうる」として、「湯沢町、ひいては新潟県の可能性を大きく引き上げる取り組みと確信している」と語った。

 湯沢町町長の田村正幸氏は、ゲットワークスの湯沢での最初のデータセンターへの協力を振り返り、AI時代の問題の解決に向けた湯沢GXデータセンターへの期待を語って、「データセンターが町の新たな産業として大きく発展することを心から願っている」とあいさつした。

株式会社ゲットワークス 代表取締役 中澤秀則氏
株式会社GXテクノロジー 代表取締役 瀧澤泰三氏
湯沢町町長 田村正幸氏

湯沢の自然水で水冷GPUサーバーの熱を冷やす大型液冷クーリングタワーを導入

 ゲットワークスは2014年からコンテナ型データセンターを手がけ、自社運用および納品をあわせて約280棟を構築している。新潟県湯沢町では、2018年の「湯沢データセンター」、2022年の「湯沢DXデータセンター」に続いて、今回の「湯沢GXデータセンター」で3カ所目となる。コンテナ型は増設が柔軟にできるのが特徴だが、湯沢GXデータセンターでは式典の時点で約110棟が設置されているという。

 今回の湯沢GXデータセンターの特徴は、自然を利用した冷却および再生可能エネルギー活用による環境負荷低減と、発熱量の大きなGPUサーバーだ。式典当日の現地が雪に覆われていたように、冷涼な気候と豊富な水資源が特徴であり、これを利用する。

 湯沢町のこれまで2カ所でも、外気や水、雪冷熱などを活用してきたが、湯沢GXデータセンターではそこに、水冷(液冷)によるサーバーの冷却を組み合わせるのが特徴だ。サーバー内のチップまで冷却水を引き入れて冷却するDLC(Direct Liquid Cooling)方式や、ラックの隣に設置する水冷式のInRow空調機を採用して、効率的にサーバーを冷却する。

 背景としては、特にAIの普及がある。AIのためのGPUサーバーの発熱量に対応するには水冷が必須、とゲットワークスはプレゼンで説明した。そして、実現のために、パートナー企業との協業により早期解決を図った。

GPUサーバーの発熱量に対応するには水冷が必須として、パートナー企業との協業により早期解決を図る(ゲットワークスのプレゼンより)

 具体的には、米Supermicro社の大型液冷クーリングタワー(冷却塔)からDLCサーバーまでの液冷システムを、菱洋エレクトロ株式会社を代理店として導入した。またSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック株式会社)のInRow空調機を採用した。

 なお、Supermicroの大型液冷クーリングタワーは日本初導入、同じ機種では世界初導入だという。1MWの冷却能力を持つ。

大型液冷クーリングタワー(冷却塔)。湯沢の天然水を使って冷却水を冷やす

 DLCとは、サーバーのCPUやGPUに取り付けたコールドプレートを冷却液で冷却する方式だ。この冷却液は、同じラック内に設けられたCDU(熱交換機)との間を循環する。CDUではこの冷却液を、別系統の冷却液によって冷却する(液は混ざることはない)。また同様に、サーバー横に冷却液を用いたInRow空調機を設置して空気を冷やす。

 これを最終的には、データセンターのクーリングタワーで冷却する。今回の新潟GXデータセンターでは、液冷クーリングタワーの冷却に湯沢の天然水を用いているのが特徴の一つだ。

 ちなみに湯沢GXデータセンターでは空冷サーバーと水冷サーバーの両方が稼働しており、空冷サーバーが6~7割だという。ゲットワークスの説明によると、冷却効率のために空冷サーバーは水冷サーバーの1.5~2倍のサイズを必要とするとのことだ。

コンテナ棟の内部。左端のラックが水冷サーバーラック。その右に縦に長くファンが並んでいるのが、水冷式のInRow空調機
ラックにマウントされているうち、上が水冷サーバーで、冷却水のパイプが出ていることがわかる。下がCDU(熱交換機)
SupermicroのDLCやクーリングタワーの説明(Supermicroのプレゼンより)
参考:SupermicroのDLC方式の水冷サーバーの例(2024年4月の「Japan IT Week 春」Supermicro展示より)
Schneider Electricの水冷InRow空調機の説明(シュナイダーエレクトリックのプレゼンより)

東北電力と3社でGPUクラウドサービスを開始、NTTデータの冷却技術検証への参画も

 こうした設備を持つ湯沢GXデータセンターでは、用途の一つとして、AI向けのNVIDIA GPU H200搭載サーバーを運用する。

 同じく2月20日には、ゲットワークスとGXテクノロジー、そして東北電力の3社によって、「コンテナ型データセンターを活用したGPUクラウドサービス」も発表された。H200による高度な計算力を、クラウド形式で提供するものだ。

東北電力との3社による「コンテナ型データセンターを活用したGPUクラウドサービス」(東北電力のプレゼンより)

 なおゲットワークスは、湯沢GXデータセンターで用いているような水冷技術について、NTTデータによるデータセンターの冷却技術検証施設「Data Center Trial Field」の共同検証へ参画している。

Data Center Trial Fieldの説明(NTTデータのプレゼンより)