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2024年は「ビジネスAI元年」とSAPジャパン社長――、すべての製品にAIを

 SAPジャパン株式会社は15日、2024年のビジネス戦略について会見を開催した。同社 代表取締役社長の鈴木洋史氏は、2024年を「ビジネスAI元年」と位置づけ、すべてのSAPポートフォリオにAIを組み込んでいく方針を示した。

2024年は「ビジネスAI元年」

 鈴木氏は、冒頭で2023年を振り返り、SAPジャパンの総売上が前年比12%増となり、グローバルにおける前年比9%増を上回ったこと、その中でも特にクラウドERPが大きく成長したことに触れ、「2023年はクラウド業務アプリケーションやインダストリークラウドなどの各種ソリューションを展開し、それらを統合する接着剤として『SAP Business Technology Platform(BTP)』を提供してきた。今年もこの戦略を継続することに加え、すべてのSAPクラウドソリューションにAIを組み込んでいく。これをSAPでは『ビジネスAI』と呼んでいる」と説明した。

 「2024年は、イノベーションとポートフォリオを最適化し、AIを組み込んだ最先端クラウドソリューションを提供することに注力する」と、鈴木氏は述べている。

SAPジャパン 代表取締役社長 鈴木洋史氏

 SAPでは、グローバルで今後も成功していくための重要な注力分野のひとつがAIだとしており、エンタープライズアプリケーションおよびビジネスAIの両方でナンバーワンになることを目標に掲げている。SAPジャパンとしても、「2024年をビジネスAI元年と位置づけ、実際に経営に役立つ機能を、ビジネスAIを通じて日本の顧客に提供したい」としている。

 AIの要素技術の部分は、Microsoft(OpenAI)やGoogle、Amazonなど、AIエコシステムパートナーの生成AIの要素技術を活用する。これをAI基盤とし、「BTPを通じて各クラウドアプリケーションにAIを組み込み、ビジネスプロセスの自動化や予測業務の高度化を進める」(鈴木氏)という。

 また、SAPが2023年9月に発表した生成AIアシスタントの「Joule」についても、「自然言語対応を強化する」とした。Jouleは、SAPのクラウドソリューションに直接組み込まれ、「普通の言葉で質問すると、SAPアプリケーションのビジネスデータから引き出された適切な回答を瞬時に届ける」と鈴木氏。

 すでにJouleは、「SAP SuccessFactors」などのソリューションで利用可能となっており、2024年第1四半期には「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」にも組み込まれる予定だという。日本語対応については、「現在パートナーを含め鋭意対応中」(鈴木氏)としている。

ビジネスAIへのアプローチ

パートナーエコシステムの拡大

 SAPジャパンの事業にとって欠かせないのがパートナーエコシステムだ。2023年は、パートナー再販クラウドビジネスが前年比44%増と大幅に成長したほか、パートナー企業数も42社増え、全体で500社を超えた。また、SAP認定コンサルタントの数も前年比11%増となり、中でもSAP S/4 HANA Cloud Public Editionの認定コンサルタントの数は前年比で2倍になったという。

 特に中堅中小企業向けの新規案件は、100%パートナー企業からの再販となっており、「中堅中小企業向けビジネスは、当社ビジネスの中で最も成長している領域のひとつで、パートナーエコシステムには非常に手応えを感じている」と鈴木氏は述べている。

 そこで鈴木氏は、「2024年はパートナーエコシステムの拡大に取り組み、4つの分野を強化する」とした。

 まず1点目は、新規パートナー企業の拡大と強化だ。特に、SaaS志向のパートナー企業の拡充を目指し、パートナーリクルーターも設置。新規パートナー企業のビジネスの立ち上げや技術者育成も支援するという。

 2点目は、パートナー企業の自走ビジネスを実現することだ。「導入前のマーケティングや営業活動の段階からパートナーを支援し、教育も提供する」と鈴木氏は述べている。

 3点目は、導入成功に向けた支援と、伴走型協業を推進することだ。プロジェクトの支援担当者を設置し、パートナープロジェクトの品質向上を支援するほか、導入後も顧客の成功に向けて伴走すべく、パートナー企業におけるポストセールスの人材育成を強化するという。

 4点目は、パートナーソリューションの拡販を支援することだ。SAPストア上では、BTPによって開発されたパートナーソリューションを販売しているが、「今年はビジネスAI元年と位置づけていることから、パートナー企業との共同イノベーションをさらに拡充し、特にビジネスAI領域のパートナーソリューションを増やしてSAPストア上で販路を拡大できるよう支援する」としている。

 「SAPのソリューションだけでなく、パートナーソリューションで補完・強化することにより、顧客への貢献範囲を広げていきたい」と鈴木氏は述べた。

パートナーエコシステムの拡大