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キヤノンMJが新中計と長期経営構想の事業戦略を説明、エンタープライズは2028年にITSの売上構成比を81%へ
2026年3月5日 12:01
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は4日、IR Dayを開催。2026年1月28日に発表した2030年度を最終年度とした「2026-2030長期経営構想」と、2028年度を最終年度とする「2026-2028中期経営計画」の具体的な事業戦略などについて説明した。本稿では、「エンタープライズ」および「エリア」の事業戦略にフォーカスする。
「2026-2030長期経営構想」では、2030年の経営指標として売上高8500億円、営業利益750億円、ROEは12.0%を目指すとともに、ITソリューション(ITS)の売上高で5000億円、そのうちサービス・アウトソーシングの売上高で2000億円を計画している。また、5年間累計の成長投資として2000億円を予定している。
一方、3カ年の「2026-2028中期経営計画」では、2028年に売上高7500億円、営業利益は660億円を目指す。ITS事業の売上高は4000億円とし、全社に占めるITS事業の売上高構成比は53%となる。そのうちサービス・アウトソーシングが1400億円を計画している。
キヤノンMJ 取締役 常務執行役員の蛭川初巳氏は、「長期経営構想では、ビジョンに『人と技術の力で明日を切り拓く事業創造企業グループ』を掲げ、『事業を通じた社会課題解決による、持続的な企業価値の向上』、『サービス型事業の成長を中核とした高収益企業グループの実現』、『経営資本強化による、好循環の創出』の3つの基本戦略に取り組む」と説明した。

【エンタープライズ】ITソリューション比率を81%へ引き上げ
「エンタープライズ」セグメントでは、2028年度(2028年1月~12月)に売上高3000億円、営業利益260億円、営業利益率で8.7%を目指す。
同セグメントは、大手企業を対象にしたMA事業部、準大手企業や中堅企業を対象としたGBソリューション事業部に加えて、グループ会社のキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)、プリマジェストで構成。セグメント従業員は8101人となっている。
キヤノンMJ エンタープライズビジネスユニット長 常務執行役員の松本裕之氏は、「2021-2025長期経営構想による5年間で、売上高は39%増、営業利益は52%増となり、ITソリューションの売上高は61%増となった。TCSやプリマジェストのグループ入りに加えて、オーガニックなITソリューション事業が成長している。ITソリューションの売上構成比は、2021年度の67%から、2025年度には78%に増加している」と、これまでの取り組みを振り返り、「2028年度の売上高3000億円のうち、ITソリューションの売上構成比は81%にまで拡大させる」とした。

目指す姿を「お客さまと共に価値創造を実現し、それを提供することにより『真のパートナー』となる」とし、主要戦略として、「顧客基盤の拡大とITソリューション事業の強化」、「シナジーによる個社ビジネスの加速」、「新サービス事業の創出」の3点を挙げた。
ひとつめの「顧客基盤の拡大とITソリューション事業の強化」では、キヤノンデバイスのシェアアップによる準大手、中堅市場の攻略を推進するほか、ドキュメントソリューションに加えて、映像ソリューションへの取り組みを強化する方針を示した。キヤノンMJでは、2026年度から、映像系SEを配置。映像系ソリューションの提案を加速する体制を敷いている。
キヤノンMJの蛭川氏は、「キヤノンMJの強みは映像である。マニュアルなどのドキュメントやデジタルドキュメントだけでなく、映像で撮影したデータ、センサーで取得したデータなどを組み合わせた利用が可能だ。また、製造現場などに設置して、閉じた形で利用できるボックス型エッジデバイスでの提案も可能になる。生成AIとの組み合わせによって、定期的な監視作業の自動化もできる。すでにPoCを進めているところだ」と語った。
また、キヤノンITソリューションズでは、重点事業領域として、スマートSCM、モビリティDX、金融コアIT、文教ICT、バックオフィスDX、クラウドセキュリティ、ITプラットフォームサービスを挙げ、これらの領域を核とした成長の実現に取り組む方針も示した。さらに、プリマジェストでは、得意分野である金融におけるSIおよびBPOビジネスの継続と拡大、地方銀行における顧客基盤の維持、拡大、公共市場へのBPOの展開を進める。
キヤノンMJの松本氏は、「キヤノンMJグループが提供するソリューションは、社会課題を解決するといった大規模なものではなく、企業が持つ課題を解決するものを多くそろえている」とし、「SI中心のビジネスからサービス事業への転換を図る。サービスを横展開することで収益性を高めることができる」との考えを示した。
2つめの「シナジーによる個社ビジネスの加速」では、これまでは特定領域に限定していたキヤノンMJとキヤノンITSとのシナジー領域を拡大するとともに、プリマジェストとの連携もさらに強化する。
「キヤノンMJの顧客基盤の上に、キヤノンITSを中心としたグループ会社の強みを乗せていくことに取り組んできたが、まだ拡大の余地がある。特に、GBソリューション事業部の担当領域を拡大させたいと考えており、ここでの陣容を増やしていく。中堅企業市場では、キヤノンMJは後発である。言い換えればキヤノン製品を拡大できる余地があるということである。この分野の体制を強化することで力を注ぐ」と述べた。
また、キヤノンMJの顧客基盤を活用し、キヤノンITSの技術力を組み合わせることで、食品メーカーの大型SIを受注した事例を紹介。基幹システムと生産管理システム、販売システムを連携させた実績をもとに、ほかの企業に横展開していくという。さらに、キヤノンMJが自治体に展開している顧客基盤をベースに、プリマジェストが持つコンサルティング力などを活用し、高額医療・高額介護合算療養費制度に対応するなど、自治体における特定業務のBPOを受注した実績があり、これらをほかの自治体にも展開していくことになるという。
3つめの「新サービス事業の創出」においては、次世代のリカーリングビジネスにつながるサービス創出を目指す考えを示した。「キヤノンMJの顧客基盤、キヤノンITSのデータセンターおよび技術ノウハウ、プリマジェストの業務分析力、キヤノンの最新技術を組み合わせる。ひとつの集合体として、知識を結集し、さらに強いサービスを創出していきたい。業界に最適化したサービスを提供するほか、大手企業向けサービスや準大手・中堅企業向けサービスとして創出したものを、中小企業向けサービスにも展開していきたい」と述べた。
新サービスの事例として挙げたのが、江戸川区での取り組みだ。水害時の迅速な情報収集や、被害をいち早く発見するための対策として、防災用カメラの導入とカメラ画像から水位を測定するAIを導入。迅速に情報を収集し、区民の安全確保に貢献しているという。
【エリア】「まかせてIT」を軸に中小企業のDX・経営をフルサポート
「エリア」セグメントでは、2028年度に売上高2450億円、営業利益250億円、営業利益率10.2%を目指す。
同セグメントでは、従業員300人以下の中小企業を対象にビジネスを展開しており、ビジネスパートナーを通じた販売と、キヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)を通じた直販体制を敷いている。同セグメントでは、5148人の体制で事業を推進している。
キヤノンMJエリアビジネスユニット長 上席執行役員の山口雅男氏は、「2021-2025 長期経営構想では、売上高、営業利益ともに順調に成長した。付加価値が高いITソリューション事業を伸ばし、生産性を高めて販管費を削減したことで、2025年度は過去最高益を達成している。ITソリューション事業の売上高は5年間で34%増加し、構成比は28%から35%に拡大した。PCやまかせてITシリーズ、セキュリティが増加している。ペーパーレス化の流れを受けて厳しい状況にあるプリンティング事業の収益を維持しながら、ITソリューション事業の拡大も進め、ビジネスを最大化し存在感を高める」とした。

「エリア」セグメントの目指す姿として、「お客さまの働き方をデザインし、地域社会のデジタルな未来を創造する」を掲げ、主要戦略として、「中小企業向けフルサポートを強化し、収益を最大化する」、「ロイヤルカスタマーを増やし、お客さま1社あたりの取引額を拡大する」の2点に取り組む。
ひとつめの「中小企業向けフルサポートを強化し、収益を最大化する」では、これまでのHOME、IT保守・運用から、「まかせてIT BX/DXシリーズ」、「ITヘルプデスクサービス」、「HOMEセレクトシリーズソリューションパック」、「ESET MDR」により、中小企業向けフルサポートを実現する体制へと移行。2025年度の売上高164億円を、2028年度には210億円にまで拡大する。
「これまでの5年間で、契約件数は約2倍となる24万件にまで拡大した。中でも、まかせてIT BX/DXシリーズは、2021-2025 長期経営構想における成長エンジンであったといえる。今後のITソリューション事業拡大の中心となるのが、まかせてIT BX/DXシリーズを中核とした中小企業向けフルサポートの領域になる」と位置づけた。
「まかせてIT BX/DXシリーズ」は、キヤノンS&Sが提供している中小企業向けソリューションで、2020年以降は、ビジネストランスフォーメーション(BX)や、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する領域へと拡大。2022年から投入したBXシリーズでは、ビジョンや戦略の整理および明文化、ITの投資計画、企業価値の向上、営業力強化、人材教育など、事業の継続、発展を支援する。また、DXシリーズでは、DX実現に向けたITの投資計画から選定、導入、運用、保守、教育をトータルで支援する。
「労働時間の制約や人員減に伴って求められている企業の生産性向上など、経営者の課題や関心事に寄り添って、解決することができる。お客さまのあらゆる困りごとに対して、しっかりと対応できるソリューションがそろっている」とした。
今後は、キヤノンS&Sの人材高度化、体制の進化により、キヤノングループ独自のソリューションとして提供する体制を整備。複合機やビジネスPCなどとのクロスセルの提案に注力し、販売単価を高め、収益性の向上を図るという。また、「まかせてIT BX/DXシリーズ」のラインアップ強化を図る考えも明らかにした。
「将来的には、ITソリューションをキヤノン製品と双璧をなすビジネスに拡大したい」と述べた。
さらに、「まかせてIT BX/DXシリーズ」をビジネスパートナーにも展開する新たな戦略も明らかにした。
「これまでは、HOMEセレクトシリーズソリューションパックやESET MDR、CATO SASEはビジネスパートナーにも提供してきたが、保守および運用を伴う独自サービスであるまかせてIT BX/DXシリーズの提供は難しかった。だが、キヤノンS&Sが培ってきたサービス提供力を生かして、独自サービスを展開することにした」という。
具体的には、キヤノンS&Sカスタマーサポートセンターのリソースを活用し、中小企業のPC関連の困りごとを、電話対応やリモート接続で解決する「ITヘルプデスクサービス」の提供を開始する。「キヤノンS&Sカスタマーサポートセンターは、高い満足度を誇っている。こうしたリソースやノウハウ、ソリューションをビジネスパートナーにも展開する。今後は、ビジネスパートナーにも供給できるメニューを増やすことで、お客さまのニーズをしっかりとらえる」と述べた。
主要戦略の2つめである「ロイヤルカスタマーを増やし、お客さま1社あたりの取引額を拡大する」では、ビジネスパートナーの顧客に対する戦略的なアプローチができていなかったことに着目。事業戦略の実行性を高めるという。
具体的には、キヤノンMJからの取引がない中小企業に対するアプローチを拡大するほか、プリンティング、ITソリューション顧客の双方に対するクロスセルにより、顧客1社あたりの取引額を拡大し、ロイヤルカスタマーを広げるという。
また、準大手や中堅企業を対象に展開するGBソリューション事業部によるソリューション展開事例を参考に、ビジネスパートナー向けにアレンジ。キヤノンMJグループの総力によって、中小企業への提供価値を高めるとした。
一方、PCについては、2025年度は、Windows 10のサポート終了に伴う特需もあり、販売台数が増加したが、2026年度は約3割減少すると見込んでいる。
「メモリー不足などの影響もあり、需要への影響を注視していく必要がある。まかせてIT BX/DXシリーズなどの付加価値の高い製品の販売拡大や、経産省が新たに導入を進める『サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度』も追い風にしたい」と語った。
なお、「コンスーマ」セグメントでは、2028年度に売上高1450億円、営業利益130億円、営業利益率9.0%を目指すほか、「プロフェッショナル」セグメントは2028年度に売上高620億円、営業利益70億円、営業利益率11.3%を計画している。














