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SAP、生成AIアシスタント「Joule」を発表 文脈を整理してコンテキストに応じた洞察を提供

Jouleの画面イメージ

 独SAP SEは26日(現地時間)、新しい生成AIアシスタント「Joule」を発表した。Jouleは自然言語生成型のAIで、SAPのエンタープライズクラウド製品に直接組み込まれることになる。

 Jouleは、SAPのソリューションとサードパーティからのデータを迅速に分類。文脈を整理してコンテキストに応じたインサイトを提供する。これにより、安全かつコンプライアンスに準拠した状態で業務を迅速に遂行し、より良いビジネス成果が見込めるという。

 SAP チーフマーケティング&ソリューションズオフィサーのジュリア・ホワイト(Julia White)氏は、JouleがSAP Business Technology Platformだけでなく、「人事、財務、サプライチェーン、調達、カスタマーエクスペリエンスなど、SAPのアプリケーション全体に組み込まれることになる」と説明、「ユーザーは平易な言葉で質問するだけで、豊富なビジネスデータや業界のインサイトから導き出された、インテリジェントな回答を得ることができる」としている。

SAP チーフマーケティング&ソリューションズオフィサーのジュリア・ホワイト(Julia White)氏

 Jouleでは、例えば販売実績の良くない地域を特定したり、ほかのデータにリンクしてサプライチェーンの問題を把握したりといったことができるほか、人事部で職務内容に偏りのない求人広告を作成するよう支援したり、面接時に適切な質問ができるよう支援したりすることも可能だという。

 「SAPのAIは、顧客の実際のビジネスプロセスの文脈の中で動作し、顧客が日々使用するSAPのシステムに直接組み込まれている。ビジネスデータだけでなく、ビジネスプロセスやコンテキストも理解しているため信頼性が高い」とホワイト氏は語る。

 また、SAP プロダクトエンジニアリングリード トーマス・ザウエレッシグ(Thomas Saueressig)氏は、Jouleが責任あるアプローチによって構築されていることを強調する。

 「AIを組み込む際には責任ある方法で実施しなくてはならない。SAPでは、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンス、倫理に対して最高レベルで対応する。その重要性を真剣に受け止めているためだ。2018年以降は外部のAI倫理委員会を設置し、すべてのユースケースを調査している。差別や偏見などを避けるべく最高水準の倫理基準を設けており、倫理的な理由で採用できないケースもいくつかあった。このテーマがいかに重要か理解しているのだ」(ザウエレッシグ氏)。

SAP プロダクトエンジニアリングリード トーマス・ザウエレッシグ(Thomas Saueressig)氏

 Jouleは、「SAP SuccessFactors」と「SAP Start」で11月より提供開始される予定。また、2024年の早い段階で「SAP S/4HANA Cloud パブリックエディション」でも利用可能となる。

 Jouleを利用するにあたっての価格はまだ明らかにされておらず、「それぞれのユースケースで提供される価値に基づき、アプリケーションに関連する情報として今後詳細を発表する予定だ」(ホワイト氏)としている。

 Jouleという名称は、エネルギーの単位を示す「ジュール(joule)」から来ている。この名称を選んだ理由についてホワイト氏は、「明確でシンプルでありながら、人間性を高め、人やビジネスの成果をパワーアップさせるというアイデアを正しく伝えたいと考え、Jouleという名称のアイデアに行き着いた」と話す。

 「生成AIの登場により、技術革新の大きなサイクルが始まった。近い将来、生成AIがあらゆるソフトウェアやアプリケーション体験、ビジネスプロセスを強化するようになり、テクノロジのあらゆる側面を動かすエンジンとなるだろう。この技術の飛躍によってSAPの顧客も多大なビジネス価値が得られるようになる」(ホワイト氏)。